社会保険の負担が労働分配率の悪化を招きます。
それはやがて会社の財務基盤の悪化につながります。
会社を利益体質にするには、社会保険料対策も必須です。
効率を見る指標、労働分配率
人件費が適正かどうかを見る指標に「労働分配率」があります。
労働分配率とは、「粗利益」に対する人件費の割合を指します。
・労働分配率=人件費÷粗利益
※粗利益は「付加価値」で計算する場合もあります。その場合の「付加価値」とは、「営業利益+減価償却費+人件費」で求めます。
上記計算式を見てわかる通り、人件費が粗利益に対して多ければ、人件費のかかり過ぎといえ、非効率となります。
その反対に人件費の割合が少なければ、効率的に利益を稼いでいることになります。
労働分配率の目安としては、粗利益の60%です(もちろん業界や業態によります)。
労働分配率の悪化が財務基盤の弱体化を招く
労働分配率に使う人件費は、「給与+法定福利費+福利厚生費」で求めます。
当然ながら、そこには社会保険料も含まれますので、人件費の増加は労働分配率の上昇、すなわち悪化することになります。
人件費の上昇は、通常、価格に転嫁されますので、値上げして販売すれば労働分配率が悪化することはありません。
しかし価格に転嫁できない企業や、設備投資で作業効率アップや経費削減でコストカットできない会社は、労働分配率は悪化します。
労働分配率の悪化は、人件費を含めたコストのかかり過ぎなので、本業の儲けを示す営業利益は少なくなり、会社の財務基盤は弱体化していきます。
会社が返済に回せるお金
余談ですが、会社に銀行からの融資の借入場合、稼いだ利益から返済できる元本の年間の上限は、「税引き後利益+減価償却費」になります。
いわゆるフリーキャッシュフローのことです。
この「税引き後利益+減価償却費」を、年間の返済額(元本部分)が超えた場合は、これまで貯めたキャッシュの中から返済することになります(ここでいうキャッシュとは、貸借対照表に記載された現金・預金のこと。現金・預金で足らなければ、そのほかの資産を売って返済するか、別の金融機関から調達することになります)。
つまり借入がある企業の場合、労働分配率の悪化が営業利益を圧迫し、それを改善できないままでいると、返済資金が足りなくなり、やがてストックしたお金を吐き出さざるを得なくなるという、財務基盤の弱体化に陥てしまうというわけです。
ですので、労働分配率の悪化は、一つの危険な兆候ととらえるべきです。
社会保険料は今後も上がる
社会保険の厄介なところは、業績の赤黒関係なく発生する「固定費」ということです。
しかも社会保険は、今後上がることはあっても下がることはないでしょう。
今は約30%(会社の負担は15%)の料率で止まっていますが、いずれ国が保険料を値上げすることは容易に想像できます。
企業が正社員を雇うコストは、これから増大していくのは確実で、しかもその固定費を賄うには、今以上の粗利益を確保しないといけなくなるのです。
社会保険料の負担に耐えられる利益計画が必要になります。
社会保険料を削減する方法
ますます負担が重くなる社会保険料ですが、これを削減するには
社会保険の対象となる社員数を減らす
- 社員の給与を減らす
- が基本の方法です。
しかし労働者の権利が手厚く保護されている日本では、正社員を解雇することも、給与を削減することも簡単ではありません。
そんなとき、社会保険料対策として知っておきたいのが、給与の支払い方を変える方法です。
実は社会保険料は、給与の支払い方を変えることで、削減することができるのです。
たとえば、給与の支払い方を変えることで、健康保険と厚生年金保険料の上限を利用して社会保険料を削減する、ということができます。
また、給与を家賃や退職金、生命保険料という形で社員に支払えば、社会保険の対象とならず、保険料のみを削減できるのです。
このような方法を知っているか知らないかで、重い負担となる社会保険料を削減できます。
社保負担に耐えて正社員を雇うメリット
正社員を雇うことは、今まで以上に高コストになります。
しかしそれでも雇うことで
- 技術やノウハウが社内に蓄積される
- 結果として高付加価値を提供できる会社になる
- 競争に強い会社になる
- 蓄積した技術やノウハウを次世代へ継承できる
というメリットが得られます。
とはいえ、それを実行するには、重い負担となる社会保険料の支払いをしのいでいかなくてはいけません。
どの技術やノウハウを社内に蓄積するか、その選択と集中が必要になるでしょう。
まとめ
労働分配率は経営効率を見る指標ですが、社会保険料はこれを悪化させる原因となります。
今でも負担になっている企業は多いと思いますが、社会保険は給与の支払い方を変えることで保険料を削減することができます。
経営効率を上げていくためには、これらのことを知っておく必要があります。
社長の好きな節税より優先順位は高いです。
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