不動産投資の修繕費判定法。経費になるか資本的支出になるの違いを解説

不動産の税金

アパート経営、マンション経営をするうえで、必ず発生するのがリフォームなどの「修繕費」です。

賃貸物件が古くなれば、入居率に影響してきますから、修繕費は避けて通れない費用です。

ただし、修繕費は必ずしも全額を経費にできるわけではありません。

修繕の内容によっては、数年に分けて経費計上しなくてはいけない「資本的支出」となってしまうからです。

不動産投資は収入が一定ですから、その期の経費をいくらするかは、計画的に行わなければ、簡単に赤字になってしまいますし、資金繰りの悪化も招きます。

修繕費について正しい知識を持つことは、不動産投資を成功させるうえで必須といえるでしょう。

不動産投資に修繕費用は不可欠

修繕費は不動産投資に避けて通れない費用です。

アパートやマンションは、年数が経つにつれ、物件が劣化・老朽化することは付きものです。

見た目や住みやすさも悪くなること以外も、故障や破損も起こり、それによって事故による、損害賠償リスクも発生します。

そして何より、リフォームなどの修繕を怠れば、入居率は下がり、クレームは増え、空室は埋まりにくくなって、仕方なく家賃を下げて家賃収入が減ってしまうという、負のサイクルにハマります。

不動産投資で安定した家賃収入を得るために、不可欠な費用が修繕費です。

ただし、修繕はその内容によって、その年に経費化できるものと、資本的支出となって耐用年数によって減価償却しないといけないものに分けられます。

不動産の家賃収入は一定ですから、経費をどのように扱うかは、キャッシュフローに大きく影響してきます。

不動産投資にかかる4つの修繕費用

その修繕費は大きく分けると、次の4つに分けれます。

  1. 原状回復
  2. 補修
  3. 予防修繕
  4. 大規模修繕

1.原状回復 

原状回復とは、アパートの賃貸借契約が終わった後、賃借人が部屋を借りる前の状態に戻すことをいいます。

現状回復費用は、入居時に預かった敷金から差し引かれるのが一般的で、キッチンの油の除去やサッシのカビ除去などのハウスクリーニング費用があります。

費用は20万円程度です。

2.補修

補修は、設備の故障や、雨漏りや水漏れなどの建物の破損個所の修繕です。

補修は、共用部の照明のLED化といった住民の要望や、設備や建物の経年劣化や災害など起こるため、補修箇所も多くなりがちです。

補修費用は、数万円~数十万円くらいです。

3.予防修繕

予防修繕は、大規模修繕を予防するために行う修繕です。

シロアリ検査や薬の散布、屋根や外壁のメンテナンスや一部の補修など、不具合が発生する前や、軽微なうちに対処を行うものをいいます。

こういった修繕は「不具合が起きてから」と考えてしまいがちですが、定期的な補修やメンテナンスが、大規模修繕の予防となります。

補修費用は、数万円~数十万円になりますが、毎年の事業計画に織り込んでおくべき予算です。

4.大規模修繕

大規模修繕とは、建物の資産価値を維持するために行う工事のうち、大規模で長期間になるものをいいます。

具多的には、屋根の塗装・葺き替え、外壁の塗装・タイルの張替え、年数の古い物件なら耐震補強工事などがこれにあたります。

頻度としては10年~15年に一度、費用は数百万円~1千万円です。

修繕費になる費用

賃貸物件の修繕は、軽微なものから大規模なものまでありますが、下記のような原状回復や維持管理に該当する修繕であれば、一度に経費として計上できます。

  • 共用部分の蛍光灯の取替え
  • 入退去における鍵の交換
  • 壁紙の張替え
  • ルームクリーニング
  • 建具の修理
  • キッチン、お風呂、トイレの修理

資本的支出になる費用

それに対し、下記のような建物を改良して耐久性を長くするような工事や、建物に新たな価値を加えたりすたりする修繕は、そのもととなった建物と同じ「固定資産」を購入したことになります。

  • 建物の増築や設備の新たな取付け
  • 既存とは別の用途で建物を改装した時
  • 機械の部品について、より性能を向上させる部品への取替え

これを「資本的支出」と呼びます。

固定資産の会計処理は、一般的な修繕費ではなく、減価償却資産として計上しなくてはいけません。

減価償却とは、建物のように長期間にわたって使用するもの価値を、年の経過と共に減少させていくことをいいます。

たとえば木造アパアートに300万円の資本的支出が行われると、300万円を22年の耐用年数で減価償却していきます。

賃貸物件で資本的支出にあたるものには、次のものがあります。

  • 非常階段の設置
  • キッチンをシステムキッチンへリフォームする
  • 防水や断熱など、機能を向上させる外壁塗装

資本的支出になると資金繰りが悪化する理由

修繕費が資本的支出になると、実際にお金は支出しているのに、その全額を経費にできなくなります。

たしかに、減価償却であっても、長い期間をかけて経費化していくことなので、最終的に経費になる金額は同じです。

しかし、支出したお金をすぐに費用にできないことで、資金繰りは悪化します。

たとえば、100万円を一括で経費にするのと、10年かけて経費にするのでは、トータルの節税額は35万円(法人税率35%で計算)と同じです。

つまり、手元に35万円残るということですが、前者はその年に35万円をフルで手元に残せるのに対し、後者は毎年3万5千円ずつしか残せず、その分だけ資金繰りは傷むということです。

