不動産購入には税金が付きものです。
しかも、購入金額が高いだけに、税金も比例して高くなります。
購入後に困らないためには、税金分も含めて資金を準備しておかなくてはいけません。
そのためには、事前に税金をシミュレーションして、ざっくりでも必要額を算出しておくと安心です。
また税金には、軽減措置や特例で減額されることもあるため、自身が購入する物件がそれに当たるかどうかも確認しておきましょう。
この記事では、不動産を購入したときの税金について解説します。
税金は、いつまでに、どこに届けて、いくら納めるかを把握しておく
不動産を購入すると、その段階によって次の4つの税金が発生します。
- 契約時→印紙税
- 引渡し時→登録免許税
- 消費税→購入時
- 入居時→不動産取得税
不動産という高額な買い物な以上、発生する税金の金額も大きくなります。
そのため、支払わなくてはいけない税金について、
- いつまでに
- どこに届け出て
- いくら納めるか
を事前に確認して、資金計画に盛り込んでおくことが大切です。
特例や軽減措置も確認しておく
さらに、購入するのがマイホームなら、土地や建物にかかる税金に軽減措置が用意されています。
ただ、軽減措置を利用するには、自身がその要件を満たすかどうか確認しておくことが重要になります。
「軽減措置の存在を知らなかった・・・」
「特例を受けられると思っていたら要件を満たしていなかった・・・」
「届け出期間を過ぎてしまった・・・」
では、後から高額な税金を請求されてします。
不動産の税金は高額なだけに、軽減措置を受けられるかどうかが、購入資金に大きく影響してきます。
特例や軽減措置の存在を知ること、そしてそれらを受けられる要件を満たしていうるかどうか、事前に確認しておくことが重要です。
不動産を購入するときに発生する4つの税金
不動産を購入するときに発生する4つの税金について解説していきます。
1.印紙税
印紙税とは、一定額以上の契約書や領収書といった文書(課税文書)にかかる税金のことをいいます。
不動産の購入の場合は、不動産売買契約書、金銭消費貸借契約書、売買代金の領主所で必要になります。
税額は、その契約書や領収書の金額によって決まります。
契約書の印紙税
記載金額 | 不動産売買契約書 | 工事請負契約書 | 金銭消費貸借契約書 |
1万円未満 | 非課税 | ||
1万円以上10万円以下 | 200円 | ||
10万円超50万円以下 | 200円 | 400円 | |
50万円超100万円以下 | 500円 | 200円 | 1,000円 |
100万円超200万円以下 | 1,000円 | 200円 | 2,000円 |
200万円超300万円以下 | 1,000円 | 500円 | 2,000円 |
300万円超500万円以下 | 1,000円 | 2,000円 | |
500万円超1,000万円以下 | 5,000円 | 10,000円 | |
1,000万円超5,000万円以下 | 10,000円 | 20,000円 | |
5,000万円超1億円以下 | 30,000万円 | 60,000万円 | |
1億円以上5億円以下 | 60,000円 | 100,000円 | |
5億円超10億円以下 | 160,000円 | 200,000円 | |
10億円超50億円以下 | 320,000円 | 400,000円 | |
50億円超 | 480,000円 | 600,000円 |
納付方法は、契約書などを作成した人が、「収入印紙」を貼って納付します。
領収書に対する印紙税は、領収書を発行する側が負担します。
ただし、一般の個人がマイホームやセカンドハウスを売買するときは、発行する領収書には営業に関しない受取書として印紙税は不要となります。
領収書の印紙税
記載金額 | 税額 | 記載金額 | 税額 |
5万円未満 | 非課税 | 3,000万円超5,000万円以下 | 1万円 |
5万円以上10万円以下 | 200円 | 5,000万円超1億円以下 | 2万円 |
100万円超200万円以下 | 400円 | 1億円超2億円以下 | 4万円 |
