【完全マスター】はじめてでもわかる損益通算

節税対策

所得の利益と損失を相殺することを損益通算といいますが、これにより所得を圧縮して税金を減らすことができます。

損失は本来避けたいものですが、儲かるか儲からないか不確実なことであり、もし、損失が出たときは、ぜひとも活用したいのが損益通算です。

ただし、損益通算にはルールがあり、何でもできるわけではありません。

損益通算できるものとできないものがあり、単純に利益と損失を足し引きすれば良いというわけにはいかないのです。

この記事では、わかりにくい損益通算のルールについて解説します。

損益通算を理解して、所得税の節税に役立てましょう。

損益通算とは

損益通算とは、同一年度の利益と損失を相殺することをいいます。

簡単にいえば、その年に発生した黒字から赤字を引くことです。

たとえば、A株式とB株式を売却し、A株式は100万円の利益、B株式は60万円の損失が出た場合、100万円の利益から60万円の損失を引き、残った利益40万円が譲渡所得として課税されます。

損することは本来避けたいことですが、やむを得ず損失が出たときは、その分だけ税金を減少させる損益通算は、ぜひとも活用したい制度です。

ちなみに、損益通算する場合は確定申告が必要です。

しかし、損益通算は、その年に発生した利益と損失であれば、何でも相殺できるわけではありません。

損益通算「できるもの」と「できないもの」があるのです。

何だか「?」となってしまいそうですが、このことを理解するには、まず所得の「種類」について知っておかなくてはいけません。

所得は10種類に分けられている

所得とは収入金額から、その収入を得るためにかかった必要経費や所定の控除額を差し引いた後に残る金額のことをいいます。

この所得は一括りに「所得」とされるわけでなく、所得税法でその性格によって「10種類」に区分されています。

種類概要課税方法
事業所得商・工業や漁業、農業、自由職業などの自営業から生ずる所得総合
事業規模で行う、株式等を譲渡したことによる所得や先物取引に係る所得申告分離
不動産所得土地や建物、船舶や航空機などの貸付けから生ずる所得総合
利子所得公社債や預貯金の利子などの所得源泉分離
国外で支払われる預金等の利子などの所得総合
配当所得法人から受ける剰余金の配当、公募株式等証券投資信託の収益の分配などの所得  ※申告分離課税を選択したものを除く。総合
上場株式等に係る配当等、公募株式等証券投資信託の収益の分配などで申告分離課税を選択したものの所得申告分離
特定目的信託の社債的受益権の収益の分配などの所得源泉分離
給与所得俸給や給料、賃金、賞与、歳費などの所得総合
雑所得公的年金等国民年金、厚生年金、確定給付企業年金、確定拠出企業年金、恩給、一定の外国年金などの所得総合
その他原稿料や講演料、生命保険の年金など他の所得に当てはまらない所得総合
業(事業規模を除く。)として行う、株式等を譲渡したことによる所得や先物取引に係る所得申告分離
公社債の償還差益のうち、一定の割引債の償還差益などの所得源泉分離
譲渡所得ゴルフ会員権や金地金、機械などを譲渡したことによる所得総合
土地や建物、借地権、株式等を譲渡したことによる所得 ※株式等の譲渡については事業所得、雑所得となるものを除く申告分離
一時所得生命保険の一時金、賞金や懸賞当せん金などの所得総合
保険・共済期間が5年以下の一定の一時払養老保険や一時払損害保険の所得など源泉分離
山林所得所有期間が5年を超える山林(立木)を伐採して譲渡したことなどによる所得申告分離
退職所得退職金、一時恩給、確定給付企業年金法及び確定拠出年金法による一時払の老齢給付金などの所得申告分離

所得の種類と課税方法/国税庁

この区分により、損益通算「できる所得」と「できない所得」に分けられます。

他の所得と損益通算できるもの

損益通算できる所得は次の4つです。

  1. 不動産所得
  2. 事業所得
  3. 譲渡所得
  4. 山林所得
他の所得と損益通算できないもの

損益通算できない所得には次のものがあります。

  • 配当所得、給与所得、一時所得、雑所得で生じた損失 ※申告分離課税を選択した上場株式等の配当は除く
  • 生活に通常必要でない資産で生じた損失
  • 別荘等の生活に通常必要でない資産の貸付けに係るもの
  • 土地(土地の上に存する権利を含む)を取得するために要した借入の利子に相当する部分の金額
  • 申告分離課税の株式等の譲渡で生じた損失
  • 申告分離課税の先物取引で生じた損失
  • 一定の居住用財産以外の土地建物等の譲渡で生じた損失

No.2250 損益通算/国税庁

損益通算の順番

損益通算できるものとできないものがありますが、損益通算できるものでも横並びに並べて引けるわけではないので気をつけましょう。

損益通算には順番があり、下図にあるように、一次、二次、三次と決まった順番に従って進めていかなくてはいけません。

①4つのグループに分ける

まず、所得を4つのグループに分けます。

  • 第一グループ 利子・配当・不動産・事業・給与・雑所得
  • 第二グループ 譲渡所得・一時所得
  • 第三グループ 山林所得
  • 第四グループ 退職所得
②第一グループの損益通算を行う

