青色事業専従者の「専ら事業に従事」を判定する基準とは?

税務調査対策 青色事業専従者給与

青色事業専従者に支払う給与を経費にするための要件には、「専ら青色申告者の営む事業に従事する親族」とあります。

「専ら事業に従事する」とは、その年を通じて「6か月以上」従事することになりますが、では「専ら」とはどのような状態をいうのでしょう?

単に6ヵ月事業に従事しただけでは認められず、その業務内容がどうだったかと整合され、そこで判定されることになります。

つまり、青色申告者の事業に専ら事業に従事した「実態」が伴っていなければ否認されるということです。

この記事では、不動産賃貸業を営む請求人(納税者)が、青色事業専従者である妻に支払った給与が、「専ら青色申告者の営む事業に従事する親族」に当たらないとして否認された事例をご紹介します。

不動産賃貸業に従事する青色専従者の給与を否認された事例

不動産賃貸業に従事する青色専従者の給与を否認された事例

請求人は、不動産貸付業(持ちビルのテナント賃貸、駐車場貸付)と、所有するビル内で理容店を営む個人事業主です。

その妻(生計を一にする配偶者)であるDは、請求人の営む事業の青色事業専従者でした。

このDに支払っていた給与、

  • 平成3年分→407万円
  • 平成4年分→693万円

を「請求人の事業に専ら従事しているとは認められない」として、青色事業専従者給与を「必要経費にならない」と否認されました。

青色事業専従者の給与を「経費」にできる条件

所得税法第57条第1項には、「青色申告者と生計を一にする親族で、専らその青色申告者の事業に従事する者」は、

  • その労務に従事した期間
  • 労務の性質及びその提供の程度
  • その事業の種類及び規模
  • その事業の収益状況
  • その事業と同種の事業でその規模が類似するものが支給する給与の状況等に照らしその労務の対価として相当であると認められるもの

については、必要経費に算入できるとされています。

(事業に専従する親族がある場合の必要経費の特例等)

青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者と生計を一にする配偶者その他の親族(年齢十五歳未満である者を除く。)で専らその居住者の営む前条に規定する事業に従事するもの(以下この条において「青色事業専従者」という。)が当該事業から次項の書類に記載されている方法に従いその記載されている金額の範囲内において給与の支払を受けた場合には、前条の規定にかかわらず、その給与の金額でその労務に従事した期間、労務の性質及びその提供の程度、その事業の種類及び規模、その事業と同種の事業でその規模が類似するものが支給する給与の状況その他の政令で定める状況に照らしその労務の対価として相当であると認められるものは、その居住者のその給与の支給に係る年分の当該事業に係る不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入し、かつ、当該青色事業専従者の当該年分の給与所得に係る収入金額とする。

所得税法第57条第1項

この事例の場合は、青色事業専従者給与の「金額」の多寡よりも、「専らその青色申告者の事業に従事する者」に該当しないとして否認されています。

つまり、青色事業専従者の要件を満たさないので、必要経費にならないという理屈です(青色事業専従者にならないので全額が否認されています)。

青色事業専従者の「専ら」をどう判定したか?

では、青色事業専従者と認めらるための「専ら」とは、どのような状態をいうのでしょう?

「専ら従事」するとは、下記のような状態をいいます。

それぞれの事業内容、その親族の職務内容等により、その親族が従事すべき時間において、その時間のほとんどの時間を従事している、あるいは従事し得る状態にあること。

【税務の基礎知識(所得税)】専従者給与(専ら従事の意味と扶養控除との関係)

要するに、1日のうちの大半を青色申告者の事業に従事している状態です。※「1日何時間以上」という定義はありません。

ではDの青色事業専従者としての業務内容はどうだったかというと、以下のとおりでした。※ここでいう賃料とは駐車場の賃料のことです。

  1. 賃貸料及び敷金の受領月日・受領金額の記載と賃貸料の受領金額の集計・記載に係る業務
  2. 賃貸料及び敷金の受領金額の確認と領収証の発行
  3. 賃貸料が未納となっている者に対する督促と集金
  4. 現金で受領した賃貸料及び敷金の預金口座への預入れ
  5. 駐車場の賃借人との使用契約書の作成
  6. 無断駐車の車両がないかどうかの見回り及び当該車両があった場合の交番への届出
  7. 駐車場の草取りなどの業務

