外注費を消費税対策として利用している企業は多いでしょう。
外注費は、消費税の課税取引の対象です。
それに対し、従業員に支払う給与は、消費税の課税対象から外れます。
そのため、同じ人件費を支払うなら、外注先へ委託した方が消費税の課税対象となって、消費税の節税になるというわけです。
しかし、この外注費、税務調査では「外注費」ではなく、「給与」として否認されてしまうケースが多発しているとのこと。
せっかくの消費税対策が否認されてしまわないためには、しっかりした外注費対策が必要です。
業務委託契約が「社会保険料の対象にならない」ための12の基準
「外注費」と「給与」の違いをしっかり理解するなら、下記リンク先記事が役立ちます↓
【完全ガイド】外注費と給与の違いを徹底解説
消費税の仕組み
外注費の消費税対策の前に、消費税の仕組みを理解しておきましょう。
消費税は、物品やサービスの消費に対してかかる税金です。
納税者は、物品やサービスを購入する「消費者」なのですが、消費税を納めるのは「事業者」です。
その仕組みは次の通りです。※8%で計算
消費税は間接税です。
消費税は、商品の価格に税金を上乗せして販売します。
そうして、転嫁した消費税から転嫁された消費税(仕入れ課税)を差し引いて納税する仕組みになっています。
これを仕入課税控除といい
- 売上などで預かった消費税-経費などで支払った消費税=消費納税額
の計算式で求められます。
そして、仕入税額には、「控除の対象となる取引」と「控除の対象とならない取引」があり、
- 外注費は控除の対象となる取引
- 給与は控除の対象とならない取引
になります。
上記の課税の仕組みでわかるように、課税の対象になる取引が多くなるほど、消費税の納税額が少なくなります。
したがって、従業員と同じ仕事なら、課税取引の対象とならない給与ではなく、外注費として業務委託契約を選択する企業が増えているというわけです。
給与と外注費の違いとは?
あらためて給与と外注費の違いを見ていきましょう。
給与は課税仕入れの対象外
給与は消費税の課税仕入の対象にはなりません。
給与には、給料、賃金、俸給、歳費、賞与、退職金のことをいいます。
会社が負担する、健康保険料、厚生年金保険料、労災保険料、雇用保険料も、課税仕入れに該当しません。
また、給与には、「所得税の源泉徴収」を必ずしなければいけないという取り決めがあります。
さらに、給与として従業員に支払えば、それは社会保険の対象となり、会社の負担が増えることになります(納付も会社)。
外注費は消費税課税取引
外注費は、請負契約に基づく、個人事業主や法人への外注の対価の報酬のことです。
そして外注費は、消費税の課税仕入の対象となります。
さらに、外注費の支払いには、原則※所得税の源泉徴収の義務はありません。
※源泉徴収が必要な外注費もあり。【保存版】外注費の源泉徴収が必要になるケース・計算方法・手続きの手順
また、雇用関係ではありませんので、社会保険料の対象にもなりません。
こうして比べてみると、給与と外注費では、同じ作業をこなすにすても、コストにかなりの差が出ることがわかります。
消費税をシミュレーション
では、給与と外注費ではどれくらい納税する消費税に差が出るか計算してみます。
たとえば、売上1億円、経費が8000万円で、その内人件費が4000万円なら、この会社の消費税は次のようになります。
・売上げ1億円-(経費8000万円-4000万円)×8%=480万円
そこで、人件費のうち1000万円を外注費に振分けて3000万円に抑えたとしたらどうなるでしょう?
