役員報酬以外に給与課税される生命保険料を徹底解説

役員報酬 税務調査対策

役員報酬以外でも、役員に定期的に支払われる経済的利益は「役員給与」にみなされます。

その中に「生命保険料」があります。

この記事では、役員給与(定期同額給与)扱いされる生命保険料について解説します。

年払いの給与課税される保険料は役員賞与?それとも役員給与?

税務上の役員給与あるいは役員賞与にあたるものは、金銭で支給されるものばかりではありません。

実質的に役員に給与を支給したと同等の経済的効果をもたらすもの、「経済的利益」も含まれます。

もちろんそれは意図的でない場合も含まれますが、会社が役員に供与する経済的利益は、

  • 一時的に供与されたもの→役員賞与
  • 定期的に供与されたもの→役員給与(定期同額給与)

に分けられます。

たとえば、社長が所有する土地を、会社が時価よりも高い価額で購入した場合には、購入価額と時価との差額は社長への経済的利益の供与として役員賞与の取り扱いとされることがあります。

反対に、会社が所有する資産を時価より低い価額で社長に譲渡した場合にも、資産の時価と譲渡価額との差額は経済的利益が生じ、役員賞与として取り扱われる可能性があります

こうした会社から役員へ一時的に経済的利益を与えた場合は、役員賞与となるということです。

一方で、役員の住む賃貸住宅の家賃を会社が負担していたような場合、その経済的利益は「定期的」に供与されていたことになり、役員賞与ではなく役員給与(定期同額給与)になります。

会社負担で安い家賃で住む方法は下記リンク先記事をご覧ください↓

この役員報酬以外で定期的に会社から経済的利益を受けるものの中に「生命保険料」があります。

一般的に、法人が契約する生命保険は下記のような契約形態(保険種類はあくまで例です)になっています。

  • 保険の種類:終身保険
  • 契約者:法人
  • 被保険者:役員
  • 死亡保険金受取人:法人

このような契約形態の場合、万が一の事故の際、死亡保険金は法人に支払われるため、法人が法人自身のために加入した保険となり、生命保険の種類によって、保険料が損金になったり資産計上されたりします。

要するに、生命保険の契約者はあくまで法人ということです。

それに対し下記契約形態の場合、契約者は法人でも保険料は被保険者である役員への給与課税とされます。

  • 保険種類:終身保険
  • 契約者:法人
  • 被保険者:役員
  • 死亡保険金受取人:役員の家族

その理由は、死亡保険金受取人にあります。

この契約形態だと、もしもの事故が起こったとき死亡保険金を受け取れるのは、役員の家族です。

これだと実質的に役員が法人を利用して、個人契約した生命保険と変わりがありません。

そこで実態に即して、書類上の契約者は法人でも、実質の契約者である役員に対して支払われた給与であるとみなして、保険料に対して給与課税されるというわけです。

しかしです。

保険料には毎月支払うケースの他に保険料を1年分まとめて支払う年払いもあります。

そのような場合、役員賞与になるのか役員給与(定期同額給与)として扱われるのか、どちらになるでしょう?

役員賞与とみなされると、法人側で保険料は損金になりませんから、役員給与にみなされるのとでは天と地の差があります。

年払いでも「役員賞与」にはならない

結論からいいますと、保険料を年払いした場合でも「役員給与(定期同額給与」」になります。

保険料が年払いだと、1年に1回の支払い、すなわち役員賞与と思われるかもしれませんが、これは間違いです。

生命保険料が給与課税される場合、月払い、半年払い、年払いであっても、毎月の給与と同じ取扱になります。

まず「継続的に供与される経済的利益の意義」について下記のように定義されています。

【新設】 (継続的に供与される経済的利益の意義)

9-2-11 「継続的に供与される経済的な利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの」とは、その役員が受ける経済的な利益の額が毎月おおむね一定であるものをいう

9 役員給与等

その解説の中で、役員が負担すべき生命保険料を負担している場合について触れられていて、その保険料が年払いで支払われたケースの解説がされています。

それによると、

「その供与される利益の額が毎月おおむね一定」かどうかは、法人が負担した費用の支出時期によるのではなく、その役員が現に受ける経済的利益が毎月おおむね一定であるかどうかにより判定することとなる」

とされています。

つまり、保険料の支払が一括でされたかどうかに関わらず、生命保険による経済的利益は「毎月おおむね一定」なので、定期同額の役員給与になるということです。

なお、定期同額給与に該当する経済的利益の供与に関連して、例えば、法人が役員にグリーン車の定期券を支給している場合でその定期券が6ヶ月定期であるときや、役員が負担すべき生命保険料を負担している場合でその保険料を年払契約により支払っているときについては、これらの支出が毎月行われるものでないことから、その供与される経済的利益の額は定期同額給与に該当しないのではないかとの疑義を抱く向きもあるようである。

しかしながら、「その供与される利益の額が毎月おおむね一定」かどうかは、法人が負担した費用の支出時期によるのではなく、その役員が現に受ける経済的利益が毎月おおむね一定であるかどうかにより判定することとなる。したがって、上記のように、法人の負担した費用が、その購入形態や支払形態により毎月支出するものでない場合であっても、当該役員が供与を受ける経済的利益が毎月おおむね一定であるときは、定期同額給与に該当する。

9 役員給与等

期の途中の役員報酬の増額(保険料の増額)は損金に計上できない?