なお、Dの申述によると、請求人の事業に従事したのは1日3~4時間程度で、月のうち15、16日くらいだったとのことです(息子に1日8時間程度にした方がいいといわれ、後に1日8時間に訂正)。

では、それぞれの業務内容について観ていきます。

1.賃貸料及び敷金の受領月日・受領金額の記載と賃貸料の受領金額の集計・記載に係る業務

この業務については、そもそもその証拠となる種類もなく、業務を行っていたかどうかも疑わしいとされましたが、それでも、満車で54台しかない駐車場で、1ヵ月54台分の集計・記録業務を行ったとしても、事務作業量はわずかであると判断されました。

2.賃貸料及び敷金の受領金額の確認と領収証の発行

駐車場賃料を振込以外にする賃借人の割合は、平成3年で32.3台、平成4年で15.8台で、領収書を発行する枚数はそれほど多くなく、請求人も領収書発行作業にかかわっていたことを考えると、事務作業量はわずかと判定されました。

3.賃貸料が未納となっている者に対する督促と集金

駐車場の賃料を集金する件数は、平成3年が2台、平成4年が0台で、この業務の作業量はわずかと認められると判断されました。

4.現金で受領した賃貸料及び敷金の預金口座への預入れ

賃料や敷金を口座に預け入れている日が、平成3年は月平均4日、平成4年は月3日で、この業務の作業量は多くないと認められるとされました。

5.駐車場の賃借人との使用契約書の作成

新規の駐車場の賃借人は、平成3年で12人(13台分)、平成4年が5人(5台分)で、この業務の作業はわずかと認められるとされました。

6.無断駐車の車両がないかどうかの見回り及び当該車両があった場合の交番への届出

一回あたりの見回りは短時間で済むと認められ(そもそも作業時間を証明する書類は提出されてない)、見回りに要する作業量を時間換算するとわずかと認められると判断されました。

7.駐車場の草取りなどの業務

本件駐車場は、フェンスおよび砂利敷等であり、雑草は生えているものの敷地のごく一部という事実があり、草取り作業をしたとしても作業時間はわずかと判断されました。

国税不服審判所の判定

以上のことから、

  • Dは、各年分において、請求人の営む事業に専ら従事していたと認めることはできない
  • 所得税法第57条第1項に規定する青色事業専従者としての要件を満たしていない
  • 青色事業専従者給与の額を、請求人の各年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできない

と判定されました。

そもそもこの作業内容で年収400万円以上は妥当か?

事実関係もそうですが、D申述から、作業時間は1日3~4時間で、月の出勤日数が15、16日程度と判明しており、この労働時間と作業内容で、青色事業専従者給与が、403万円と693万円とならば、いくらなんでももらいすぎだろうとなります。

一般のサラリーマンと比べてみても、年収400万円以上の給与内容とはとてもいえないです。

身内贔屓というよりは、不動産所得の利益を操作して、税金を下げたかったということでしょう。

でも実態が伴わない不自然な給与は、やはり否認されてしまいます。

給与を経費にしたいなら、実態が伴っていることは最低条件です。

青色事業専従者の「副業」は認められないか?

ちなみに青色事業専従者は「他に収入があるかどうか」ではなく、「事業主の事業に専ら従事しているかどうか」が適用要件となります。

逆にいえば、青色申告者の事業に「専ら6ヶ月間従事」していれば、他に副業をしていたとしても認められるということです。

※青色事業専従者が副業やパートで収入を得ていた場合、その期間は「専ら従事していた期間」に入れることはできませんので注意しましょう。

配偶者や親族がパートや副業をしたときの判定基準は下記記事をご覧ください↓

まとめ

青色事業専従者給与が経費に認められる条件の「専ら」が、どれくらいの尺度を指すのかを判例から観てきました。

専らとは、「その事業に専ら従事する期間がその年を通じて6か月以上」という基準はありますが、単に6ヵ月従事しましたでは、通用しないということです。

業務に従事した時間が「専ら」に該当したとしても、その業務内容に給与額が見合っているかの判定はまた別です。

業務内容に比べて給与が高すぎると判定されると、今度は「高すぎる部分」は否認されることになります。

まずは、青色事業専従者給与に認められる「専ら」の条件はクリアしましょう。

青色事業専従者を活用した節税方法の詳しい解説は下記リンク先記事をご覧ください↓

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