200万円超300万円以下 | 600円 | 2億円超3億円以下 | 6万円 |
300万円超500万円以下 | 1,000円 | 3億円超5億円以下 | 10万円 |
500万円超1,000万円以下 | 2,000円 | 5億円超10億円以下 | 15万円 |
1,000万円超2,000万円以下 | 4,000円 | 10億円超 | 20万円 |
2,000万円超3,000万円以下 | 6,000円 | 金額の記載のないもの | 200円 |
収入印紙とは、租税や手数料を微収するために政府が発行する証票です。
収入印紙を貼るときは、印紙の再利用を防ぐために、印紙と書類の境目に押印します。
これを「消印」といいます。
消印をして納付が完了します。
不動産売買契約書は、売主・買主双方で契約書を作成して保存します。
この場合は、それぞれの契約書が課税文書に該当することになり、双方の契約書に印紙が必要になります。
ただし、コピーであれば、課税文書には該当せず、印紙税の負担も、それぞれが半分ずつで済ますことができます。
この場合気をつけなくてはいけないのが、写しでも契約当事者の直筆の署名押印があるなど、事実上の契約書と同一と認められるケースです。
これは、原本と同じく課税文書に該当しますので、収入印紙が必要となります。
貼り忘れや消印し忘れはペナルティがある
ちなみに、課税文書などへの収入印紙の貼り忘れや、消印の押し忘れがあった場合は、
- 貼り忘れ→その印紙税額の3倍
- 消印し忘れ→消されていない印紙の額面金額
の過怠税を納めることになりますので気をつけましょう。
2.登録免許税
登録免許税とは、不動産の所有権を登記する場合や、抵当権を登記する場合に、登記所で納付する国税のことをいいます。
当期とは、権利関係などを公に明らかにするために設けられた制度のことです。
不動産登記を行うと、法務局が管理する公の帳簿に
- その土地や建物の
- 所在地・面積
- 所有者の名前・住所
- 抵当権の有無
といった情報が記録されます。
登記簿は、所定の手続きを行うことにより、誰でも閲覧することができます。
登録免許税の税率
不動産登記には次のものがあります。
- 新築などで最初の所有者が行う登記→所有権保存登記
- 所有者を変更する当期→所有権移転登記
- ローンで不動産を担保にする当期→抵当権設定登記
税額は、不動産の固定資産税評価額に一定の税率をかけて求めます。
自分が住む住宅なら、軽減税率が適用される場合があります。
また、良質な住宅として認定された長期優良住宅の場合は、さらに税率は優遇されます。
登録免許税の税率と軽減措置
区分 | 標準税率 | 軽減税率 |
所有権保存登記(新築住宅) | 0.4% | 0.15% |
所有権保存登記(長期優良住宅) | 0.4% | 0.1% |
所有権移転登記(土地) | 2.0% | 1.5%(2023年3月まで) |
所有権移転登記(中古住宅) | 2.0% | 0.3%※ |
住宅ローンに係わる抵当権設定登記 | 0.4% | 0.1%※ |
※昭和57年1月1日以降に建築された新耐震基準に適合している家屋が対象
登録免許税は原則、現金による納付となります。
登記を受ける場合は、登録免許税の額に相当する金額を銀行等に納付し、その領収書を登記の申請書に貼り付けて登記所に提出します。
またオンライン申請の場合には、インターネットバンキング・モバイルバンキングやATMで納付することもできます。
登録免許税の額が30,000円以下である場合には、収入印紙での納付も認められています。
登記の仕方で贈与税が発生することも
夫婦などで共有名義で登記する場合、注意点があります。
それは、支出したお金と共有名義の割合が異なると、贈与税が発生する可能性があることです。
夫婦がお金を出し合って不動産を購入したときは、持分割合を決めて登記しなくてはいけません。
持分割合とは、共有名義の不動産を、それぞれどれくらいの割合で所有権を持っているかを表す数値です。
たとえば、夫婦で所有権を半分ずつなら、夫と妻で1/2ずつ所有権を持っていることになり、それを登記することで共有名義となります。
