宗教と組織には、リーダーシップにも共通点があります。
宗教も組織もリーダーには、育った環境も考え方も違う人々を一定方向に導いて、目標達成に向けて結束させる、という役目を担っています。
違いといえば、宗教は主に救済や精神的な満足を提供し、企業は利益や成果を追求します。
しかし、企業が利益や成果のみを追求するという時代は終わりました。
企業は、経営理念、パーパス、ミッションを掲げて、社会貢献を大義にしなくては、顧客のみならず、従業員からも理解を得られなくなってきています。
このような従業員の意識の変化に伴い、組織のリーダーの役割も、宗教のリーダーに近いものへと変化しています。
リーダーが組織をまとめるときに中心となるもの
宗教と組織のリーダーでは、さまざまな共通点があります。
その中でも大きな役割は、人々を一つの方向に向けて結束させて動かすことにあるでしょう。
宗教のリーダーは、信者に向けて救済や啓蒙を説き、集団を一つの方向へと導きます。
一方、組織のリーダーは、主に売上や利益といった数字目標を掲げて、組織をまとめていきます。
組織のリーダーはエバンジェリストたれ
企業の場合、成果や利益が会社の存続に関わるため、数字重視の姿勢を否定はできません。
しかし現代では、今まで以上に社会的責任を、企業は求められるようになりました。
企業が商品やサービスを販売する以上、そこに顧客への責任が生じるのは当然ですが、それだけで責任を果たしたとはいえなくなりました。
企業の事業活動が、社会全体にどのようなインパクトを与え、それが社会をどうポジティブに変えていくか、そう、企業の存在意義を問われるようになったのです。
その結果、経営理念、パーパス、ミッション、バリューといった、自社の存在意義を明確に打ち出すことが必要となりました。
それはまさに、宗教の教義と似た性質を持つ概念でしょう。
そしてこれらの理念の実現から得られる働き甲斐や社会貢献、成長意欲といった精神的充実感を、従業員も大切に考えるようになってきました。
単に働くだけでなく、何のために働くか、働いた結果、それが顧客や社会にどう影響を与えるか、まさに企業の存在意義と同じことを、従業員も価値基準に置くようになったのです。
このような意識の変化に伴い、組織のリーダーには、経営理念やパーパス、ミッションを説いて組織をまとめる、宗教のリーダー的要素も必要になったということです。
その意味で経営者は、自らが定めた経営理念、パーパス、ミッションを熱心に布教するエバンジェリスト(伝道師)たるべきといえるでしょう。
短期の利益主義が会社の成長を停滞させる原因
ちなみに、経営理念やパーパスやミッションを持って、長期視点で経営に挑む大切さを、こちらのXのポストから読み解くことができます。
中小企業の場合は、「株主=経営者」のオーナー経営者がほとんどなので、株主至上主義とは経営者個人の利益第一主義ともいえますが、経営者が自分の取り分を最大化しようとして短期利益を追い求めると、結果的にダメになることを示唆しています。
その理由の一つは、投資への積極性を失うことでしょう。
利益を残すことを第一と考えれば、投資は利益を減少させる相反する行為です。
そうなると、「投資を行うことはマイナス」という思考回路になってしまいます。
投資をして長期視点でリターンを得る思考と真逆の回路です。
となれば、設備投資はもちろん、人への投資もおざなりになってしまうでしょう。
経営理念、パーパス、ミッションは、投資を長期視点に変える
さらに、経営理念、パーパス、ミッションを持たないことは、投資にマイナスな影響を与えます。
投資の成果は、基本、長期視点です。
商品開発なら、それが売れるとは限りませんし、売れるにしても、それなりの時間がかかります。
つまり、成果がでるまでに多額のお金がかかるのが投資です。
問題なのは、その辛抱の期間、じっと我慢できるかどうかです。
成果が出るまでの忍耐は、その投資によってもたらされる成果が何によるかでしょう。
儲かるが理由なら、今期のP/Lの利益が基準となり、赤字でも耐えなければならない理由が見いだせず、撤退がベストの選択になってしまいます。
その一方、社会的意義や課題解決を投資の信念とするなら、投資の基準は利益を超えて「何としてもやり遂げなくてはいけない」という純粋な感情となり、利益が出ない時期も我慢して耐えられます。
それこそが、経営理念やパーパス、ビジョンに基づく投資といえないでしょうか?
会社経営に、経営理念、パーパス、ビジョンという長期視点が必要なのは、投資の観点からもわかります。
【まとめ】宗教のリーダーと組織のリーダーの境界線はなくなりつつある
宗教のリーダーと会社組織のリーダーには、組織を束ねて同じベクトルへ動かすという共通点があります。
その中心となるのは、宗教は教義ですが、会社組織も、経営理念、パーパス、ミッションといった概念が中心になってきています。
一見すれば、宗教のリーダーと組織のリーダーでは、まったく別の人種のように思えます。
しかし、経営理念やパーパスやミッションを、組織内に布教すべき教義と位置付ければ、実はそれほどはっきりした境界線はないといえます。
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