支出は同額にもかかわらず、このような不条理な現象を生むのが減価償却です。

ときに減価償却費は、「支出もないのに手元に残るお金」と重宝がられることがありますが、経営者なら資金繰りを悪化させる原因と嘆くべきでしょう。

とくに、修繕したその年は、多額の修繕費用が支出されるわけですから、資本的支出になるか、それとも修繕費なるかは、資金繰りに大きく影響します。

(上記の例なら、前者の支出は65万円(100万円-35万円)、後者は96万5千円(100万円-3万5千円)の支出。その差は31万5千円となります。ただし、赤字を避けたいなどの事情があるなら、減価償却も悪い選択ではありません)

「修繕費」か「資本的支出」かの判定方法

修繕費か資本的支出かは、3段階によって判定します。

第1段階(少額又は周期の短い費用の必要経費算入)

次の要件のうち、どちらかに該当すると全額を修繕費として計上できます。

①一つの修理、改良などの金額が20万円未満のとき。

②おおむね3年以内の期間を周期として行われる修理、改良などであるとき。

No.1379 修繕費とならないものの判定

修繕費が20万円未満の場合はわかりやすい基準ですが、定期的な修繕を行っているのなら、「おおむね3年以内」を周期にすれば、修繕費に計上できます。

逆にいえば、修繕費を20万円未満にしたり、3年を目途にメンテナンスを行えば、意図的に修繕費にできるということです。

定期的なメンテナンスを行えば、それが建物の資産価値を維持することにつながりますから、税金面だけでなく検討すべき事項です。

20万円未満でも減価償却できる

ちなみに、修繕費20万円未満だと、経費で一度に計上できますが、青色申告をしていると、10万円以上20万円未満の資産は、3年で均等に償却することもできます。

不動産所得は、事業的規模と業務的規模で税務上の取り扱いが異なります。詳しくはこちらの記事をご覧ください↓

赤字を避けたいときは、減価償却を選択するのも方法です。

ちなみに、30万円未満の固定資産でも、「少額減価賞却資産の特例」を利用すれば、その年に全額経費にすることもできます。

特例を活用して、自分にとって有利な計上方法を選びましょう。

30万円未満の「少額減価賞却資産の特例」を利用する場合はこちらの記事をご覧ください↓

第2段階(形式基準による修繕費の判定)

修繕費には、20万円以上の支出や、不定期に行われる修繕や改良もあり、修繕費か資本的支出か迷うことがあります。

そんなとき、次の要件のどちらかを満たすと、全額修繕費にできます。

①その金額が60万円未満のとき。

②その資産の前年末の取得価額のおおむね10パーセント相当額以下であるとき。

この要件の、①と②のどちらかに当てはまると、その費用を修繕費として計上することができます。

②取得価格の10%とは、最初に取得した価格のことを指します。

これまで減価償却した金額を引く必要はありません。

もし、以前に修繕をして、資本的支出となっているなら、その金額を取得費に含めて計算します。

したがって、取得費が大きくなるほど、修繕費を多くとれることになります。

例)

たとえば、5,000万円で取得したアパートを、10年前に1,000万円で増改築し、全額資本的支出とした。

20年目のこの度、500万円で外壁工事を行った。

この場合の修繕費は、500万円で一括計上できます。

  • 取得価格:5,000万円+1,000万円=6,000万円
  • 6,000万円×10%=600万円≧500万円

ただし、この特例には2つの注意点があります。

資本的支出になるものは60万円未満でもダメ

1つ目の注意点は、60万円未満や取得費10%以下なら全額修繕費になるかといえば、そうではないということです。

この特例は、改良などの金額のうちに、修繕費であるか資本的支出であるかが「明らかでない金額がある場合」に適用されるものです。

60万円未満や取得費10%以下でも、明らかに価値を高めたり、耐久性を増すための支出にあたるのなら、それは資本的支出となります。

基準を超える金額は「全額が資本的支出」になる

2つ目の注意点は、この特例にあてはまったときは、「全額修繕費」にしても良いということです。

逆にいえば、60万円以上か、取得費の10%以上になる修繕費用は、「全額資本的支出」になってしまいます。

なお、「修繕費であるか資本的支出であるかが明らかでない金額がある場合」であることは、重ねて注意書きしておきます。

第3段階(資本的支出と修繕費の区分の特例)

