中小企業が「求める人材像」にマッチする人を採用できない理由

採用対策

「やっと採用できたのにすぐに辞めてしまう」「期待して採用したのに思った人と違った」

中小企業で起こりがちな採用のミスマッチ、起これば採用や育成にかけた費用が無駄になってしまいます。

しかし、嘆いていてもはじまらず、採用のミスマッチが起こるのは、やはり理由があります。

中小企業にありがちな採用のミスマッチとは

採用のミスマッチとは、企業と求職者の間で認識のズレがあることをいいます。

企業側

  • イメージしていた人と、実際の能力やスキルの差があり過ぎる

求職者側

  • 聞いていた業務内容と、実際の業務が違っていた。思ったより大変だった
  • 会社の価値観に合わない
  • 上司や周りの人と合わない

このような、企業と求職者で、お互いが持つイメージや、現実とのギャップが、採用のミスマッチを生み出します。

ちなみに、労働条件に関しては、雇用するときに労働条件を書面にして交付する義務が企業にはあり(労働基準法15条)、この条件と実際の条件が異なっていれば、労働者は、即、雇用契約を解除できるとされています。

(労働条件の明示)

前項の規定によつて明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。

労働基準法15条②

採用のミスマッチが起こす弊害

採用のミスマッチは、企業に次の弊害を起こします。

採用・育成にかかったお金と時間を失う

採用した従業員がすぐに辞めてしまうと、採用(求人広告費、人材紹介手数料など)や研修費用などの育成にかかった時間と費用が無駄になってしまいます。

さらに、再採用のコストも追加で必要になります。

生産性が上がらない

早期離職が常態化すると、業務の引き継ぎや再教育に時間が必要になり、業務の負担は既存の従業員が負い、生産性がいつまで経っても向上しません。

また、従業員のパフォーマンスが低い場合は、期待される成果が得られないということもあります。

競争力の低下

従業員の入れ替わりの激しと、既存の従業員がフォローに時間を取られ、負担が増加します。

その結果、既存の従業員は、新しいスキルやノウハウを習得する時間がなくなり、企業の競争力も落ちていきます。

イメージの悪化

早期退職が多い企業は、イメージが悪く、採用活動に悪影響を及ぼします。

このように、採用のミスマッチが起こす損失は、お金だけじゃなく、企業イメージの悪化や、企業の競争力の低下まで範囲が広く、早急な対策が必要となります。

中小企業に採用のミスマッチが起こる原因

採用のミスマッチに適切に対応するには、原因をしっかり把握しておかねばなりません。

中小企業に採用のミスマッチが起こる原因には、次のことが考えられます。

1・情報発信不足

SNSで自社の情報を発信することが当たり前になってきていますが、情報発信を採用ツールとして使う中小企業はまだ少ないのが現実です。

情報発信を通じて、ビジョン、カルチャー、業務内容、キャリアパスなどを伝えていけば、その条件や価値観に反応する人が応募してくるでしょう。

情報発信の量がすくなければ、企業が求人を出していることすら気づかれないままになってしまいます。

2・採用基準があいまい

採用の基準が明確ではなく、社長や採用担当者の価値観や経験則に基づいて採用が行われていることも原因の一つです。

「良い人」「一生懸命頑張る人」のような抽象的な選考基準は、採用したい人の乖離が大きくなります。

やはり、「求める人材像」を作り、採用基準をしっかり決めておくべきです。

3・スキル・経験で採用を決める

即戦力がほしいばかりに、スキルや経験のみで採用を決めてしまう場合があります。

スキルや経験も大事ですが、それよりも、その企業の価値観やカルチャーに合うか合わないかの方が重要です。

合わない人を雇用しても、従来のパフォーマンスを発揮できないどころか、組織の和を乱したり、早期離職につながります。

価値観やカルチャーを理解してもらうことを、採用基準にするべきでしょう。

4・選考プロセスの問題

中小企業では、採用の専門担当者がいるわけではありません。

その結果、面談に十分時間をかけられず、質問もスキル不足で一方的なものになってしまい、求職者の能力や適性を十分に見極めることができず、入社後に採用のミスマッチが起こります。

