終身保険で「お金が増える仕組み」を作り長生きリスクに備える

相続対策

終身の死亡保険の存在意義をあらためて見直すべきです。

終身とは一生涯という意味なので、必ず死亡保険金を受け取れる生命保険契約です。

生命保険は、払い込んだ保険料より受取れる死亡保険金の方が多くなるのが基本で、不謹慎かもしれませんが、被保険者(保険の対象者)がお亡くなりになると、ご家族にお金を増やして還流させるという仕組みを作れるのです。

これを利用し、夫婦で相互に終身保険に加入すれば、お互いの長生きリスクに対する資金まで残せます。

終身保険で「お金を増やす仕組み」を作る

生命保険には「終身保険」というタイプの商品があります。

終身保険はその名の通り一生涯の保障を意味し、被保険者がどの年齢でお亡くなりになっても、契約加入時に約束した死亡保険金を受け取れます。

つまり、使い方によっては、残されたご家族にお金を「必ず」還流させる仕組みを作れるのです。

一般的な定期保険や養老保険だと、10年間などの一定期間しか保障がないので、こういった仕組み作りには不向きで、生命保険を使った「お金を増やす仕組み」は終身保険ならではといえます。

※定期保険や養老保険がダメな商品というわけでなく、お金を「必ず」還流させる仕組み作りには不向きという意味です。たとえば定期保険は、「連帯保証人対策」として活用できます。

終身保険で配偶者の長生きリスクに備えるお金を残す

これだけ聞くと、被保険者となる当事者には気分悪いだけの話ですが、「お金を増やす仕組み」を取り入れることで、配偶者の長生きリスクに対するお金を残せます。

日本では2,000万円問題からも明らかなように、公的年金のみだと老後資金が不足することは周知の事実です。

さらにこれに加えて、長生きリスク(認知症や身体能力の衰えで介護が必要になること)も想定する必要があります。

認知症は、65歳以上の高齢者のうち発症している人は推計15%で、年々増加傾向にあり、2025年には65歳以上の5人に1人は認知症になるというデータがあります。

認知症の現状と将来推計

介護の場合、要介護者の発生率は、40~64歳では0.4%、65~69歳では2.9%ですが、そこから年齢が上がると急激に高まり、80~84歳では27.8%、85歳以上になると60.0%にも昇ります。

介護や支援が必要な人の割合はどれくらい?

長生きリスクを抱えたままの超危険な10年

家族の形態はさまざまなので一概にはいえませんが、仮に夫婦2人のケースを考えてみます。

2人分の年金なら余裕を持って生活できても、どちらか一方がお亡くなりになると、残された配偶者自身の年金とパートナーだった人の遺族年金で、生活費や介護費用に備えなくていけなくなります。

とくに残された配偶者が女性の場合、平均寿命は87.45歳で、男性の81.41歳より6年長く生きることになり、そのうち半数は90歳以上まで生存されます。

つまり、10年以上は配偶者一人の年金(+遺族年金)がメインの収入となるのです。

まかり間違えば、長生きリスクに対する資金に不足が生じる怖れがあります。

そんな資金不足をカバーできるのが、お金を増やして配偶者に還流させる仕組みを作れる終身保険です。

お子様がいらっしゃる場合でも、まとまったお金が入れば、介護費用などに備えた支出を用意でき、お子様の負担を減らせます。

非課税枠を使って無税で配偶者に渡す

それに死亡保険金には非課税枠もある上、配偶者を受取人にすれば、相続税の負担を大きく削減できます。

まず、生命保険の死亡保険金には「相続人の数 × 500万円」という非課税枠があります。

この点だけでも有利ですが、さらに配偶者を死亡保険金の受取人に指定しておけば、相続税の配偶者控除により、配偶者の相続財産が

  1. 1億6,000万円
  2. 法定相続分の範囲内

のどちらかまで、相続税は無税になります。

パートナーがお亡くなりになって、これからの収入が減るときに、少しでも手残りを多くできるのは大きな安心です。

また、生命保険の死亡保険金は、「受取人固有の財産」ですので、万が一相続争いになっても、受取人になった人へ確実に渡すことができます。

これがたとえば現金だとこうはいきません。

現金は、死亡で増えることはありませんし、全額相続財産で、全額相続税の対象です(もっとも配偶者は多くのケースで非課税となりますが)。

現金で残すより、有利な部分が生命保険にはあるのです。

お亡くなりになることは大変残念なことですが、それによってお金を家族に還流させるという仕組みを作るには、生命保険は打ってつけの商品です。

そしてそういった仕組みを作ることが、今後の日本では必要になると思うのです。

終身保険は生存時にも使える

ちなみに、終身保険には解約返戻金があります。

したがって、生存時にお金が足りなくなっても、解約返戻金を使うこともできます。

死亡に備えつつ、生存時にもお金を使える、これが終身保険の強みです。

お金を増やす仕組みを構築するには「早め」の加入が有利

終身保険は、支払った保険料より、死亡保険金の方が基本は多くなります。

しかし現在は低金利のため、運用期間が短いと、あまり増ええません。

たとえば、1,000万円の死亡保険金を受けとれるある終身保険商品の場合、50歳から加入して60歳で払い終える契約だと、払い込み保険料の総額は約889万円です。

一方、同じ内容の契約内容で、加入年齢を40歳でシミュレーションしてみると、払い込み保険料の総額は828万円まで抑えられます。

前者は死亡保険との差額は111万円、後者は172万円と、その差61万円もあります。

このように、保険も運用期間が長い方が受取り金額が増えます。

低金利だとなおさら、時間を味方につけ、長期運用が有利となります。

ちなみに、60歳を超えて加入すると、元本割れ(死亡保険金より払い込み保険料の方が多いこと)することもあります。

したがって、長生きリスクという、人生の終盤に起こる資金準備でも、若いうちから用意しておいたい方が有利であることに違いはありません。

まとめ

昔、生命保険は掛け過ぎといわれた時代があり、保障は葬儀代だけで十分などと極端なことをいわれていたときもありました。

しかし、時代や状況が変われば、必要な保障も変わってきます。

終身保険は、老後の生活資金や介護費用に不安がある時代だからこそ、加入を検討すべき保険です。

夫婦で相互に終身保険に加入すれば、お互いの長生きリスクに対する資金を残せます。

人の死をお金を増やすことに利用するなんて不謹慎だという声が聞こえてきそうですが、公的年金や企業からの退職年金は、もう頼りになりません。

それゆえ、生命保険という商品を使った、資金作りを視野に入れるべきなのです(もちろんですが、現状の生活資金とのバランスを見ながらの話です。無理な保険料の支払い方はやめましょう)。

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