会社を安定して経営していくには、リスク対策が絶対に必要となります。
万が一の事故が起これば、多額の支払いが発生し、会社の財政状態によっては、倒産もあり得る事態となりかねません。
ここでいう万が一とは、事業保障と、従業員の労使トラブルです。
1・事業保障
事業保障とは、経営者が死亡した場合をいいます。
経営者がお亡くなりになると、会社の信用力は一気に低下し、
- 売上の減少
- 金融機関からの早期返済要求
- 取引先からは取引条件の見直し(買掛期間の短縮や現金取引への移行)
など、財務基盤を揺るがす事態が起こりかねません。
さらに、従業員への給与の支払い、それに伴う社会保険料、家賃や運転資金も毎月発生し続けます。
これら資金繰りの問題を乗り切るには、相当の資金量がなくてはなりません。
このような事態に、自社のキャッシュのみで対応するのは現実的ではありません。
やはり、法人保険で備えるべきです。
さらにいえば、中小企業の経営者の場合、自身の身に起こる万が一に対する備えとしては、実は法人保険だけでは足りません。
自社株対策と連帯保証人対策が必要となります。
a. 自社株対策
中小企業の経営者は、自社の大株主と代表取締役が同一人物であることがほとんどです。
会社は株主の意向によって経営方針が決まりますが、その株主が死亡によっていなくなってしまうと、会社の機能は停止してしまいます。
会社の機能を復活させるには、代表取締役を決めなくてはいけませんが、中小企業は経営者=大株主ですので、株主総会も開くことができなくなり、代表取締役決めることができなくなり、会社は機能不全に陥ります。
もちろん、会社法で決められた手続きを行えば、新しい代表取締役を選出できますが、ここで論じたいのは手続きの話ではありません。
要は、経営者が死亡したときの対策は、法人保険だけでは足らず、自社株をどうするかまで考えておかなくてはいけないということです。
ちなみに、法人で掛けた死亡保険金は、代表取締役でなければ請求することができません。
代表取締役がお亡くなりになった場合、新らしい代表取締役を決めねば、死亡保険金を受け取れないことに注意しましょう。
さらにやっかいなのは、経営者が意識不明になった場合です。
お亡くなりになったわけではないので、相続によって株を譲渡するより、ある意味、問題は複雑になります。
経営者は死亡時の資金面だけでなく、自社株をどうするかまで対策を考えておかなくてはなりません。
b. 連帯保証人対策
経営者には、連帯保証という問題があります。
金融機関も連帯保証なしの融資を行うようになりましたが、連帯保証が外れてない時点で経営者が亡くなりになれば、会社や借金をどうするかの問題が生じます。
相続を放棄して、借入れも清算するか、それとも借入を含めて相続するか、借入を含めて相続をするにしても、後継者は会社を経営していけるのか?その資金はあるか?
などなど、連帯保証人が絡むことで、ご家族が直面する相続は複雑さを増すことになります。
このような相続後の混乱を避けるためにも、連帯保証人対策を組んでおくべきです。
2・労務リスク
人事・労務に関するリスクは、年々上昇しています。
長時間労働、ハラスメント、未払い残業代、労働災害、不当解雇、情報漏洩など、これら労働トラブルによって裁判にまで発展すれば、企業は百万、ときに千万単位の賠償金の支払いを命じられることがあります。
仮に数千万単位の賠償金の支払いを命じられれば、それが原因で倒産しかねないでしょう。
労務トラブルを簡単に考えてはいけません。
労務トラブルを未然に防ぐには、リスクを洗い出して抽出し、それに対処できる管理体制を構築しておくことが打ち手です。
そのような労務リスク対策への取り組みが、企業のレジリエンス(回復力)を高めます。
その第一歩が、就業規則の見直しです。
就業規則は、会社内のルールを定めた規則で、経営者と従業員の双方のそれぞれが守るべきルールとなります。
ルールに基づき運営されることで、労使間のトラブルを回避することに役立ちます。
労使間のトラブルに発展するのは、物事を「正」か「否」か、基準に基づいてジャッジするルールがないことに大きな原因があります。
この就業規則を、労務トラブル回避に役立てられるよう見直していきます。
さらに、就業規則を見直すことで、労働基準法等の労働法に合わせた労働環境に整備することになり、従業員が安心して働きやすい環境へと変えることができます。
職場が安心して働きやすい環境になれば、従業員の離職率の低減はもちろん、人手不足が進む中でも採用に困らない会社になるでしょう。