労働分配率から適正な成果報酬を算出する方法

人件費計画

労働分配率という数字があります。

労働分配率は、付加価値に対する人件費の割合をいい、付加価値を作り出すのに、どれだけ人件費に割かれたかを表す数値となります。

・労働分配率(%)=人件費÷付加価値×100

自社の労働分配率を定義すると、その期に支払うべき人件費も決められます。

労働分配率とは

労働分配率は、人件費と付加価値の比率をいいます。※当サイトで定義する付加価値は「粗利益」となります。

売上げから原価を引いた粗利益を作り出すのに、どれくらいの人件費がかかっているか、その割合を示すもので、単純に考えれば低い方が効率が良いことになります。

たとえば、100万円の粗利益を稼ぐのに、50万円と30万円の人件費で比べれば、後者の方が効率的といえるでしょう。

ただ人件費は「安く使う」、いわゆるブラック企業的なものもありますので、労働分配率は低ければ、それが正義というわけではありません。

業界・業種の平均値を見て、乖離がどれくらいあるかを測り、高いのはいわずもがなですが、低くすぎるのは従業員から労働力を搾取している可能性があることも認識しておくべきです。

労働分配率を成果報酬へ利用する

この労働分配率が、自社にとっての適正数値であれば、そこから導き出した人件費も適正値であるといえます(あくまで粗利益に対して適正かどうかという考え方です)。

したがって、目標より粗利益が増えた場合でも、労働分配率から考えれば、社員へ支払うべき人件費がいくらなのかを求められます。

社員の頑張りへ報いる成果報酬を導入するなら、労働分配率を利用してみるのも方法です。

労働分配率から適正な成果報酬を計算する方法

自社のあるべき労働分配率を定義する方法は、いくつかありますが、たとえば、過去5年~3年のデータの平均値で決めるという方法もあります。

ここで算出した労働分配率を使えば、その期の利益に対して人件費を払い過ぎなのか、あるいは足りないのか、足りないならいくら支払うべきなのかがわかります。

仮に自社のあるべき労働分配率を55%と算出したとします。

売上げ1億円、粗利益率が60%の6,000万円なら、労働分配率から導き出した人件費は3,600万円となります。

・6,000万円×55%=3,300万円

しかしここでうれしい誤算があり、社員の頑張りで、期末に売上げが2,000万円プラスの1億2,000万円まで伸びたとします。

この場合、会社が支払える人件費のマックスは、3,960万円となります。

・粗利益:1億2,000万円×60%=7,200万円

・人件費:7,200万円×55%=3,960万円

つまり、上乗せして支払える額は、660万円ということです。

・3,960万円-3,300万円=660万円

この金額を決算賞与として支払えば、社員の頑張りに報いた成果報酬という形になります。

決算賞与の解説はこちらの記事をご覧ください↓

決算賞与の注意点はこちらの記事をご覧ください↓

約束を守るから強い組織はできる

ただし、粗利益が目標値を超えた場合、社員へ還元すると約束していたなら、上乗せ分はきちんと支払うべきでしょう。

それが強い組織を作る土壌となります。

もし経営者が約束を違えてしまえば、社員は成果報酬を信じなくなり、やがて一生懸命やること止めてしまいます。

経営者も従業員に信義を求めると思いますが、それは従業員側も同じです。

信頼関係のない組織が強くなるわけがありません。

頑張れる組織の土壌には、信頼関係があります。

打ち出の小づちはない

企業が従業員へ支払できる賃金は、粗利益の中にしかありません。

つまり、粗利益内に支払い可能な「総人件費額」があり、その中から社員各個人へ分配する形です。

社員の頑張りに報いる総報酬制を導入するなら、粗利益が目標値を超えれば社員へのボーナスは増え、粗利益が目標値を超えなければ、社員の報酬は増えないことになります。

むしろ、対粗利益で考えるなら、目標値を超えなければ、労働分配率的には赤字となります。

結局のところ、粗利益を増やすことができなければ、社員の給与も上がらないということです。

これは、経営者のみならず、社員側もしっかり認識すべきことでしょう。

経営者もない袖は振れないわけで、振れば出てくる打出の小づちはどこにもないのですから。

労働分配率を使って適正な成果報酬を支払う方法の解説でした。

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