不動産の相続税の評価額は、土地と賃貸用建物の所有者が誰かによって変わります。
この記事では、土地の所有者と賃貸用建物の所有者が親の場合、相続税の会税価格がいくらになるかをシミュレーションします。
土地と建物の所有者で変わる相続税・所得税の3パターンはこちらの記事をご覧ください↓
土地・賃貸建物の所有者が同じだと一番評価減を受けられる
結論からいえば、土地と賃貸用建物が同じ所有者の場合、
- 土地→貸家建付地
- 建物→貸家
- 小規模事業用等宅地の特例→貸付事業用宅地等
となります。
土地・建物について、一番の評価減を受けられるのがこのパターンです。
土地の評価は「貸家建付地」
自分の所有する土地の上に、自分名義で建物を建て、それを他に貸す場合は、「貸家建付地」となります。
土地の評価額は、「自用地」が目安となります。
「自用地」とは、自分の所有する土地の上に、自宅を建てる場合の土地のことです。
自用地の土地の相続税評価額を求めるときは、路線価を使用します。
路線価の求め方は下記記事をご覧ください↓
「貸家建付地」は、他人に貸している建物が立っていることから、自分の敷地の利用権を制限されるため、その分を、自用地価格から引くことができます。
引く分とは、次の3つを掛け合わせた金額です。
- 借地権割合
- 借家権割合
- 賃貸割合
したがって、「貸家建付地」を求める計算式は、下記の通りとなります。
・自用地評価×{1-(借地権割合×借家権割合×賃貸割合)}
借地権割合は地域によって異なるため、路線価図や評価倍率表から確認します。
借家権割は、基本30%です。
賃貸割合は、貸家の各独立部分(構造上区分された数個の部分の各部分)がある場合に、その各独立部分の賃貸状況に基づいて次の算式で求めます。
・(A)のうち、課税時期において賃貸されている各独立部分の床面積の合計÷当該建物の各独立部分の床面積の合計(A)
上記計算式の「賃貸されている部分」は、「継続的に賃貸されている」が対象となります。
被相続人の死亡時に「一時的」に賃貸されていなかった部分は、賃貸されているものとしてもかまいません。
駐車場は貸家建付地に含まれる?
ちなみに、賃借人に貸している賃貸用建物の敷地内の駐車場や、賃貸用建物に隣接する駐車場は、貸家建付地の評価となります。
なぜなら、賃貸用建物の住人が利用している土地なので、利用がせいげんされるからです。
逆にいえば、建物の賃借人以外の人に駐車場を貸している場合は、建物の建ってない更地とみなされ、「自用地」の評価となります。
駐車場として利用している土地の評価方法はこちらをご覧ください↓
建物の評価は「貸家」
建物を貸している場合は「貸家」の評価となります。
お金を支払っている建物は、「借家権」が発生します。
借家権は、借主が不当に退去させらないよう保護を目的とした権利で、その分だけ、建物の貸主は利用を制限されます。
そのため、貸家は自用家屋の評価額(固定資産税評価額)から、次の2つを掛け合わせた金額を引きます。
- 借家権割合
- 賃貸割合
したがって、貸家の評価額の計算式は次の通りです。
・固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)
借家権割合は全国一律に30%です。
貸借割合は次の計算式で算出します。
・(A)のうち、課税時期において賃貸されている各独立部分の床面積の合計÷その家屋の各独立部分の床面積の合計(A)
なお、被相続人の死亡時に「一時的」に空いていたような場合には、賃貸されているものとして問題ありません。
小規模宅地等の特例
小規模宅地の特例は、
- 被相続人が不動産貸付業に使っていた土地
- または被相続人と生計を一にしていた親族が、不動産貸付業に使っていた土地
であれば、「貸付事業用宅地等」になり、特例を受けられます。
具体的には、200㎡まで50%の減額です。
この記事のケースでいえば、土地の所有者が建物を賃貸事業を営んでいることになり、「被相続人が不動産貸付業に使っていた土地」に該当します。
ただし、その土地を相続した親族が、相続税の申告期限まで、引き続きその宅地を所有し、なおかつその貸付事業を引き継いでいることが条件となります。
その他の、貸付事業用宅地等に該当する条件はこちらの記事をご覧ください↓
土地と建物の相続税の課税価格をシミュレーション
土地所有者の父が、自分の土地に賃貸用建物を建て、不動産賃貸事業を行っていると仮定します。
条件は以下の通りです。
- 土地の自用地価格:1億円
- 土地の面積:400㎡
- 土地の所有者:父
- 賃貸用建物:1億円
- 建物の所有者:父
- 建物の固定資産税評価額:5,000万円(現金1億円を使って1億円の賃貸用建物を建てたと仮定)
- 借地権割合:70%
- 借家権割合:30%
- 賃貸割合:100%
- 現金:1億円
1.土地の評価額(貸家建付地)
・1億円×(1-70%×30%×100%)=7,900万円
2.小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)
・7,900万円×(200㎡÷400㎡)×50%=1,975万円
3.建物(貸家)
・5,000万円×(1-30%×100%)=3,500万円
4.課税価格
7,900万円-1,975万円+3,500万円=9,425万円
シミュレーション結果
土地が更地のままなら、2億円(土地1億円、現金1億円)に対して課税されますが、賃貸物件を建てることで、課税価格を1億575万円圧縮して、9,425万円にできます。
まとめ
土地所有者と賃貸用建物の所有者が同じ人の場合、どれくらい課税額を減らせるかシミュレーションしてみました。
土地と賃貸用建物の所有者が同じ場合、土地は「貸家建付地」の評価になるため、約0%減、要件を満たせば小規模宅地等の特例の「貸付事業用宅地等」になり、200㎡まで50%の減額を受けられます。
その結果、土地については5,925万円まで評価額を下げることができます。
4割の評価減ですから、これは大きいです。
相続を見据えたときは、土地と賃貸用建物を同一にすることを考えた方が良いかもしれません。
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