社長の親族を非常勤役員にすると、さまざまなメリットがありますが、その中の一つに「社会保険料の削減になる」ことが挙げられます。

たしかに非常勤役員になれば社会保険料の対象から外れますが、これは厳密にいいますと、

  • 非常勤役員でも社会保険料の対象になる
  • 常勤役員でも社会保険料の対象にならない

となります。

※ただし話がややこしくなるので、実態が常勤役員でないなら、役職も非常勤役員にしておくべきです。

いきなり「?」となったと思いますが、役員の場合の社会保険料の対象となる基準は、一般的にいわれる

  • 1週間の所定労働時間が、一般社員の3/4以上である
  • かつ、1カ月の所定労働日数が、一般社員の3/4以上である

ではないからです。

この記事では、非常勤役員で社会保険料を削減する方法について解説します。

そもそも社会保険料の対象となる人とは?

そもそも論として社会保険料(健康保険・厚生年金保険)の適用対象となる人とはどんなふうに定義されているのでしょう?

前置きが長くなりますが、大事なのでお付き合いください。

健康保険第3条では

「この法律において『被保険者』とは、適用事業所に使用される者及び任意継続被保険者をいう」

とあります。

また厚生年金保険法9条では

「適用事業所に使用される70歳未満の者は、厚生年金保険の被保険者とする」

と定められています。

さらに役員について旧厚生労働省からの「昭和24年7月28日保発第74号通知」では、

「役員で法人から労務の対象として報酬を受けている者は、法人に使用される者として被保険者とする」

とされています。

つまり、役員が社会保険の適用対象となるかの基準は

「労務の対償として報酬を受けて使用されている人」

であれば加入しなくてはいけないのです。

ここが勘違いしがちなところですが、一般的な

  • 1週間の所定労働時間が、一般社員の3/4以上である
  • かつ、1カ月の所定労働日数が、一般社員の3/4以上である

が、役員の場合は社会保険適用の判断基準でないということです。

話を戻しますが、役員の被保険者資格について、日本年金機構の疑義照会で次のようなものがあります。

質問:適用事業所において使用され、労務の対償として報酬を受けている役員は常勤、非常勤を問わずにすべて被保険者として扱うのか。

回答:労務の対償として報酬を受けている法人の代表者又は役員かどうかについては、その業務が実態において法人の経営に対する参画を内容とする経常的な労務の提供であり、かつ、その報酬が当該業務の対価として当該法人より経常的に支払いを受けるものであるかを基準に判断されたい。

この回答でポイントになるのは、

法人の「経営」に「経常的」に携わっているか

です。

法人の経営に経常的に携わっていたら、それは「労務の対象として報酬を受けて使用される人になる」ということなのです。

役員の場合の判定基準

では、法人の経営に経常的に携わっている状態とはどのような基準になるでしょう?

これについて別の疑義照会では、次の判断基準を示しています。

  1. 当該法人の事業所に定期的に出勤しているかどうか。
  2. 当該法人における職以外に多くの職を兼ねていないかどうか。
  3. 当該法人の役員会等に出席しているかどうか。
  4. 当該法人の役員への連絡調整または職員に対する指揮監督に従事しているかどうか。
  5. 当該法人において求めに応じて意見を述べる立場にとどまっていないかどうか。
  6. 当該法人等より支払を受ける報酬が社会通念上労務の内容に相応したものであって実務弁償程度の水準にとどまっていないかどうか。

つまり、役職が「非常勤役員」であっても、上記基準に該当すれば「社会保険の適用対象になる」ということです。

逆に役職が「常勤役員」でも、上記基準に該当しなければ「社会保険の対象にならない」のです。

※ただし話がややこしくなるので、実態が常勤役員でないなら、役職も非常勤役員にしておくべきです。

役員の場合は名目はどうでもよくて、「実態で判定する」ということです。

非常勤役員の報酬は130万円以下でないとダメ?

もう一つよくある勘違いに「非常勤役員の報酬を130万円以下にしないとダメか?」といものがあります。

この130万円基準は「扶養の対象になるかどうか」の判定基準です。

親族の年収が年収が130万円未満なら、社長の社会保険の扶養になり、年収が130万円以上なら扶養から外れるという基準です(60歳以上の場合は180万円未満)※被保険者の年収の2分の1未満という基準もあります。

年収が130万円を超えて社会保険の対象でないのであれば、国民健康保険・国民年金の対象になります。

この点は、パートタイマーにいくら給与を支払っても、「1週間の所定労働時間が、一般社員の3/4以上である。かつ、1カ月の所定労働日数が、一般社員の3/4以上である」という基準を満たさない限り、社会保険料の対象とならないのと同じです。

役員報酬の額は社会保険の対象基準として明示されてない

実際に役員報酬がいくらなら社会保険料の対象となるかは、明示されていません。

先述した役員が「 労務の対象として報酬を受けて使用される人 」になるかの判定基準でも、

「その報酬が当該業務の対価として当該法人より経常的に支払いを受けるもの」

とだけあり、「いくらなら業務の対価」とは書いてありません。

しかし先に示した6つの条件の中には

「当該法人等より支払を受ける報酬が社会通念上労務の内容に相応したものであって実務弁償程度の水準にとどまっていないかどうか」

という基準があります。

では「報酬が社会通念上労務の内容に相応したもの」とはいったいいくらを指すのでしょうか?

