形式基準(株主総会の議事録)を超えた部分が「過大な役員報酬」と否認された事例

この記事で紹介するのは、定時株主総会で決めた、「取締役」と「監査役」の役員報酬の額を、実際支給した額が超えたため、「過大な役員報酬の損金不算入」となり、否認された事例です。

役員報酬が過大かどうかの判定は

  • 形式基準:定款または株主総会、社員総会、もしくはこれに準ずるものの決議で決まった金額
  • 実質基準:役員の職務内容、法人の収益の状況、使用人の給与の状況、類似法人の役員の報酬との比較

のいずれかを超えた金額とされています。

この記事の事例は、形式基準に引っかかって否認されたものです。

形式基準は自分たち(会社側)で決められるものなので、この金額を超えて役員報酬を支払ってしまうのは、ミスというか、いい加減な運用だったといえます。

議事録に記載した金額を超えた部分が「過大役員報酬」とされた事例

取締役と監査役の役員報酬を否認されたポイント

取締役と監査役の役員報酬を否認されたポイントは、上述した通り、実際に取締役と監査役に支払った役員報酬が、定時株主総会で決められていた金額を超えたからです。

株主総会で決められ金額は

取締役の役員報酬総額監査役の役員報酬総額
平成〇年5月期2,000万円以内500万円以内
平成〇年5月期3,000万円以内1,000万円以内

で、

実際に支給された役員報酬は下記の通りです。

平成〇年5月期平成〇年5月期
取締役の役員報酬総額2,760万円3,387万5,000円
監査役の役員報酬総額600万円

その結果、一つ目は760万円、2つ目は387万5,000円が、過大な役員報酬として、損金不算入になりました。

社長は税務署から指摘された後、「この株主総会の議事録は間違い」とし、「実はこっちが本物」と後出しジャンケンを試みましたが、時すでに遅し、「それは指摘された後から作ったものだろう」と突っ込まれ、主張を認めてもらえませんでした。

役員報酬を支払う際は、形式基準の金額を超えるといった、防げるミスは絶対にしてはいけません。

最適な社長の役員報酬額の決め方を知りたい方は、下記リンク先の記事をご覧ください↓

議事録に記載した金額を超えた部分が「過大役員報酬」とされた事例

関係法令

内国法人がその役員に対して支給する給与(退職給与で業績連動給与に該当しないもの、使用人としての職務を有する役員に対して支給する当該職務に対するもの及び第三項の規定の適用があるものを除く。以下この項において同じ。)のうち次に掲げる給与のいずれにも該当しないものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

法人税法34条

法第三十四条第二項(役員給与の損金不算入)に規定する政令で定める金額は、次に掲げる金額の合計額とする。

一 次に掲げる金額のうちいずれか多い金額

イ 当該役員の職務の内容、その内国法人の収益及びその使用人に対する給与の支給の状況、その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する給与の支給の状況等に照らし、当該役員の職務に対する対価として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額

ロ 定款の規定又は株主総会、社員総会若しくはこれらに準ずるものの決議により報酬として支給することができる金額の限度額を定めている内国法人が、各事業年度においてその役員に対して支給した報酬の額の合計額が当該事業年度に係る当該限度額をこえる場合にはそのこえる部分の金額

法人税法施行令70条

さらに、上記いずれの場合にも該当するときには、そのうちどちらか多い金額が損金の額に算入されない金額となるとされています。

事実関係

役員報酬を否認されたのは、社長が発行株式の90%を持つ同族会社(以下、法人A)でした。

この会社は、これまでの事業年度は、議事録に記載された役員報酬額を超えることはありませんでした。

以下、事実関係です。

  • 法人Aは、議事録の作成を顧問税理士に依頼していた。
  • 顧問税理士は、原案を作るにあたって、社長に確認を取っていた。
  • 原案を受け取った社長は、これに押印した後に、他の役員にも回して、同様に押印して、議事録を作成していた。
  • 社長は、「一応今まで継続して議事録を作成してきたことから、議事録の存在そのものを無視したり否定するものではない」と答えている。

社長の主張

社長の主張は次の通りでした。

  • 定時株主総会の議事録は、形式的に作成しているもので、実際には株主総会は開催されておらず、株主総会の決議も存在しない。
  • このことは本件各事業年度においても同様であった。
  • したがって、本件各事業年度における役員報酬の額が相当な金額であるか否かについては、形式的に作成された本件各事業年度における議事録の記載によるべきではない。
  • それより、当該役員の職務内容から見て判断すべきである。

「いつもお手盛りです」とぶっちゃけて、それを正当化する無茶苦茶な理屈ですが、ともかくこれにより社長は、

「実質基準で判定すれば、本件役員報酬の額はいずれも相当な金額になり、全額損金の額に算入すべきである」

と主張したのです(ちなみに、判例を読んでいると、このような無理やりな主張に良く出くわします。人は言い逃れをするためには、手段を択ばないようです)。

国税不服審判所の判断

これに対し、国税不服審判所は、事実関係から次のように判断しました。

「法人Aのような同族会社は、商法に規定する株主総会が開かれたかどうか必ずしも定かでない場合が多い」

「このような場合、株主総会の決議の有無は株主総会が実質的に開催されたか否かにより判断するのが相当」

としましたが、

「事実関係をみれば、法人Aの株主が一堂に会して株主総会が開催され、決議がなされたと断定することはできないとしても」

「実質的に株主総会が開催され、決議が行われた上で議事録が作成されたものと認めるのが相当である」

としました。

要するに、90%も株を保有する社長が知っていたのですから、実質的に株主総会が開かれ、それによって決議された役員報酬だとされてしまったのです。

これにより、形式基準に該当することになり、

「実質基準と照らして相当であるか否かを判断するまでもなく、少なくとも形式基準限度額を超える部分は過大な役員報酬となるから、原処分庁が議事録を基に過大な役員報酬になるか否かの判断をしたことは相当である」

と社長の主張は認められませんでした。

言い訳は認められない

この事例は明らかに社長のミスで、ほかにいいようがありません。

ただ、

株主総会が開かれたどうかはわからないが、90%も持つ株主が関与しているのだから、それは実質的に株主総会を開いたも同じ

という判断が、なるほどと思いました。

一般的な中小企業は、事例のような同族会社が多いですから、「本当は株主総会を開いてないから無効」という主張は認められないということです。

役員報酬以外でも、株主総会で決める重要事項はあるわけですから、そんなつまらない言い訳は効かない可能性があることは忘れないでおきたいところです。

まとめ

書類ができてしまってからは、何をいっても後の祭りです。

冒頭でも述べましたが、社長は「本当はこれが真実の議事録」と、つじつまが合うように修正したものを提出しましたが、その意図は全部お見通しで、認めてもらえませんでした。

決められた手続きや手順は、しっかり行って、間違いのないようにしましょう。