ちなみに勘の鋭い人は、

「期の途中で保険料が給与扱いされる生命保険に加入したら、役員報酬が改定されることになり、それこそ損金に計上できなくなるのでは?」

という疑問が浮かぶかもしれません。

ややこしい話ですが、これはどういうことはかというと、役員報酬を損金に計上するためには、期首から3ヶ月以内に決めなくてはいけないというルールがあります。

そしてそこで決めた金額を毎月など一定期間、同じ金額を支払うことで、はじめて損金に計上することが認められます。

これを「定期同額給与」といいます。

役員報酬額の決め方は下記記事をご覧ください↓

もし、期首から3ヶ月以内に決めた役員報酬額を期の途中で変更すると、上げた場合は以後の上げた分が、下げた場合はそれまで金額との差額が損金に計上できなくなります。

<役員報酬を期の途中で「上げた」場合>

<役員報酬を期の途中で「下げた」場合>

役員報酬を期の途中で変更する場合の詳しい解説はこちらをご覧ください↓

そうなると、期の途中で給与課税される生命保険に加入した場合、保険料が役員報酬に加算され、それこそ「定期同額給与の条件を満たさなくなるのではないか?」という疑問が持ち上がります。

給与課税される保険料は3ヶ月損金ルールの縛りを受けない

ここも結論から述べますと、給与課税される保険料が損金に計上できなくなることはありません。

この点、税法上はどうなっているかといいますと、法人税法施行令第69条には

・役員報酬を「お金」で支払う場合は、期首から3ヶ月以内の改定

・保険料などの経済的利益を受け取る場合は、その縛りはない

見込み客との信頼関係を構築するための税務知識 / 著者:見田村 元宣より

となっています。

たしかに法人税施行令第69条を見てみると、「継続的に供与される経済的な利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの」については、別の項目に記載されていて、3ヶ月の縛りのないことがわかります。

(定期同額給与の範囲等)

第六十九条 法第三十四条第一項第一号(役員給与の損金不算入)に規定する政令で定める給与は、次に掲げる給与とする。
一 法第三十四条第一項第一号に規定する定期給与(以下第六項までにおいて「定期給与」という。)で、次に掲げる改定(以下この号において「給与改定」という。)がされた場合における当該事業年度開始の日又は給与改定前の最後の支給時期の翌日から給与改定後の最初の支給時期の前日又は当該事業年度終了の日までの間の各支給時期における支給額が同額であるもの

イ 当該事業年度開始の日の属する会計期間(法第十三条第一項(事業年度の意義)に規定する会計期間をいう。以下この条において同じ。)開始の日から三月(法第七十五条の二第一項各号(確定申告書の提出期限の延長の特例)の指定を受けている内国法人にあつては、その指定に係る月数に二を加えた月数)を経過する日(イにおいて「三月経過日等」という。)まで(定期給与の額の改定(継続して毎年所定の時期にされるものに限る。)が三月経過日等後にされることについて特別の事情があると認められる場合にあつては、当該改定の時期)にされた定期給与の額の改定
ロ 当該事業年度において当該内国法人の役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情(第四項第二号及び第五項第一号において「臨時改定事由」という。)によりされたこれらの役員に係る定期給与の額の改定(イに掲げる改定を除く。)
ハ 当該事業年度において当該内国法人の経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由(第五項第二号において「業績悪化改定事由」という。)によりされた定期給与の額の改定(その定期給与の額を減額した改定に限り、イ及びロに掲げる改定を除く。)

二 継続的に供与される経済的な利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの

したがって、期の途中で給与扱いされる生命保険契約に加入したとしても、その保険料分が損金不算入になることはないのです。

ただし、役員報酬と給与扱いされる保険料の合計が「過大」と判断された場合は、その部分は損金に計上できなくなるので、この点は注意しましょう。

(役員給与の損金不算入)

2 内国法人がその役員に対して支給する給与(前項又は次項の規定の適用があるものを除く。)の額のうち不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

法人税法34条2

給与課税される保険料を「短期前払費用」で処理すれば否認の可能性あり

またまた余談ですが、給与課税される生命保険契約を期末に年払いの一括で支払った場合、翌期分に対応する保険料まで損金に計上すると否認される可能性があります。

要は来期に対応した部分は「短期前払費用」として計上するということです。

しかしこの処理は否認される可能性があります。

というのも、短期前払費用として計上できる理由に、

「企業会計上の重要性の原則に基づく経理処理を税務上も認める」

というものがあり、これは「重要でないことは厳密に処理しなくてもよい」という考えがあるからで、逆にいえば、短期前払費用は重要性の乏しいものだから費用計上することが許されているといえるのです。

短期前払費用を使った節税方法は下記リンク先記事をご覧ください↓

では、役員報酬の支払いは「重要性がない」といえるでしょうか?

この点につき国税不服審判所の裁決では、

「役員報酬は、企業の利益を生み出す重要な費用であると解さられるところ、企業会計においても重要性が乏しい費用といえないことから、短期の前払費用に当たるとは認められない」

との判断が出ています。

したがって、給与課税される保険料は、たとえ保険料という形を取っているとはいえ、役員給与に変わりないのですから、短期前払費用で処理すると否認される可能性があるということです。

給与課税される保険料は、否認リスクを考えて、その期に対応した分までで損金計上をやめておきましょう。

まとめ

この記事では、役員給与扱いされる生命保険料について解説してきました。

ポイントは

  • 定期的な経済利益に当たるため役員給与に該当する
  • 保険料が年払いで一括で支払われた場合でも役員給与になる
  • この保険料は役員給与だが、期首から3ヶ月縛りの損金ルールには該当しない
  • 保険料だが、年払いの一括で支払って短期前払費用で処理すると、否認の可能性が高くなる

ということです。

年払いした給与課税される保険料を「役員賞与」だと税務調査で指摘されたら、この記事で紹介した根拠でしっかり反論し、その逆に否認される素となる行為は避けるようにしましょう。

この記事がお役に立てれば幸いです。

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