その点について、別の疑義照会では、次の質問が寄せれています。

質問:役員が経営状況に応じて報酬を下げる例は多くあり、役員報酬は最低賃金法に当てはまらないため、中には「数円」というところもあります。労務の対価として経常的に受ける報酬が「月に数円」の場合、社会保険への加入はできないのでしょうか。報酬が社会通念上労務の内容に相応しい金額(社会保険へ加入できる最低額)とは具体的にいくらでしょうか。

要は、「いくら役員報酬を支払えば、社会保険の対象になるか?」という内容です。

この場合では役員報酬数円でも社会保険の加入資格はあるかと聞いています。

それに対しての回答は次の通りです。

回答:昭和24年7月28日保発第74号通知で「役員であっても、法人から労務の対償として報酬を受けている者は、法人に使用される者として被保険者とする」とされていますが、一方、「役員については、ご照会の事例のように経営状況に応じて、給料を下げる例は多く、このような場合は今後支払われる見込みがあり、一時的であると考えられるため、低報酬金額をもっ て資格喪失させることは妥当でない」ことから、総合的な判断が必要であり、最低金額を設定し、その金額を下回る場合は、被保険者資格がないとするのは妥当ではありません。

また、疑義照会回答については、一般的な例を示しているものであり、社会通念上、ご照会の事例のように業務の内容に対して、1円の報酬しかないなど内容に相応しいものかどうか疑わしい場合は、報酬決定に至った経過、その他「常用的使用関係」と判断できる働き方(多くの職を兼ねていないかどうか、業務の内容等)であるかなどを調査し、判断してください。

疑義照会回答(平成23年10月公表分)

ここでもまた「いくらなら社会保険料の対象になるか?」について、明確な回答はしていません。

ちなみにこの回答を要約すると「役員報酬1円でも、それだけを持って社会保険の資格を喪失するわけでない」と答えています。

さらに

「1円の報酬しかないなど内容に相応しいものかどうか疑わしい場合は、報酬決定に至った経過、その他「常用的使用関係」と判断できる働き方であるかなどを調査し、判断してください」

とあります。

要するに、報酬も社会保険の適用対象かの一要素に過ぎず、その判定には先述した6つの要素で総合判断するということです。

ですから、「いくら役員報酬を支払えば社会保険の適用対象になる」かは決ってないのです。

ただし役員に多額の役員報酬を支払えば、「社会通念上労務の内容に相応したもの」と判断され、「 労務の対象として報酬を受けて使用される人 」と認められる可能性はあります。


非常勤役員に多額の報酬を支払うと税務上否認される怖れがある

非常勤役員にいくら役員報酬を支払っても、それだけで社会保険料の対象となるわけではありません。

しかし多額の役員報酬を支払えば、今度は税務上でも問題になります。

要は高過ぎる非常勤役員への報酬は否認されてしまうのです(高すぎる部分が)。

役員報酬の金額の妥当性は

  1. 役員の実際の職務の内容
  2. 法人の収入・利益
  3. 使用人に対する給料の支給状況
  4. 類似業種、同規模等の役員報酬の支給状況

という4つの基準から総合的に判断して決まります。

では経営に携わってない非常勤役員に、多額の役員報酬を支払うことに妥当性があるか?という話になってきます。

実際、平成17年の国税不服審の判例では、非常勤役員に対し役員報酬300万円支払っていたものが、「月額15万円の年間180万円が妥当」という判断が出されました。

ですから、社会保険の対象にならないからと、非常勤役員の報酬を高くし過ぎると今度は税務上のリスクを負うことになります。

親族を非常勤役員にして社会保険を削減する方法

長々と解説してきましたが、以上を踏まえて親族を非常勤役員にして社会保険料を削減するには、

  1. 親族を非常勤役員にする
  2. その際、役員報酬を年130万円以下にして、社長の社会保険の扶養にする。
  3. 扶養になれば、国民健康保険・国民年金、または社会保険料の支払い義務がなくなる
  4. その結果、保険料を削減できる

という流れになります。

扶養の範囲については協会けんぽのページをご覧ください。

健康保険(協会けんぽ)の扶養にするときの手続き

親族を非常勤役員にして役員報酬を年130万円以上支払えば、報酬を受け取った人が国民健康保険・国民年金の加入対象になり、別の保険料が発生します。

また非常勤役員の報酬が180万円を超えてくると、今度は税務調査で否認される可能性が出てきます。

注意点は、非常勤役員であっても実態が「労務の対償として報酬を受け取る人」であれば、名目に関係なく「社会保険の対象になる」ということです。

常勤役員であっても実態が伴っていなければ、社会保険料の対象から外すことはできます。

まとめ

親族を非常勤役員にして社会保険を削減する方法について解説してきました。

方法としてはシンプルですが、問題は非常勤役員の判定です。

一般的な従業員に対する基準でないことに気を付けなくていけません。

非常勤であっても実質「労務の対償として報酬を受け取る人」と認定されたら、社会保険の対象になります。

あなたの社会保険料削減対策の参考になれば幸いです。


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