利子所得・配当所得・給与所得・雑所得から「不動産所得の損失」と「事業所得の損失」を引くことができます。

なお、雑所得(雑所得同士の損益通算はできる)は赤字になっても引けません。

③第二グループの損益通算を行う

一時所得から「譲渡所得の損失」を引くことができます。

なお、ここでいう譲渡所得には、分離課税のものは含まれません。

④第一グループと第二グループで損益通算を行う

第一グループまたは第二グループで、赤字が残っている場合は、第一グループと第二グループで損益通算を行います。

⑤第三グループと損益通算を行う

④で損益通算しても損失が残っている場合は、第三グループと損益通算を行います。

⑥第四グループと損益通算を行う

⑤で損益通算しても損失が残っている場合は、第四グループと損益通算を行います。

「不動産所得」「事業所得」「山林所得」「譲渡所得」であっても、先述した「損益通算できないもの」は除くことを忘れないでください。

同じ所得内でも損益通算できないものがある

損益通算は、他の所得とはできないものもありますが、基本的に同じ所得内なら損益通算できます。

たとえば、雑所得で出た損失は、同じ雑所得の利益とは損益通算できます。

ただし、同じ所得内でも損益通算できないものがあるので気をつけましょう。

雑所得の場合だと、「申告分離課税」される雑所得と、「総合課税」される雑所得では損益通算できません。

雑所得で損益通算できるのは、総合課税される雑所得同士です。

10種類の所得の分類表にある「課税方法」で、同じ所得内でも「総合課税」「申告分離」「源泉分離」と3つの種類があることがわかります。

これにより、同じ所得内でも損益通算できるものとできないものに分けられてきます。

また、同じ譲渡所得でも、株式と土地といった種類の異なるものも、損益通算できません。

この場合は、株式は株式、土地・建物は土地・建物同士でなければ損益通算できないルールとなっています。

何ともややこしい制度です。

上場株式の譲渡損は損益通算できる例外がある

複雑な制限のある損益通算ですが、さらに混乱するのが特例です。

先に述べたように、土地建物や株式の場合は、株式は株式の譲渡損益と、土地建物は土地建物の譲渡損益としか損益通算はできません。

しかし、一部に例外があって、株式であっても他の所得と損益通算できる特例が設けられています。

それは上場株式の譲渡損失です。

上場株式等の譲渡損失は、上場株式等の譲渡益としか損益通算できませんが、「申告分離課税」を選択した場合に限り、上場株式等の利子・配当と損益通算できます。

上場株式の配当金の課税方式の詳しい解説は下記記事をご覧ください↓

3年の繰越控除も可能

さらに、上場株式等を譲渡して生じた損失のうち、その年に控除しきれない金額は、翌年以降3年間にわたり上場株式等の譲渡益、および上場株式等の配当等から控除することができます。

No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除

たとえば、次のようなケースでは、その年の損失は90万円となります。

  • 上場株式の譲渡損失:-100万円
  • 上場株式の利子・配当:10万円
  • -100万円+10万円=-90万円

したがって、利子・配当ですでに源泉徴収されていた20,315円が還付されるというわけです。

・10万円×20.315%=20,315円

株の損失は避けたいところですが、このようなケースでは節税も可能になります。

繰越控除の注意点

その年に引くことのできなかった損失は、その年と翌3年間で繰越控除ができることは、すでに述べた通りです。

たとえば、次のような条件でシミュレーションしてみます。

利益損失
今年100万円
1年目50円0万円
2年目30万円0万円
3年目10万円0万円
合計90万円100万円

今年出た損失100万円を、翌年以降の3年で繰越していきます。

その結果、3年目までは毎年出る利益を損失で引くことができ、税金は0円となります。

ただし、繰越控除できる金額は最初の年に出した100万円が限度ですので、このケースでは、3年目までの利益の合計、90万円までしか損失を引くことはできません。

そのため、10万円の控除しきれない金額が発生しますが、繰越控除は3年が限度ですので、10万円の損失分は翌年以降繰越すことはできなくなります。

ただし、繰越し控除期間は、毎年確定申告をすることが条件となり、株式を売却しなかった年も確定申告が必要になりますので、気をつけましょう。

総合課税・分離課税

ちなみに、損益通算には「総合課税」と「分離課税」ということも関係してきますので、概略だけは理解しておきましょう。

総合課税

総合課税とは、所得を合算した総所得金額に課税する方法です。

最終的出た金額で税率が決まるので、一つの所得が少なくても他の所得が多ければ、税率が一気に上がります。

分離課税

分離課税は、分離とあるように、他の所得と合算されることはありません。

その所得のみで税率が決まります。

そのため、他の所得が高くても、分離課税分はそれと関係なく税率が決まります。

つまり、総合課税で受取るより、分離課税で受取った方が、税率が低くなる場合があるということです。

総合課税と分離課税の違いを知っておくことも、節税に役立ちます。

まとめ

損益通算を利用することで、節税効果もありますが、それは国もよくわかっているので、簡単に得するようにはできていません。

損益通算で税金を大きく回避できる道筋は、あらかじめ潰されている感はありますが、それでも活用の仕方を知らないと、損失が出たときにリカバーできなくなります。

ただ、個人での損益通算の範囲は限られてきますので、思い切って法人を活用するのも方法です。

損失が出た年は、損益通算を利用して、納税額の軽減に役立てましょう。

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