ただし、持分割合は、お金を出した割合に応じて分けるのが原則です。
上記例なら、夫と妻が、それぞれ1/2ずつお金を出すことで、持分割合を1/2にできるということです。
もし、出したお金の1/2を超えて登記した場合、その超えた部分について、贈与があったとみなされ、贈与税を課せられてしまいます。
そのため、出したお金の比率に合わせて、持分割合を決めなくてはいけません。
仮に、銀行からの住宅ローンは夫が単独で借り、その保証に対し妻が連帯保証を行う場合でも、名義は夫単独の名義としなくては、贈与税が発生してしまうということです。
3.不動産取得税
不動産取得税は、不動産を取得したときに、土地と建物それぞれに課せられる税金です。
個人、法人問わず課税されます。
納付先は都道府県です。
取得に含まれるものは、下記の通りです。
- 新築
- 購入
- 増改築
- 交換
- 贈与
「取得したとき」なので、法務局に登記しなくても課せられます。
また、有償か無償かにかかわらず不動産取得税の対象となります。
ただし、下記の場合は不動産取得税は課せられません。
- 公共的な目的に供される不動産の取得
- 相続による取得
- 法人の合併や分割
- 2年以内の債権消滅による譲渡担保財産の設定者への移転
そして、取得というのは、あくまで「使うこと」が前提です。
建物付きの土地を購入して、使うことなくすぐに取壊した場合には、「建物に対する不動産取得税」はかかりません。
不動産取得税のベースは固定資産税評価額
不動産取得税は、取得時の1回だけの税金です。
税額は、その不動産の固定資産税評価額に税率を掛けて計算します
これに対し、不動産に毎年かかる税金は固定資産税です。
固定資産税は不動産の「保有」に対してかかる税金だからです。
ただし、固定資産税も不動産取得税も、税金を計算する際は、同じ「固定資産税評価額」がベースになります。
不動産の購入価格や建築工事費ではないので、間違えないようにしましょう。
また、建物と土地それぞれに分けて計算されます。
なお、取得した不動産の課税標準額が以下の場合は課税されません。
- 土地:10万円
- 建物の新築、増改築:23万円
- 売買など:12万円未満
不動産取得税の計算方法
不動産取得税の計算方法は次の通りです。
不動産価格(固定資産税評価額)×税率×特例による控除=不動産取得税
1.不動産価格
不動産所得税の計算の元となる不動産の価格は、先述した通り「固定資産税評価額」となります。
宅地などの場合、固定資産税評価額が「1/2」になる特例があります。
マンションの場合は、自分が住む部屋である居住部分に加え、エントランスや廊下などの共有部分も住宅部分に含まれます。
敷地利用権は土地部分となり、住宅と土地の両方に対して税金がかかります。
※敷地利用権とは、マンションが建てられている土地の利用権を戸数で割った権利のこと
2.税率
不動産取得税の税率は原則4%です。
しかし、2024年3月31日までに取得した住宅と土地については、特例により税率が3%に軽減されます。
区分 | 標準税率 | 軽減税率(2024年3月31日まで) | |
住宅 | 土地 | 4% | 3%(課税標準の1/2) |
建物 | 4% | 3% | |
住宅以外(店舗・事務所等) | 土地 | 4% | 3%(課税標準の1/2) |
建物 | 4% | 4% |
3.特例による控除
取得した不動産が居住用の場合、不動産取得税には軽減措置があります。
<新得住宅の場合>
床面積50㎡以上240㎡以下であれば、評価額から1,200万円控除されます。
長期優良住宅の場合は、評価額からの控除額が一戸につき1,300万円になります。(2024年3月31日まで)
マイホームだけでなく、セカンドハウスや貸家(アパートやマンション)も対象です。
<中古住宅の場合>
税額軽減の適用を受けるためには、次の要件すべてを満たす必要があります。
・個人が自己の居住用またはセカンドハウスとして取得する住宅である
・床面積が50㎡以上240㎡以下である
・次のいずれかに該当する耐震基準要件を満たしている住宅である
