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会社の従業員について、人的資本といわれるようになりましたが、人材への考え方は大きくいって2通りあります。
それは、前述の人的資本と人的資源の2つです。
従業員を人的資本と捉えるか、人的資本と捉えるかは、その会社の考え方で変わります。
それによって、「求める人材像」も変わり、採用・育成にも影響してくることなので、はっきり決めておく必要があります。
人的資本と人的資源の違い
人的資本と人的資源には、次のような考え方の違いがあります。
人的資本
人的資本は、従業員の持つ知識、スキル、経験などを会社の「資本」としてとらえる考え方です。
人的資本がつくり出すイノベーションが、価値を生み出すことから、企業にとって重要なファクターという位置づけになります。
人的資本を重視する会社では、従業員の能力やスキルを高める教育や能力開発は、将来的なリターンを生み出す「投資」となります。
したがって、人的資本は人に投資して育てることが基本政策となります。
人的資源
人的資源は、従業員の持つ、能力・スキル・経験を、会社の経営資源と捉える考え方です。
人的資本と人的資源でいったい何が違うんだと思われるでしょうが、人的資源は、資源を効率よく使って収益を上げていこうという考え方でです。
いわゆるコスパ・タイパ重視がベースで、労働生産性といったパフォーマンスに重きを置いているといえるでしょう。
会社のステージによって変わる人材のタイプ
タイパやコスパ重視といえば聞こえは悪いですが、労働力やパフォーマンスを最大にするために、今ある戦力をどう配置すればいいのかを考えるのは経営では当たり前で、一概に人的資源が悪いとはいえないでしょう。
むしろそれよりも、人的資本も人的資源も一緒にして、採用も育成も考えることに問題があります。
同じ会社内とはいえ、業務によっては、人的資本を求めるか、人的資源を求めるかは変わります。
そしてそれは、従業員の方でも同じです。
自身の人生観や、仕事に求めるやり甲斐、キャリア・ライフプラン、家庭の事情などで、従業員が選択する働き方は変わります。
大事なのは、どういった業務・人材に、人的資本か人的資源を求めるか、その振分けでしょう。
たとえば、会社の人材は次のようなタイプに分かれます。
4つのカテゴリーでわける人材
1・コア人材
企業の価値創造や競争力をけん引する、高度な専門知識やスキルを持つ人材です。
企業の経営基盤を支える存在で、将来の幹部候補です。
他社との差別化、商品・サービスの開発、ビジネスモデルの変革、組織のパフォーマンスの向上など、会社の成長を引っ張っていく人材となります。
2・スペシャリスト人材
技術開発やマーケティングや人事などの専門分野で、知識やスキルを求められる人材です。
専門知識やスキルを活用した、課題解決、新技術・商品・サービス開発などの役目があり、特定の分野で付加価値を生み出していく人材といえるでしょう。
3・マネジメント人材
組織の目標達成に向けて、チームや部門を管理する人材です。
部下の能力を引き出しながら、育成していくことも求められます。
どちらかといえば、決められたことをきちんと遂行することに主眼を置かれた人材です。
4・オペレーター人材
日常的な業務を遂行し、企業の基盤を支える人材です。
各種の日常業務を回すとなる大切な人材ですが、マニュアルなどで決められた通りに業務をこなすことを求められる人材です。
人的資源か人的資本かは一元論で考えない
このように、人材にはそれぞれタイプがあり、求めるポジションによって変わります。
たとえば、オペレーターは外注をメインとし、自社はコア人材やスペシャリスト人材を採用していくという考えもあるでしょうし、その反対に、オペレーターをメインに雇用しているという会社もあります。
それは、その企業がどのような経営戦略を採るかや、業態でも変わります。
したがって、人的資源が良いか人的資本が良いかの、一元論的な考えに持っていこうとすることに無理があります。
事業の立ち上げ期は人的資源の考え方を重視、事業の安定期は人的資本の考え方を重視するなど、そのときの状況に応じて調整する柔軟性が必要です。
むしろ大事なのは、自社が求める人材のタイプを把握して、採用・育成・配置を成長戦略に組み込んでいくことでしょう。
人的資源は短期視点、人的資本は中長期視点
戦略的な面から考えれば、人的資源と人的資本の大きな違いは、短期的視点に立つか、長期的視点に立つかにあります。
人的資源は、今ある従業員の能力を最大限に引き出す、短期戦略型の視点です。
このことから、コスト削減や生産性向上など、短期的な目標達成を目指す場合は、人的資源の考え方を重視し、効率的な人材配置や労働管理を行うことが有効といえます。
一方の人的資本は、従業員の能力を育てて成果を得ていくことから、中長期戦略型の視点といえるでしょう。
イノベーション創出や競争力強化など、長期的な成長戦略を描く場合は、人的資本の考え方が合うといえます。
人的資本は必須となった
ただし、企業が成長していくためには、人的資本の考えを取り入れていかなくてはいけないでしょう。
人的資本といっても、遅かれ早かれいずれ従業員は辞めていくものであり、企業が永遠にその資本を独占することはできません。
最近では転職が当たり前になり、人材の流動性も高くなっていて、投資への不確実性が増しています。
もうすでに離職を前提とした、人材戦略を考えていかなくてはいけない時代です。
であるなら、中長期視点に立つ、人的資本はそぐわないのでは、という考え方もあります。
しかし、すでに現在の商品・サービスは、知識・情報・技術・アイデアなどの無形資産が、製品やサービスの差別化、コスト削減や品質向上の技術革新といった、高い付加価値を生み出すようになっています。
このような無形資産が価値を創り出す以上、それに対応する高度なスキルや知識を持つ人間を採用し、育成していかなければ、企業の競争力は失われていくばかりです。
経営戦略と人材戦略は一体で、人材育成や能力開発をして付加価値を生み出す人材を育ていくことは、すでに必須の施策になったということです。
とくに、人口減少で労働人口の減っていく日本では、少ない人数で業務を回して利益を最大化する生産性の向上はマストの課題です。
人的資本は、時間、労力、お金がかかり、コストと回収も不確実でありますが、企業の成長を実現する上で、不可欠な要素であることは間違いないでしょう。
大事なのは人的資本のデメリットを理解して、その能力を最大限に引き出すための取り組みを行うことが重要です。
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