また、インターンシップ制度など、企業のカルチャーや業務内容を体験できる機会を設けてないことも、採用のミスマッチの一因です。

5・労働環境のギャップ

設備が古い、IT化が遅れている、残業時間が多いなど、実際の労働環境が想定していたものと違い、「思った以上に仕事が大変だった」というギャップを起こします。

先述したインターンシップ制度のような、求職者が体験機会を設けてないことに一因があるといえるでしょう。

入社前に情報が不足していると、「聞いていた話と違う」というギャップを感じることになります。

6・フォロー不足

入社後のフォロー不足は、離職を早める原因です。

時間や労力が限られている中小企業では、入社後のフォローを丁寧にできない事情もありますが、慣れない環境で放っておかれると、何をしてよいか戸惑うことになります。

その状態で注意でもされたら、「教えてもってないのに」といった不満につながっていきます。

スキル・経験を買って採用した場合も、「わかっているだろう」と、中途採用した従業員にお任せにするのは危険です。

同じ業務でも、会社によってはやはり方が変わることもあり、経験者であっても、初めての場では不安になります。

入社後のフォロー不足は、離職を招く原因となります。

中小企業が求める人材像にフィットする人を採用する方法

1・求める人材像の明確化

「こんな人を採用したい」という希望は、それを言語化することからはじまります。

はじめに現状分析を行う

そのため第一ステップとして、現状分析を行います。

繰り返しますが、スキルや経験だけで決めるのではなく、「経営理念といった価値観や自社のカルチャーに合う人」を条件にすることを忘れないことがポイントです。

具体的な人材像を言語化する

現状分析から、求める人材のスキル、経験、知識、資格、性格、価値観、キャリアプランなども具体的にします。

既存の社員で活躍している人材を参考に、具体的な人物像を作成するのも有効です。

このように、具体化された「求める人材像」を言語化して明確にします。

求める人材を作るなら、合わせて人事ポリシーも作りましょう。

2・自社に合う採用方法の選択

求める人材像に合わせて、適切な求人メディアを選定します。

求人サイト、人材紹介、ハローワーク、SNS、自社ホームページなど、様々な媒体を組み合わせることも有効です。

求人を行うときは、労働条件を並べただけの、無機質な文章は避けましょう。

経営理念やビジョン、企業カルチャー、企業の強み、事業の将来性、業務内容、仕事のやり甲斐などを、魅力的に伝える工夫が必要です。

そのような文章を考えるときに有効なのが、第一ステップで考えた「求める人材像」です。

「文章を書くのが苦手だ」という社長や採用担当者もいらっしゃると思いますが、そのようなときは生成AIを活用しましょう。

「このような人を採用したい」という具体的な人物像を入力した上で、採用に使う文章を考えてくれるように依頼すれば、参考になる文章を瞬時に出してくれます(そのまま使わず、自分なりの言い方に変えるのがベストです)。

採用ホームページやSNSでは、先輩従業員へのインタビューや、仕事の様子などを動画で発信するもの有効です。

また、既存の従業員からの紹介、リファラル採用も有効な手段です。

3・採用プロセスの工夫

多くの中小企業では、採用を決める手段は、書類選考、面接のみがほとんどです。

しかし、それだけで、求職者の能力や人間性、適正を見極めるのは不十分といえるでしょう。

やはり、適性検査、職場体験などの、多様な方法を導入していくべきです。

このような方法を採り入れるのは、「面倒くさい」が本音でしょう。

ただ、良くいわれることですが、「採用の失敗は取り返せない」というように、人間性を教育で変えることはできないのが現実です(いったん雇えば簡単に解雇することもできません)。

そのために必要なのがテストです。

「求める人材像」を決めると同時に、「採用しない人」を決めることは、もっと重要です。

また、求職者の適性を見極めるためには、面接官のトレーニングも必要です。

質問内容を工夫し、求職者の価値観やキャリアプランなどを深く掘り下げられるようにしておくのがベストです。

4・入社後のフォロー

入社後に早く慣れてもらえるように、メンター制、教育・研修の充実、ナレッジやノウハウの共有化などを行いましょう。

教育やナレッジの共有化には、テキストだけでなく、動画も有効です。

定期面談を行って悩みや状況を聞いてフィードバックする、といったことも取り組み、一人で悩まない環境を作ることも大切です。

採用施策を成功に導く重要なポイント

上記の採用施策を成功させるためには、下記の3つの重要なポイントがあります。

1・社長の積極的な関与

中小企業では、経営者の考え方や価値観が、良くも悪くも施策に大きく影響します。

繰り返しますが、採用の失敗は取り返せないといわれるように、採用を簡単に考えてはいけません。

2・採用担当者の育成

採用担当者のスキルアップを図り、求める人材像を的確に見抜く力を養いましょう。

人の見極めは、マニュアルや訓練なしではできません。

3・長期的な視点

採用は、短期的な人材不足を解消するだけでなく、長期的な企業の成長を支えるための重要な戦略です。

長期的な視点を持ち、企業の未来を担う人材を採用することが心がけが必要です。

大畑 寛泰

1972年生まれ/鳥取県在住/趣味:英語学習・料理(和洋中)/多様な職務経験と財務・労務リスク対策の知識をバックグラウンドにした、「人」と「お金」の両面から企業の成長を支援する人事評価制度コンサルタント。事業戦略、人事評価、労働環境の整備、財務の安定から支援し、「この会社で頑張りたい」「この会社で働きたい」と人が集まる「良い会社」作りをサポートします。

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