派遣元が派遣労働者に支払った「外注費」が「給与」と否認された事例

労働者派遣事業を営む会社(以下、派遣元会社)が、「外注費」として派遣労働者に支払ったお金が、「給与」に否認された例です。

外注費が認められれば、消費税の課税取り引きになりますが、そうは問屋が卸しませんでした。

この事例のポイントは、派遣先労働者が、派遣元と派遣先のどちらの指揮監督下にあったか?です。

「外注費」と「給与」の違いをしっかり理解するなら、下記リンク先記事が役立ちます↓

指揮監督権を持っていたのは、派遣元会社と派遣先企業のどっち?

派遣元会社は、特定労働者派遣事業の許可を得た事業者です。

そのため、そもそも派遣労働者と「雇用契約」を結んでないとおかしいだろうと思うのですが、派遣元企業は派遣労働者に支払ったお金を「給与」ではなく「外注費」として計上し、それを否認されました。

原処分庁の主張は、「指揮監督下にあったのは、派遣先ではなく派遣元企業」としていたので、この裁決の争点は、派遣労働者が指揮監督下にあったのは、「派遣元企業か?それとも派遣先企業か?」ということです。

それでは事実関係から見ていきましょう。

派遣元会社と派遣先企業のどちらの指揮監督下にあったか?がポイントになった事例(平21.10.14、裁決事例集No.78 488頁)

派遣元会社と派遣労働者との事実関係

  • 「派遣社員は、派遣就業に際し、派遣元会社の指揮命令に従うほか、本件派遣先の指揮命令に従わなければならない」と、派遣社員と派遣元会社で交わした就業規則に記されていた。
  • 就業規則には、「派遣社員が解雇事由に該当する場合は、30日前に予告等して解雇する」と記載されていた。
  • 派遣労働者に交付した「派遣社員労働条件通知書」には、請求人は「あなたを派遣社員(派遣労働者)として雇い入れます。」との文言がある。
  • 「派遣社員労働条件通知書」には、雇用期間及び労働条件等については、雇用期間、就業場所、業務内容、始業及び終業時刻、休日又は勤務日、時間外・休日労働、年次有給休暇、賃金に関する定め(基本賃金(時間給、日給、月給)、通勤手当、時間外・休日・深夜労働に対する割増率)、社会保険の適用関係、退職に関する事項の記載がある。
  • 派遣元会社が提出した「給与明細書」には、本件派遣労働者の氏名、「勤怠」欄に出勤日数・出勤時間数及び残業時間等、「支給額」欄に基本給、残業給等の支給額および「控除額」欄に社会保険料等の控除額が記載されている。
  • 派遣労働者の賃金単価(時間給)は、派遣元会社が決定していた。
  • 派遣労働者の勤務状況については、派遣元会社の担当者が毎日派遣先を巡回して確認していた。
  • 派遣労働者の賃金については、毎月派遣先会社から送付されるタイムカードの写しを基に計算を行い、派遣労働者の金融機関の口座に振り込む方法で支払っていた。

派遣元会社の主張

  • 派遣労働者と雇用契約は結んでいるものの、派遣労働者に対する業務上の指揮命令権はすべて派遣先にゆだねられていた。
  • 労働者派遣法において、派遣先にも一定の義務を課しているのは、派遣元会社が本件派遣労働者に対してすべての責任を負うものではないことを裏付けたものであるから、派遣元会社と派遣労働者との関係は、雇用として認識するより業務請負と考えるべきである。

国税不服審判所の判断

就業規則について
  • 派遣就業に際し、派遣元会社の指揮命令に従うほか、派遣先の指揮命令に従わなければならないとある。
  • 派遣労働者が解雇事由に該当する場合には解雇する旨が定められている。
派遣社員労働条件通知書について
  • 「あなたを派遣社員(派遣労働者)として雇い入れます」との記載がある。
  • 雇用期間、就業場所、業務内容、労働時間及び賃金等の労働条件が明記されている。
派遣社員就業条件明示書について
  • 従事業務の内容、派遣就業場所、就業に関する指揮命令者(派遣先)、派遣就業の期間並びに派遣元及び派遣先の各責任者名などが明記されている。
お金の支払いについて
  • 派遣元会社自ら、派遣労働者の勤務状況を確認していた。
  • 派遣元会社が決めた賃金単価等に基づいて支払額を計算していた。
  • 毎月派遣先からタイムカードの写しの交付を受けていた。
  • そのタイムカードで、派遣労働者の勤務時間を確認して、派遣労働者に給与明細書を交付して支払っていた。
総合判断

派遣元会社と派遣労働者との間には雇用関係が成立している。

派遣労働者は、派遣元会社との雇用関係の下に、派遣元会社の指揮命令に従うほか、派遣先の指揮命令を受けて、当該派遣先のために労働に従事していたものと認められる。

そうすると、本件のお金は、派遣元会社と派遣労働者との雇用契約、またはこれに類する原因に基づき、派遣元会社の指揮命令に服して提供した労務の対価として派遣労働者に支給されたものであり、所得税法第28条第1項に規定する給与等に該当するものと認めるのが相当である。

派遣元会社の主張について

派遣元会社は

「派遣労働者に対する業務上の指揮命令権はすべて派遣先にゆだねられている」

「労働者派遣法において派遣先にも一定の義務を課しているのは、派遣元会社が派遣労働者に対してすべての責任を負うものではないことを裏付けたものである」

「したがって派遣元会社と派遣労働者との関係は、雇用として認識するより業務請負と考えるべきである」

と主張するが、労働者派遣とは、自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために従事させることとされていることをいう。

しかし、派遣先が派遣労働者に対する指揮命令権を持っていたとしても、そのことは、労働者派遣の性質上当然である。

それをもって、派遣元会社が派遣労働者を雇用したという認定を妨げるものではない。

したがって、上記の請求人の主張は、独自の見解というべきであって、採用することはできない。

よって、本件金員を対価とする役務の提供を受けることは、消費税法第2条第1項第12号に規定する課税仕入れに当たらないので、同法第30条第1項に規定する課税仕入れに係る消費税額の控除をすることはできない。

派遣先に指揮監督されていたとしても

この派遣元会社の主張は、かなり無理がありました。

派遣労働者に渡した書類から、あきらかに雇用関係が成立していたことがわかるからです。

そのうえお金の管理も派遣元会社、時間単価を決める権限も派遣元会社となると、「派遣先の指揮監督下にあった」という主張が通るのはまず無理でしょう。

ただ総合判断で、「派遣先が派遣労働者に対する指揮命令権を持っていたとしても、そのことは、労働者派遣の性質上当然である」としたのは参考になります。

派遣先の指揮監督下にあったとしても、それだけで業務委託契約が成立しないわけでないことがわかるからです。

この事例から得る教訓は(労働者派遣事業かは抜きにして)、

  • 業務委託契約を成立させるには、契約書の中身は非常に大事になること。
  • お金の管理、労働時間の管理なども、合理的な理由がない限り、自らはしてはいけない。

ということです。

まとめ

派遣契約とは、雇用主たる派遣元会社から労働者派遣契約に基づき雇用関係の無い派遣先会社へ従業員を派遣するものですから、それを業務委託契約にして「外注費」に計上するのは、はじめから無理があります。

それでも「指揮監督下にあるとはどんな状況か?」を知るには参考になります。

また、業務委託契約を成立させるには、契約形態と勤務実態に矛盾がないようにしておくことも大切であることも、忘れないようにしましょう。