企業が抱えるリスクは、以前に比べて格段に増えました。
とくに労使間のトラブルは、今後も増えていくと予想します。
こういったリスクに備えるには、保険に加入する以外にも、内部留保をしっかり貯めておかなくてはいけません。
節税で無駄なキャッシュアウトをしている場合ではないでしょう。
労使トラブルは増える
労使間のトラブルは、今後増えていくと思われます。
人権やコンプライアンス遵守の意識は高まり、労働法をきちんと守ることを求められるようになりました。
また、労働者側も、インターネットで検索したりSNSで情報収集することにより、不当に企業から搾取されてないかも簡単に調べられます。
従業員の権利意識は強くなり、使用者側の一方的な押し付けは通用しなくなってきています。
さらに、労働裁判の判決も、労働者の権利を守る傾向です。
もし、従業員から訴えられれば、企業側は負ける可能性は高いといえます。
整理解雇の4要素
たとえば、売り上げ不振からやむを得ず従業員を解雇する場合です。
経営不振や事業縮小といった場合に、経営者側の都合で行う解雇を「整理解雇」といいます。
これを行う場合、次の4つの要素を満たすかどうかが問われます。
- 人員整理の必要性
- 解雇回避努力
- 解雇者選定の合理性
- 解雇手続の妥当性
1.人員整理の必要性
人員整理が必要な、客観的理由です。
近年の裁判では、整理解雇しないと企業が倒産してしまうといった緊急の理由は必要ではなく、経営上の合理的な理由があれば足りる、とうする判例が多いようです。
2.解雇回避努力
人員整理が必要な場合でも、それを回避するためにどのようなことをしたかが問われます。
人が余っているという経営上の事情だけで、解雇はできません。
役員報酬のカット、配置転換などの解雇を回避するために措置を取ることを求められます。
3.解雇者選定の合理性
解雇する人の選定が、恣意的なものでなく、客観的かつ合理的で、公平な基準で選定されている必要があります。
4.解雇手続の妥当性
解雇の対象者、および労働組合、または労働者の過半数を代表する者と十分に協議し、整理解雇について納得を得るための努力を尽くしていること、とされています。
整理解雇でも4要素をクリアすることを求められる理由は、企業が経営上の問題を矢面にして解雇をする、いわゆる解雇権の濫用を防ぐ目的で、このような制限をかけていると思われます。
で何がいいたいかというと、業績不振による整理解雇でも、これだけのハードルがあるということです。
「業績が悪くなったから…」「事業を縮小したいから…」という経営者側の理由だけで、社員を簡単に解雇はできません。
いわんや、能力を発揮してくれない、勤務態度が悪いといった理由では、なおさらといっていいでしょう。
判例:セガ・エンタープライゼス事件
たとえば、「セガ・エンタープライゼス事件」です。
この裁判では、「労働能率が劣り、向上の見込みもない。積極性がない、自己中心的で協調性がない」などとして解雇された元従業員への解雇が「無効」と判断されました。
その理由は、
- 積極性がない、協調性がないという理由に裏付けがない
- 労働能率が劣るというが、指導・教育することで向上する余地があった
といったことでした。
会社としては、たまったもんじゃないが正直な感想でしょうが、これが裁判所の考えです。
解雇をする場合は、証拠をしっかり揃え、相当慎重に行わなければなりませんし、そうであったとしても、全面的に会社の言い分が通るわけではないということです。
であるなら、就業規則や人事評価制度を整えておき
- 訴えられないようにしておく
- 訴えられても根拠を持って主張できるようにしておく
ことはもちろん、負けた場合に備えて支払えるだけの資金を貯めておく必要があるでしょう。
節税で、キャッシュを浪費している場合ではないのです。
退職金は「隠れた」債務
ちなみに、社員への退職金は「隠れた債務」となります。
就業規則等で退職金の支払い規定があるときは(規定がなくても支払う慣行がある場合はこれも含まれる)、退職金は賃金の性格を有することになり、支払い義務のある債務となります。
一般的に中小企業の貸借対照表には、退職金の支払いにかかわる負債(退職給付引当金)は計上されません。
しかし、退職金の支払い義務がある場合は、気づかぬうちに、その債務は年々、着々と積み上げっていきます。
これ一つとってみても、節税でお金を浪費している場合ではありません。
知らなかったで済まされる話ではないからです。
労働訴訟リスクを含め、もし万が一や将来の支払いに備えて、納税をしてお金を貯めておかなくてはいけないでしょう。
新時代の節税法はこちらの記事をご覧ください↓
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