人手不足が進む昨今、人事評価制度を構築しておくことは大切です。
求職者目線で人事評価制度があると、
「自分がどのように行動すれば評価され、それが給与や賞与に反映されるのか?」
「昇進するためには、どのようなスキルやキャリアを積み上げれば良いのか?」
など、努力の方向性や今後のキャリアアップの道筋、収入の概算等がわかるため、自分の価値基準と合うかどうかの判断材料になり、選ぶ理由となります。
その一方で、中小企業で人事評価性を運用しようとすると
「評価制度の運用に必要な人材や予算がない」
「他の業務に追われ、評価に時間を割けない」
「評価が給与や昇進に繋がらないため、従業員が関心を持たない」
等の理由で、人事評価制度が上手く機能せず、経営陣からは「人事評価制度を導入しても意味がない」といわれてしまいます。
反対に従業員からは、評価基準が不透明、評価が公平でない、評価が賃金に反映されないなど、人事評価制度が機能してないと、「こんな人事評価制度に意味があるのか?」と不満のタネになってしまいます。
この記事では、なぜ人事評価制度が「意味のない制度」になってしまうのか、その理由と対策を挙げ、逆に人事評価制度の必要性について考えます。
中小企業の人事評価制度が従業員から「意味がない」と思われる理由
中小企業で人事評価制度が、従業員から「意味ない」と思われてしまう理由は次の8つです。
1・評価基準があいまい
評価基準があいまいで、どのような基準で評価されているか良く分からない人事評価制度だと、不公平感を感じやすくなるでしょう。
「上司の主観だけで決まる」「何を達成すれば評価が上がるか分からない」など、評価基準が不明瞭なら、努力しても評価に結び付かないことから、モチベーション低下の一因になります。
2・フィードバックが足りない
人事評価の結果に対して、適切なフィードバックが行われていないことが、人事評価制度の信頼性を失わせます。
従業員に改善意欲があったとしても、具体的な改善点が分からなければ不満につながります。
仮に評価が上がったとしても、何が評価されたかその基準の説明がなければ、達成感も得られないでしょう。
「評価結果だけ伝えられて、改善点が分からない」「なぜその評価になったのかの説明がない」などのフィードバック不足は、人事評価制度が「意味ない」と、従業員に思われる一因になります。
3・評価と昇給・昇進が連動してない
評価が良くても、「給与が上がらない」「昇進しない」となる人事評価制度の形骸化が、従業員のモチベーションを一気に下げます。
基準を達成するために努力をしても、それが昇給や昇進につながらなければ、努力をする意義を見出せなくなるでしょう。
社長がえんぴつをなめて、評価に比例しない賃金額にしてしまうことも、従業員に「意味がない」と思わせる要因となります。
一度決めたら、ブレてはいけません。
4・評価に公平性が欠ける
評価者の依怙贔屓や、部下から嫌われたくない気持ちでつける、甘めの評価など、人事評価に公平性を欠くと、従業員から信頼を失くします。
「上司のお気に入りだけが評価される」「個人の成果よりも人間関係が評価に影響する」など、人事評価に一貫性がなく、評価者(上司)によって評価がブレると「意味のない」人事評価制度と思われます。
5・短期的な結果に評価が偏重する
短期的結果は、すぐに成果に反映されやすく、評価する側も高評価を与えやすい評価基準です。
しかし、短期的なものばかり評価されてしまうと、従業員の思考も短期的結果にフォーカスするようになってしまうでしょう。
その結果、長期的に取り組まないといけないスキルアップや、継続しやらなくてはいけない掃除や挨拶などの基本を軽んじる風潮が根付いてしまいます。
「一時的な結果だけが評価され、日々の努力が無視される」、このような長期的視点のない人事評価制度も「意味がない」と思われる一因です。
6・評価制度が複雑で理解しにくい
評価制度が複雑すぎると、従業員の理解が追い付かず、人事評価制への不信を招きます。
「評価基準が多すぎて何を重点的にやれば評価されるのか分からない」「評価プロセスが複雑で何が評価されているのかわからない」などの不満を生みます。
これは、人事評価制度を運営する側も同じで、複雑なることで、制度の運用が難しくなり、結果として形骸化する怖れが出てきます。
人事評価性を複雑にしてしまうことで、「意味のない」制度となってしまいます。
7・成長機会やキャリア開発に繋がらない
評価制度が「評価で終わってしまう」ことで、従業員の不満も大きくなります。
評価制度の本来の役割は、評価制度を通じて、従業員の人間的成長や能力開発を促すためのもので、これが評価で終わってしまっていては本末転倒です。
