会社から役員への「経済的利益の供与」が「役員賞与」になる3パターンを解説

役員報酬 税務調査対策

役員報酬は金銭以外でも、会社から「経済的利益の供与」という形で受取れば、役員賞与か役員給与となります。

経済的利益の供与が役員賞与になるか役員給与になるかの違いは、その経済的利益が臨時的なものか定期的に受取ったものかになります。

  • 臨時的に受取った場合→役員賞与
  • 定期的に受取った場合→役員給与

役員給与なら経費になりますが、役員賞与は法人側は損金不算入、個人は所得税課税といわゆる往復ビンタとなり、できることなら避けたいのが役員賞与です。

この記事では、役員が会社から経済的利益の供与を受けたとき、役員賞与とみなされる事例をご紹介いたします。

法人から受け取る「経済的利益」とは

事例を紹介する前に、「経済的利益」がどのようなものかについて解説しておきます。

法人が役員に支給する給与には、金銭によるもののほか、債務の免除による利益その他の経済的な利益も含まれます。

この経済的利益とは下記のようなものをいいます。

(1) 役員等に対して物品その他の資産を贈与した場合におけるその資産の価額に相当する金額

(2) 役員等に対して所有資産を低い価額で譲渡した場合におけるその資産の価額と譲渡価額との差額に相当する金額

(3) 役員等から高い価額で資産を買い入れた場合におけるその資産の価額と買入価額との差額に相当する金額

(4) 役員等に対して有する債権を放棄し又は免除した場合(貸倒れに該当する場合を除く。)におけるその放棄し又は免除した債権の額に相当する金額

(5) 役員等から債務を無償で引き受けた場合におけるその引き受けた債務の額に相当する金額

(6) 役員等に対してその居住の用に供する土地又は家屋を無償又は低い価額で提供した場合における通常取得すべき賃貸料の額と実際徴収した賃貸料の額との差額に相当する金額

(7) 役員等に対して金銭を無償又は通常の利率よりも低い利率で貸し付けた場合における通常取得すべき利率により計算した利息の額と実際徴収した利息の額との差額に相当する金額

(8) 役員等に対して無償又は低い対価で(6)及び(7)に掲げるもの以外の用役の提供をした場合における通常その用役の対価として収入すべき金額と実際に収入した対価の額との差額に相当する金額

(9) 役員等に対して機密費、接待費、交際費、旅費等の名義で支給したもののうち、その法人の業務のために使用したことが明らかでないもの

(10) 役員等のために個人的費用を負担した場合におけるその費用の額に相当する金額

(11) 役員等が社交団体等の会員となるため又は会員となっているために要する当該社交団体の入会金、経常会費その他当該社交団体の運営のために要する費用で当該役員等の負担すべきものを法人が負担した場合におけるその負担した費用の額に相当する金額

(12) 法人が役員等を被保険者及び保険金受取人とする生命保険契約を締結してその保険料の額の全部又は一部を負担した場合におけるその負担した保険料の額に相当する金額

(債務の免除による利益その他の経済的な利益)法人税法9-2-9

そして、臨時的な経済的利益の供与は「役員賞与」となり、定期的に受取るものは「役員給与」にされます。

役員賞与も役員給与も個人側で所得税の対象になることに変わりはありません。

しかし法人側では異なります。

役員給与は損金に計上できますが、役員賞与は損金にすることはできず、よって、役員賞与に認定されるとそのダメージは大きくなります。

役員に対して継続的に供与される経済的利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるものは定期同額給与に該当し、損金の額に算入されますが、その他のものは定額同額給与に該当せず、損金の額に算入されません。

経済的利益の法人税法上の取扱い

役員賞与に認定された3パターン

では、役員賞与に認定されるパターンをご紹介していきます。

パターン1・法人から譲渡された不動産が時価より低額で役員賞与にされたケース

1つ目は、法人が所有していた不動産を、社長が時価より定額で購入したケースです。

会社が資産を時価より低額で役員へ譲渡した場合は、時価と譲渡価額との差額が役員への経済的利益となり、役員賞与を受取ったとみなされます。

ちなみに「時価」とは、合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値、すなわち、正常な取引において形成される価額のことをいいます。

小難しいいい方をしましたが、要するに第三者と取引した場合の市場価格のことです。

事例では、法人の所有するゴルフ会員付き別荘(土地と不動産、取得価格5,449万円)を、社長が500万円で購入し、「時価」との差額を役員賞与と認定されました。

社長のいい分としては、500万円が妥当な金額としていたのですが、そうは問屋が卸さなかったということです。

国税不服審判所の出したゴルフ会員付き別荘の「時価」は1,226万円、譲渡価格500万円との差額、762万円は社長に対する臨時的な給与として役員賞与の認定をされることになりました。

法人から譲渡された不動産が著しく低額だったケース

パターン2・入院の見舞金が社会通念上「相当な金額」を超えて役員賞与にされたケース

2つ目は、病気で入院した役員に対して支払った見舞金が高額で、社会通念上相当な金額を上回った部分を役員賞与と認定されたケースです。

役員に対する見舞金は、社会通念上相当とされる金額までは、福利厚生費として損金に計上することが認められています。

ただし、社会通念上相当とされる金額を超えた部分は損金にできず、給与課税されます。

この事例では、役員が見舞金として受取った合計約400万円に対し、1回の入院あたり社会通念上相当とされる見舞金5万円、計9回分の45万円を超える部分355万円を役員賞与と認定されました。

