非常勤役員の母の役員報酬が「過大」と否認された建築・住宅リフォーム会社の事例

役員報酬

この記事で紹介するのは、建築・リフォーム会社を経営する代表取締役の母の非常勤役員としての報酬が「過大」とされた事例です。

非常勤役員の母の報酬は、常勤役員でもなかなかの高額報酬でしたが、やはり認められませんでした。

非常勤役員自体、支給される役員報酬の相場は低く、それを覆して高い報酬を設定するには、職務の内容が問われます(しかも短時間で、どれだけ経営に貢献できているかが)。

非常勤役員の母の役員報酬が「過大」と否認された事例

非常勤役員の報酬が否認されたポイント

非常勤役員である母の役員報酬が「過大」と否認されたポイントは

  • 職務内容が対価に見合っていない
  • そもそも「極めて高額」な役員報酬だった

ことが挙げられます。

国税不服審判所が認めた、類似法人の非常勤役員の報酬は

  • 平成15年:118.7万円
  • 平成16年:186万円

でした。

これに対し、建築会社が支払った非常勤役員の報酬は

  • 平成15年:3,300万円
  • 平成16年:3,600万円

と、大幅に超えています。

常勤役員でも3,000万円を越える報酬は、なかなかの額だと思いますが、それを非常勤役員でとなると、どれだけ会社に貢献したんだという話になってきます。

それを証明するためには、根拠と証拠が必要になりますが、

  • 証拠を提出できない。
  • あきらかに実態が伴ってない。

ことで、ばっさり否認されています。

非常勤役員は、節税にも社会保険料対策にも活用できますが、やり過ぎはダメです。

親族を非常勤役員にするメリットは、下記リンク先記事をご覧ください。

非常勤役員の母の役員報酬が「過大」と否認された事例

関連法令

《過大な役員報酬等の損金不算入》

第1項は、内国法人がその役員に対して支給する報酬の額のうち不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない旨規定している。

法人税法第34条

《過大な役員報酬の額》

は、法人税法第34条第1項に規定する政令で定める金額は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める金額(次の各号のいずれにも該当する場合には、当該各号に定める金額のうちいずれか多い金額)とする旨規定している。

第1号は、内国法人が各事業年度においてその役員に対して支給した報酬の額が、当該役員の職務の内容、その内国法人の収益及びその使用人に対する給料の支給の状況、その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するもの(以下「類似法人」という。)の役員に対する報酬の支給の状況等に照らし、当該役員の職務に対する対価として相当であると認められる金額を超える場合、その超える部分の金額(以下、この規定を「実質基準」という。)

第2号は、定款の規定又は株主総会、社員総会若しくはこれらに準ずるものの決議により報酬として支給することができる金額の限度額を定めている内国法人が、各事業年度においてその役員に対して支給した報酬の額の合計額が当該事業年度に係る当該限度額を超える場合、その超える部分の金額(以下、この規定を「形式基準」という。)

法人税法施行令70条

否認までの流れ

請求人は、建築&住宅リフォームを営む法人です。

問題になったのは、代表取締役の母、非常勤役員Eの役員報酬でした。

請求人は非常勤役員のEに対して

  • 平成15年:3,300万円
  • 平成16年:3,600万円

の役員報酬を支払いましたが、これを税務調査で指摘されました。

請求人(建築&住宅リフォーム会社)の主張

納税者側の主張は以下の通りです。

  • Eは、請求人の設立に際して、資本金額の決定、株主の選定と依頼、取締役及び監査役の選定と依頼、従業員の採用などを行い、その尽力は大である。
  • 設立後は、代表取締役のよき相談相手として、請求人の経営に参画している。
  • 自社の従業員のFに対して月額50万円の給与を支給していることから、Eへの役員報酬は月額50万円が相当である※