従業員の側にしても、評価のみで終わってしまっていれば、「成長の場が与えられていない」「成長やキャリアアップのために、具体的に何をすればいいかわからない」「評価が成長の機会につながらない」など、不満が蓄積されていきます。
人事評価制度が成長やキャリア開発につながらないと、「意味がない」制度になってしまいます。
8・人事評価制度が定期的に見直されていない
ビジネス環境は常に変化しています。
にもかかわらず、人事評価制度がその時代の感覚にフィットしていなければ、従業員は現実とのギャップを感じることになるでしょう。
その結果、「昔からのやり方が変わらず、現場と合わない」「現状に合った評価がされていない」などの不満から、意味のない制度と判断されてしまいます。
人事評価制度は、一度作ったからお終いではなく、現状に合わせて定期的に見直していかなければならないものです。
中小企業の人事評価制度が「意味がない」とならないための改善策8選
中小企業が導入した人事評価制度が「意味がない」とならないためには、次の8つの改善策があります。
1・シンプルで分かりやすい評価制度
人事評価制度は、シンプルで分かりやすくが基本です。
従業員に何が求められているか、どうすれば評価されるかを分かりやすく提示することで、従業員が必要なアクションを理解して、実践に移せます。
2・定期的なフィードバックとコミュニケーションの強化
評価するだけでなく、何が良くて何が改善点なのか、評価の結果を定期的にフィードバックすることが大切です。
従業員は、具体的なフィードバックを通じて、自分の強みと弱みを把握でき、それが成長の機会につながります。
また、定期的なコミュニケーションが、上司(評価者)との間に信頼関係を築きます。
ザイアンスの効果が証明するように、信頼関係を構築するには、定期的に顔を合わせてコミュニケーションをとることが大きく影響を与えます。
3・人事評価制度と昇給・昇進を連動させる
評価結果を昇給やボーナス、昇進といったインセンティブに結びつけることで、従業員のやる気を高め、人事評価制度を行う意義を定着させられます。
「評価結果を報酬や昇進に反映する明確なルールを作る」「成果に応じたインセンティブを導入し、従業員に報いる」ことが重要です。
ちなみに、人事評価制度が機能しない理由の一つに「お金がない」が挙げられます。
人事評価で高評価をしても、お金がないため、報酬に連動できないということです。
人事評価制度をきちんと運営するには、資金に余裕を持たせておくことも実は重要です。
4・評価者の公平性
評価者の評価の偏りが、従業員に人事評価性を「意味がない」と思わせる原因となることは先述した通りです。
この偏りを極力なくすには、評価基準を具体的かつ明確にし、わかりやすくすることです。
たとえば、「同僚・上司と円滑なコミュニケーションをとっていたか?」だけではあいまいです。
「同僚からのメールの返信を〇時間以内に行ったか?」「上司への報告は〇時間以内に行ったか?」など、基準を具体的で明確にすることで、採点基準は「満たしたか?」「満たしてないか?」で評価でき、評価者の恣意性が排除されます。
5・従業員の成長とキャリア開発
人事評価制度の目的は、評価を通じて、従業員の能力を伸ばし、もって成長を促すことにあります。
評価制度をキャリア開発につなげ、従業員へ成長の道筋を示す
それ合わせたトレーニングプログラムやスキル開発の機会を提供する
このように、評価制度とキャリア開発を連動させることで、やる気をもって成長させることができます。
6・人事評価制度を現場の実態に合わせる
人事評価制度が会社のカルチャーや実態に合ってないと、従業員に不信感を植え付けます。
「企業の規模や文化に合った柔軟な評価制度を設計する」
「現場のニーズに応じた実践的な評価項目を設定する」
このような人事評価制度を設計することが大切です。
7・経営陣が積極的にかかわる
経営陣が人事評価制度を理解し、その重要性を従業員に何度もアナウンスすることが大切です。
そのような積極姿勢が、人事評価制度を根付かせる基本です。
8・人事評価制度の定期的な見直しと改善
人事評価制度は、導入すればそれで終わりではなく、会社がより良くなるよう、従業員からフィードバックを得たりして、評価制度を定期的に見直し、改善していくことが重要です。
人事評価制度の状況をモニタリングして、適宜改善していく。
評価制度を運用していく限り、この姿勢が大切です。
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