【判例】キャバ嬢に支払ったお金が「外注費」でなく「給与」と判定された事例

業務委託契約が「給与」か「外注費」になるかの判断は、消費税1-1-1を読めば概念的なものは理解できます。

消費税基本通達1-1-1

しかし実際には、消費税基本通達1-1-1を読んでも、いまいちよくわからないが本音ではないでしょうか?

やはり「給与」と「報酬(外注費)」の線引きを理解するには、実例をもって解釈するのが一番です。

そこで、実際の判例をご紹介し、裁判所が何を「給与」とみなしているかを見ていきます。

「外注費」と「給与」の違いをしっかり理解するなら、下記リンク先記事が役立ちます↓

キャバ嬢に支払ったお金は「給与」になるか?「報酬」になるか?

この判例は、キャバクラ店のキャバ嬢に支払ったお金が、「給与」になるか、それとも「報酬(業務委託契約としての報酬)」になるかで争われた事例です。

納税者側は、「キャバ嬢に支払ったお金は報酬」と主張しましたが、国税に「給与」と否認され、それを不服として国税不服審判所で判断を争うことになりました。

結論からいうと、納税者側の主張は退けられ、「給与」と判断されました。

キャストに支払った金員は給与等に該当するとした事例

では、どんなことを給与と審判所長は判断したのか?まず事実関係を見ていきましょう。

事業所得と給与所得との違い

まず、事業所得と給与所得の違いを理解しましょう。

事業所得

自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反復継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得

給与所得

給与所得とは雇用契約又はこれに類する原因に基づき使用者の指揮命令に服して提供した労務の対価として使用者から受ける給付をいう。

さらに給与所得については、とりわけ、

  • 空間的、時間的な拘束を受けていること
  • 継続的ないし断続的に労務又は役務の提供があること
  • その対価として支給されるものであるかどうか

いわゆる労務の提供等と、給与支給者との従属性が重視されなければならない(最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決)とされています。

このことを最初に理解して、事実関係をみていきます。

キャバ嬢とお店との事実関係

  • キャバ嬢との契約は、面接時に、関係書類を提示するか口頭により、給与体系、勤務時間、店舗規則等を説明し、それに同意したキャバ嬢を採用していた。
  • 給与システムは、週4日勤務できるキャバ嬢は50分2,500円、週5以上勤務できるキャバ嬢は50分3,000円
  • 給与から雑費として10%引かれる
  • 送迎代は片道500円、ヘアメイクは1回1,000円、ドレス代は無料
  • 遅刻、早退及び当日欠勤の場合には会社の代表者か店長に連絡する。無断欠勤の場合1日分のペナルティがある。
  • お店を辞める場合には、1か月前に会社の代表者か店長に話をする。話がない場合は給料の支給はない。
  • キャバ嬢の勤務時間はタイムカードで管理していた
  • 勤務時間、接客時間、送迎、同伴、指名、延長、ドリンク代、ヘアメイク代などは、店長がパソコンで管理し、このデータをもとに賃金台帳を作っていた
  • キャバ嬢に対し、同伴、指名及び延長等の実績に応じてポイントを付与し、毎月20日時点でのポイント数に応じてそれぞれの時給を決めていた。
  • キャバ嬢は、毎週木曜日までに、翌週1週間の出勤予定日について、店長に連絡する。
  • キャバ嬢は、出勤予定日に出勤できなくなった場合、店長に出勤できない旨を連絡していた。
  • キャバ嬢は、出勤予定日以外の日に出勤を希望する場合、店長に対し出勤の可否を確認するが、店長は出勤を希望する日においてキャバ嬢の人数が足りている場合には出勤を断る場合があった。
  • 店長はキャバ嬢に対し、指名客だけでなく指名客以外の客も対象として接客するよう指示を行っていた。
  • キャバ嬢は、プライベートで関わっていること、あるいは過去に指名を外されたこと等の理由により、店長から指示された客の接客を断ることがあったが、その場合には他の客の接客を指示された。
  • 接客等の指導はないが、経験のない者には、本件各店長が灰皿の換え方、飲み物の作り方などの基本的なことをその都度教えていた。
  • お客に対する掛売りは原則として行われておらず、キャバ嬢はお客に対する売掛金を回収する責任を負っていなかった。

国税不服審判所の判断

空間的・時間的束縛はあったか?
  • キャバ嬢とお店は、給与体系、勤務時間、店舗規則などの勤務条件について合意がされていた
  • 当該合意に基づき、キャバ嬢の出勤状況、接客時間、勤務時間等を、代表者や店長が管理していた
  • キャバ嬢は、自分の指名客以外の客に対しても店長の指示により接客業務に従事していたことが認められる。
判定

キャバ嬢は、入店から退店までの時間は納税者(お店)の管理下にあり、納税者から空間的、時間的な拘束を受け、継続的ないし断続的に労務の提供をしていたものとみることができる。

自己の計算と危険において独立して事業を営んでいるか?
  • キャバ嬢へ支給したお金は、時給に接客時間又は勤務時間を乗じて計算した基本給の額に、各種手当の額を加算して算定されている
  • キャバ嬢への支給額は、雇入れ年月日から少なくとも1~2か月間は一定の時給が保証されている
  • キャバ嬢は、お客に対する売掛金を回収する責任を負っていなかった
判定

キャバ嬢が自己の計算と危険において独立して事業を営んでいたものとみることはできない。

総合判断

  • キャバ嬢は、納税者から、時間的、空間的な拘束を受けて継続的ないし断続的に労務の提供をしている
  • その対価としてキャバ嬢に支給していたということができる。
  • したがって、キャバ嬢に対する支給額は、納税者(お店)との雇用契約に基づき、納税者の指揮命令に服して提供した労務の対価、すなわち給与等に該当する。

リスクを負わない業務は「事業」でない

このような事実関係から、国税不服審判所は、キャバ嬢に支払ったお金は「給与」と判断しました。

事実関係を読めばわかりますが、出勤時間やお客様の管理もお店側が行っていて、キャバ嬢に選択権はないに等しい状態です。

さらに、支給額についても、キャバ嬢がサービス料金やドリンク代を決めれるわけでなく、お店側が決めた料金でサービスを提供しています。

その他の判例でもありますが、このような「赤字になることのない」形態、つまりリスクを負わない業務委託契約は、給与と判定される要素が多くなります。

そしてもう一つ、ツケで飲ませる権限が、キャバ嬢になかったということも影響しています。

事業所得とは「自らの計算と危険において」とありますから、たとえばツケで飲ませて貸倒れになるリスクがない様態だと、事業とはいえないよね、と判断されてしまうのです。

まとめ

この事例はキャバ嬢へ報酬として支払ったお金が、「給与」と判定された事例ですが、ご自分の職種に合わせても、当てはめられることがあると思います。

何をもって「給与」となるか、「報酬」となるか、具体的な基準がわかりやすくなります。

判例を参考にして、否認されない業務委託契約を交わしましょう。