イ:1982年1月1日以降に建築された住宅
ロ:新耐震基準に適合していることについて証明がなされた住宅、または、「既存住宅売買瑕疵保険に加入している一定の住宅
ハ:新耐震基準に適合する改修工事を実施する一定の住宅
上記要件を満たすことで、築年数に応じて控除を受けられます。
新築された日 | 控除額 |
平成9年4月1日以降 | 1,200万円 |
平成元年4月1日 ~ 平成9年3月31日 | 1,000万円 |
昭和60年7月1日 ~ 平成元年3月31日 | 450万円 |
昭和56年7月1日 ~ 昭和60年6月30日 | 420万円 |
昭和51年1月1日 ~ 昭和56年6月30日 | 350万円 |
昭和48年1月1日 ~ 昭和50年12月31日 | 230万円 |
昭和39年1月1日 ~ 昭和47年12月31日 | 150万円 |
昭和29年7月1日 ~ 昭和38年12月31日 | 100万円 |
上記は東京都の場合の控除額のため、他の地域は各自治体によって異なります。
<土地の場合>
住宅と一緒に購入た土地の場合、下記の①と②で、どちらか高い金額を控除できます。
①45,000円
②(土地1㎡当たりの固定資産税評価額 × 1/2) × (課税床面積 × 2(200㎡限度)) × 3%
ただし、土地と建物は必ずしも同時購入でなくても、下記要件を満たせば土地の控除を受けられます。
期間内に同時購入できなくても控除は受けられますが、できるなら土地と建物をセットで取得した方がいいでしょう。
◆新築住宅の場合
新築住宅の特例の「建物」の要件を満たすこと。
土地を先行して取得した場合、取得から3年以内に建物を新築すること。
建物を先行して建築した場合、土地を借りるなどして住宅を新築した人が新築1年以内にその土地を取得すること
◆中古住宅の場合
中古住宅の特例の「建物」の要件を満たすこと。
土地を先行して取得した場合、取得から1年以内に建物を取得すること。
建物を先行して建築した場合、土地を借りるなどしてその土地上の建物を取得した人が1年以内にその土地を取得すること
軽減措置を受けるには申告が必要
不動産取得税の軽減措置を受けるには、不動産の取得日から60日以内に都道府県税事務所に申告が必要です。
申告をしてないと通常の税率が適用されますので注意しましょう。
不動産取得税の納税時期に注意
不動産所得税の納税通知書は、中古住宅や土地の場合は取得から3ヵ月から6か月後、新築住宅の場合は翌年の4月以降となります。
取得から遅れて納税となるため、納税を忘れてお金を使ってしまった、ということがないようにしましょう。
4.消費税
不動産取引では、一戸建て、マンションにかかわらず、原則として
- 建物には消費税がかかる
- 土地には消費税はかからない
となります。
建物の売主が個人の場合は、消費税はかかりません。
個人間の売買は消費税の課税取引にならないからです。
ただし、事業用や賃貸用の不動産であれば消費税の課税対象となります。
不動産取引で消費税の対象となるもの
- 建物の購入代金(個人からの購入以外)
- 建物のリフォーム代
- 仲介手数料
- 司法書士への報酬
- 住宅ローンの事務手数料
- 引っ越し代
不動産取引で消費税の対象にならないもの
- 土地の購入代金
- 印紙税、登録免許税
- 住宅ローンの金利、保証料
- 団体信用生命保険料、火災保険料、地震保険料
- 不動産取得税、固定資産税
消費税から土地の価格を把握する
契約書に土地と建物の総額しか記載されてないとき、消費税額が載っていれば、そこから建物の価格を求めることができます。
・消費税額÷消費税率
総額からこの金額を引くことで、土地の価格がわかります。
まとめ
不動産は高い買い物なだけに、それに伴って発生する税金も高額となります。
税金を事前にシミュレーションしてないと、後で資金計画に大きな穴が空きかねません。
税金は、いつまでに、どこに、いくら納めるかは、ざっくりでも良いので把握しておきましょう。
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