※社会通念上相当とされる見舞金は、全国一律に「5万円」と決まっているわけではありません。その地域の同業などの規準によって変わります。

当初法人側は、「社内規定に従って支払っただけ」と主張していましたが、国税不服審判所は、「見舞金を損金にできるかどうかは、社会通念上相当であるか否かによって判断されるべきもので、社内規定があるか否かで決められるものではない」として主張を退けました。

そして、

「継続して毎年所定の時期に定額を支給する旨の定めに基づいて支給されるもの及び退職給与ではないことから、Hに対する賞与に該当する」

として役員賞与にされました。

このケースはあきらからに見舞金を支払いすぎですが、社会通念上相当とされる金額を超える見舞金は定期的に支払われる経済的利益に当たらないため役員賞与にされます。

役員への入院見舞金が社会通念上「相当な金額」を超えて役員賞与にされたケース

ケース3・家族の旅行交通費が経費に認められず役員賞与とされたケース

このケースは、社長の海外出張に、会社の役員でも従業員でもない社長の息子(出張時7~9歳)を同伴させ、その息子の旅費交通を経費に認められないと否認された事例です。

通常、会社の業務に関係ない親族が海外出張に同伴しても、その費用は経費に認められません。

ましてや会社の役員や従業員でもなければなおさらです。

ただし例外があり、

「国際会議への出席等のために配偶者を同伴する必要がある場合など、明らかに海外渡航の目的を達成するために必要な同伴と認められるときは、その旅行について通常必要と認められる費用の額は、この限りではない」

という場合は、家族の旅費交通費も経費(通常必要と認められる金額)にすることができます。

社長は息子の海外出張同伴について、「息子の同伴は取引先からの要請であり、出張目的を達成するために明らかに必要な同伴であった」と主張し、家族分の旅費交通費を経費に計上していました。

そして抜かりなく、海外出張精算書を作成し、出張目的、業務に同伴した事実、出張内容を書類に残していました。

それに対し国税不服審判所は

  • 本件各出張の時において息子が7歳から9歳の小学生で、社長の扶養親族であった
  • 息子は会社の役員でも従業員でもない
  • 出張生産書に記載されている出張内容を見ても、出張目的を達成するために本件各同伴が必要であることを確認することはできない

として、息子の旅費交通費を「業務遂行上必要な経費に認められない」と判断しました。

その結果、息子の海外出張に伴う旅行交通費は、

「社長個人が負担すべき費用であり、社長に対する臨時的な給与、すなわち役員賞与とするのが相当」

とされました。

書類まで揃えて反論したのですが、業務に関係ない費用と判断され、それが臨時的な経済的利益にあたり役員賞与とされてしまったというわけです。

家族の旅行交通費が経費に認められず役員賞与とされたケース

役員賞与と認定されないためには

3つのパターンから見て役員賞与と認定されないためには、

  1. 会社から役員への譲渡は「時価」といった適正価格で取引する
  2. 見舞金など経費になる費用も、社会通念上相当な金額にとどめておく
  3. 業務に関係ある費用しか経費に計上しない(とくに親族が関わるものは慎重にする)

といったことが必要です。

それ以外にも

  • 会社から無償でサービスや譲渡を受けない
  • 公私混同しない

といったことも意識しなくてはいけません。

先述したとおり役員賞与と認定されると、往復ビンタをくらい、そのダメージは大きくなります。

そういった指摘を受けないためには、公私を分ける社長の意識が大事です。

もしも税務調査で「役員賞与」と指摘されたときは、下記記事を参考に交渉してみてください↓

それ以外の税務調査対策もご覧ください↓

まとめ

この記事で会社から役員が受け取る「経済的利益」が役員賞与に認定されるパターンについて解説してきました。

公私混同してなら論外ですが、中には気づかないでやらかしているケースもあります。

そうならないよう「経済的利益の供与」に注意していきましょう。

PS:経済的利益にならず手取りを増やしたいなら役員報酬を見直すことが先決です。

社長の役員報酬の見直し方は下記リンク先記事をご覧ください↓

関連記事

この記事へのコメントはありません。



最近の記事

  1. 会社から役員への「経済的利益の供与」が「役員賞与」になる3パターン…

  2. 役員報酬以外に給与課税される生命保険料を徹底解説

  3. 家族への給与を必要経費にする青色事業専従者節税ガイド

  4. 青色事業専従者給与を経費にする「6ヶ月を超える期間」を証明するには…

  5. 税理士の妻の青色事業専従者給与が「労務に対して高すぎる」とされた事…

  6. 副業やパートをしたときの青色事業専従者給与は経費になるか?「専ら事…

  7. 青色事業専従者の父(内科医師)への給与が経費に認められた理由

  8. 不動産所得の罠。「事業」規模でなければ青色事業専従者の給与は経費に…

  9. 青色事業専従者の「専ら事業に従事」を判定する基準とは?

  10. 青色事業専従者給与の「適正額」の判定基準とは?歯科医の妻への給与が…