最後の判定基準は、全額を修繕費にするのではなく、「一部を修繕費として計上し、残りを資本的支出にしても良い」というものになります。

つまり、第1段階、第2段階に該当しなかったものを、この第3段階で、修繕費に該当するかどうかを判定します。

判定基準は下記のいずれか少ない金額です。

①修理や改良で支出した金額の30%

②その資産の前年末の取得価額のおおむね10パーセント相当額以下。

一の修理、改良等のために要した金額のうちに資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでない金額(37-12、37-12の2、37-13又は37-14の2の適用があるものを除く。)がある場合において、継続してその金額の30%相当額とその修理、改良等をした固定資産の前年12月31日における取得価額の10%相当額とのいずれか少ない金額を修繕費の額とし、残余の額を資本的支出の額としてその業務に係る所得の金額を計算し、それに基づいて確定申告を行っているときは、これを認めるものとする。

所得税基本通達 37-14 資本的支出と修繕費の区分の特例

②の取得価格は、購入したときの価格のことで、今までの減価償却費を引く必要はありません。

また、これまでに資本的支出を行っていれば、その金額を取得費にできるため、金額が大きくなるほど、取得費を多くとれます。

ただし、第3段階の30%基準は、「毎年継続すること」が条件になることに注意しましょう。

その年で使ったり使わなかったりはできません。

第2段階で漏れた費用を修繕費にする

ここで重要になるのが、第2段階の特例に該当したものは、第3段階で除くことができるということです。

つまり、第2段階で全額資本的支出になってしまうのがあった場合、この第3段階の特例を使うことで、一部を修繕費にできるということです。

一部しか修繕費にはできませんが、全額資本的支出になるよりは幾分かましです。

例)

  • アパートの取得価格:5,000万円
  • 資本的支出::10年前に増改築で1,000万円
  • 今回の支出:700万円で外壁の交換
第2段階の判定
  • 取得価格:5,000万円+1,000万円=6,000万円
  • 取得価格の10%基準:6,000万円×10%=600万円
  • 判定:600万円≦700万円

第2段階の特例では修繕費にできない。

第3段階の判定
  • 取得価格:5,000万円+1,000万円=6,000万円
  • 取得価格の10%基準:6,000万円×10%=600万円
  • 修繕費の30%基準:700万円×30%=210万円
  • 600万円≧210万円

この場合、700万円のうち210万円を修繕費、残り490万円を資本的支出で処理します。

最終的には実質で判断

第1段階、第2段階、第3段階で、修繕費か資本的支出か区別ができないものは、「実質判定」で判断します。

実質とあるように、実態がどうなのかで修繕費か資本的支出かを判断しなくてはいけません。

1~3段階までのような基準がないので、判断は慎重に行いましょう。

(資本的支出の例示)

37-10 業務の用に供されている固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する金額が資本的支出となるのであるから、例えば、次に掲げるような金額は、原則として資本的支出に該当する。(昭57直所3-1追加)

(1) 建物の避難階段の取付け等物理的に付加した部分に係る金額

(2) 用途変更のための模様替え等改造又は改装に直接要した金額

(3) 機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合のその取替えに要した金額のうち通常の取替えの場合にその取替えに要すると認められる金額を超える部分の金額

(注) 建物の増築、構築物の拡張、延長等は建物等の取得に当たる。

〔資本的支出と修繕費等〕

災害で補修・修繕した場合

ちなみに、災害で固定資産を補修した場合は、原状回復のために支出した費用は、修繕費となります。

被災前の状態を維持するための補強工事や、排水または土砂崩れの防止等に支出した費用も、修繕費とする経費を行っている場合は、その処理が認められます。

それでも、被災した資産について、修繕費か資本的支出か区別がつかない費用があるときは、その金額の30%を修繕費、残り70%を資本的支出とすることが認められています。

災害により被害を受けた固定資産(法第33条第2項の規定による評価損を計上したものを除く。)について支出した次に掲げる費用に係る資本的支出と修繕費の区分については、上記1から8までの取扱いにかかわらず、それぞれ次による(基通7-8-6)。

(1) 被災資産につきその原状を回復するために支出した費用は、修繕費に該当する。

(2) 被災資産の被災前の効用を維持するために行う補強工事、排水又は土砂崩れの防止等のために支出した費用について、修繕費とする経理をしているときは、これが認められる。

(3) 被災資産について支出した費用(上記(1)又は(2)に該当する費用を除く。)の額のうちに資本的支出であるか修繕費であるかが明らかでないものがある場合において、その金額の30%相当額を修繕費とし、残額を資本的支出として経理しているときは、これが認められる。

災害の場合の資本的支出と修繕費の区分の特例

まとめ

繰り返しますが、修繕や補修に支出した費用が、「修繕費」になるか「資本的支出」になるかは、資金繰りに影響してきます。

不動産投資で利益が出ているなら、修繕費に該当するように支出すれば、建物の資産価値を維持できるうえ、節税にもなって、まさに一石二鳥です。

どのような補修・修繕計画を立てるかは重要です。

修繕費と資本的支出の知識をマスターして、不動産投資に役立てましょう。

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