・売上げ1億円-(経費8000万円-3000万円)×8%=400万円
このように、給与でなく外注費として他の経費に振り分けることができれば、消費税の節税になるのです。
しかし、だからといって、何でも外注費にできるかといえば、そうでもありません。
仮に、形だけの業務委託契約をしても、実態が伴っていなければ、税務調査で否認されてしまいます。
消費税の外注費対策
外注費を給与ではなく、外注費として認めてもらうには、必要種類を用意しておくことは基本です。
これは必ず抑えておあかなければいけないことです。
- 契約書
- 請求書
- 発注書
- メールのやり取り
など
契約書は5つのポイントを押さえたものに
契約書はこれから説明する「給与とみなされないための5つのポイント」を満たした契約書を作ります。
- 外注先は会社の指揮監督を受けない
- 必要な材料や用具を外注先で負担している
- 外注先は自分でその業務を行わなくてもいい(下請けに流せる)
- 引渡し前の成果物が不可抗力により滅失した場合には、外注先は報酬を請求できない
- 外注先が報酬を計算して会社に対して請求できる
ちなみにいっておきますと、上記の5つのポイントを満たした契約書を作ればそれでいい、というわけではありません。
大事のは「実態」です。
実態が契約書通りに運用されていて、はじめて外注費として認められます。
形だけの外注契約(業務委託契約)では、契約書が条件を満たしていても否認されてしまいます。
外注先には確定申告をしてもらう
そして外注先には必ず「確定申告」をしてもらいましょう。
確定申告とは、所得にかかる税金(所得税及び復興特別所得税)の額を計算し、税金を支払うための手続きです。
サラリーマンの場合は、給与収入が2,000万円を超えているといった例外を除いて、基本源泉徴収で税金の支払いは終わります。
しかし独立した個人事業主や法人の場合は、確定申告が必要になります。
こうした違いが「完全な外注先」としての一つの基準になります。
給与とみなされない外注費の5つのポイント
外注先と認められるには、次の5つの要件を満たしておかなくてはいけません。
ポイント1・外注先は会社の指揮監督を受けない
外注先と発注先の会社とは雇用関係はありませんので、指揮監督を受けず、独立してその委託された仕事をこなすことになります。
これが従業員であれば、勤務時間は定まっていて、上司の指揮監督を受けて仕事を進めることになります。
よって
- 外注費:指揮監督を受けない
- 給与:指揮監督を受けている
が一つのポイントとなります。
ポイント2・必要な材料や用具を外注先で負担している
作業にあたっての材料や用具を外注先で用意してる場合は、経費を自己負担しているので、外注費となります。
それに対し、材料や用具を発注元で用意したものを使っているなら、給与とみなされる可能性が高くなります。
ポイント3・外注先は自分でその業務を行わなくてもいい(下請けに流せる)
外注先であれば、A社に業務委託したとしても、仕事の品質と納期を守れば、B社が代わりに請け負っても問題ないはずです。
しかし、従業員ならそうはいかないでしょう。
勤務している本人しか、仕事をすることを認めていません。
よって、
- 外注費:他人が代わりに業務を遂行できる。
- 給与:依頼された本人しか業務を遂行できない。
ポイント4・引き渡し前の成果物が不可抗力により滅失した場合は、外注先は報酬を求めない。
通常、外注する際は、仕事の完成をもって報酬に代えることになります。
いい換えれば、発注したものが完成してないのであれば、報酬をもらわない(もらえない)となります。
しかし、従業員であれば、時間で拘束されているので、成果物の完成いかんを問わず、報酬は支払われることになります。
つまり、
- 外注費:作業が途中で完成しなければ、報酬をもらわない(もらった部分は返金する)。
- 給与:支払金額が従事した時間や日時をベースにしているので、作業を途中で中止しても報酬がもらえる
となります。
ポイント5・外注先が報酬を計算して、発注先の会社に請求できる
外注であれば、外注先が仕事にかかる労力を計算して、成果物に対しての報酬を発注元に請求します。
それに対し、労働時間での報酬となれば、給与とみなされてしまいます。
外注費として認められなかったときのペナルティ
外注費として経費計上したのに、税務調査で否認されたれ次のようなペナルティがあります。
消費税の追徴課税
給与は消費税の課税取引になりませんので、支払っていた消費税分がなくなりますので、その分消費税を支払わなくてはいけなくなります。
たとえば、毎月30万円の外注費を出していた場合
・30万円×12カ月×8%=28.8万円
が追加で納める消費税になります。
源泉取得税の追徴課税
外注費ではなく給与になりますので、源泉取得税が課せられることになります。
つまり、外注費を否認できたら、税務署側からしてみれば、消費税と源泉取得税の2つを徴収できるのです。
やっきになって否認する理由が見え隠れします。
延滞税・重加算税の追徴課税
過少申告加算税、不納付加算税、延滞税も課税され可能性がるあります。
外注費の大きな会社だと、ペナルティで支払う税金はかなり大きな負担となります。
それ以外でも、1年だけでなく、過去をさかのぼって指摘されたら膨大な額になります。
もちろん、はっきりと外注費と給与が区別できる経費は心配ありませんが、会社が外注費だと判断している経費でも、給与の要素を含んでいる可能性があることは忘れないようにしておきましょう。
まとめ
消費税は今や、企業にとって法人税より資金繰りを苦しめる要因となりました。
それは、消費税が赤字黒字関係なく支払義務がある税金だからです。
法人税は赤字なら支払う必要はありませんが、消費税は預かったお金なので、支払い義務を免れることはできません。
それに加えて2019年10月には10%にアップの予定です。
消費税は、社会保険料と同じく、逃れられないお金な上、その負担も増していくことになります。
今後その支払いで苦しむ企業が増えるのは、火を見るよりも明らかです。
外注費はその消費税を節税する有効な手段なので、否認されないないようきちんと対策をしておく必要があります。
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