※3,300万円と3,600万円はさすがに支払いすぎと請求人は認めましたが、それでも非常勤役員の報酬は50万円が妥当との主張です。

国税不服審判所の判断

事実関係
  • 定款には、取締役および監査役の報酬は、株主総会の決議をもって定めるとあるが、本件各事業年度では報酬に関する株主総会の決議はされていない。
  • Eの職務の内容は、従業員からの悩み事を聞いてもらうことにより請求人の仕事が円滑に進むようにしてもらうほか、退職した従業員に対する貸付金の集金に行ってもらったことがある程度であり、特に決まった仕事はない。
  • Eの出勤日時の管理や仕事内容を明らかにする書類の作成はしていない。
  • 請求人の事務室内にEの机はなく、出社時には空いている机を適当に使用している。
  • 請求人は、原処分庁に対し、Eの職務に関する具体的な資料を提出してない。
  • 国税不服審判所に対し、F(従業員)の職務の内容や勤務の状況等を明らかにしていない。
判定
形式基準について

事実関係から明らかなように、請求人は株主総会で役員の報酬を決議していませんでした。

そのため、形式基準による限度額はなく、実質基準によって判断されることになります。

実質基準

1.Eの職務内容

請求人は、設立時の尽力や、代表取締役の相談役や仕事が円滑にすすむようになど、経営に参画していることを主張していました。

これついて

「設立時における役割、貢献度等自体は職務の内容の構成要素でない」

「尽力が大というのもその判断は極めて主観的で、何をもって大というのか甚だあいまい」

「よき相談相手というのも同様に客観性・具体性に欠ける」

とし、

「この主張を認めるには、その裏付けとなる確たる証拠資料が必要であるというべきだが、請求人は、何ら具体的な資料を提出しておらず、当審判所の調査によっても明らかではない」

と、職務内容が経営に関与してないこと、主張を裏付ける証拠がないことを指摘しました。

2.請求人の収益及び使用人に対する給料の支給の状況

請求人は、従業員の給与と比較して算定することが妥当として、従業員Fに給与50万円を支払っているから非常勤役員の報酬も50万円が相当と主張をしていました。

これに対しては

「Fの職務の内容や勤務の状況等を明らかにしていない」

ことと、

「収益の状況如何にかかわらず、非常勤取締役であるEの職務の内容からして、Fに対して月額50万円の給与を支給されていることをもって、適正報酬額が月額50万円であるとする根拠とはならない」

と主張を認めませんでした。

3.類似法人の役員に対する報酬の支給の状況

請求人と同規模・同業種の類似法人を抽出して非常勤役員の報酬を調べたところ

  • 平成15年:118.7万円
  • 平成16年:186万円

であることがわかりました。

総合判断

以上の各事情から総合判断すると、

  • 平成15年の損金不算入額→3181万3,000円(3,200万円-118万7,000円)
  • 平成16年の損金不算入額→3,414万円(3,600万円-186万円)

が、不相当に「過大」と判断されました。

無理やり理屈をつけても説得できない

この事例は極端ですが、否認された後に提示した50万円でも、「過大」とされています。

類似法人は10万円~15万円が相場なわけですから、そこと比べられると当該会社の非常勤役員の報酬が「極めて高い」ことがはっきりわかります。

否認されてもやむなしですが、納税者側の主張を読んでいると、取って付けたような言い訳感に思えます。

指摘された後で無理やり理屈をくっつけるから、証拠や証言もなく、第三者を説得できる論拠になってないのです。

やはり、非常勤役員の報酬を高めに設定したいなら、事前に、きちんとした理由付けと、それを裏付ける証拠はしっかり用意しておかないといけません。

ただし、非常勤役員の場合は、事例にもあるように180万円くらいが相場ですから、調査官に納得してもらうには、かなりハードルは高くなると認識しておきましょう。

まとめ

この事例は、6,500万円以上が、個人では賞与となり、法人では損金にできず法人税の対象となります。

いわゆる「往復ビンタ」を喰らうことになります。

所得税率、法人税率を考えると、大打撃です。

社長に「節税のため」という考えがあったかはわかりませんが、こんなことなら、邪なことを考えず、非常勤役員の報酬を200万円程度にしておけばよかったと、後悔したことでしょう。

この事例は非常勤役員に3,000万円以上の報酬という特殊事例ですが、非常勤役員の報酬の相場を考えると、200万円を越えてくると、それなりの根拠を用意しておかないといけません。

ちなみに下記リンク先の記事も、「職務の対価に見合わない」ことが理由で、非常勤役員の報酬を否認されています↓

総じていえることは、あんまり無茶したらイカンということです。

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