社長の連帯保証人対策には「定期保険」が最適な理由

生命保険の死亡保険金は、受取人に指定された人の「固有の財産」となります。

しかし、解約返戻金の貯まるタイプの生命保険だと、会社の財務状況によっては、差押えられてしまうことがあります。

その点、定期保険の掛捨てタイプは、解約返戻金がないため差押えされません。

置かれた状況でも変わりますが、連帯保証人対策には定期保険の方が適しています。

掛捨ての定期保険は損なのか?

ここでいう定期保険とは「掛捨て型」のタイプの保険のことで、途中で解約しても保険料は戻ってきません。

保険期間は「一定期間」に定められ(10年間、60歳までなど)、その期間を一日でも過ぎると保障はなくなります。

その代わりに、少ない保険料で大きな死亡保障を得ることができます。

その一方、生命保険商品には、保険料が積立てられ、途中解約すると積み立てられていたお金(以下、解約返戻金)が返ってくるタイプの保険もあります。

このタイプの生命保険は、積み立てたお金が返ってくる特性を活かし、死亡保障と資産運用の同時目的で加入する人もいらっしゃいます。

これだけ聞くと、「掛捨てタイプはもったいない」とお感じになるかもしれません。

しかし、社長のように会社の連帯保証人になる場合に限定していえば、保険料が掛捨てになる方が適していることもあります(もちろん状況によります)。

生命保険の解約返戻金は差押えられる

実は解約返戻金のあるタイプの保険は、借金の返済が困難になった場合、解約返戻金を差押えられる可能性があるのです。

【生命保険の解約返戻金の差押(特定の程度や事前の調査内容)】

一般のご家庭では、差押えなどと物騒なこととは無縁だと思いますが、社長のように会社の借入の連帯保証人になっている場合は別です。

(サラリーマンや公務員でも大家業をされていて多額の借入をされている方もいらっしゃるので、案外無関係とはいえませんが・・・)

要するに、会社の業績が傾いて返済に詰まれば、個人の財産を差押えられる可能性もあるということです。

その中には、解約返戻金のあるタイプの保険も含まれています。

(契約者貸し付けを使って既契約の保険から返済するという方法もありますが、あくまで保険会社から借りたお金なので、保険会社に返済できないと保障額が減らされるか、0になります)

借金は費用の先食いという面もあるので、借金の型に生命保険の解約返戻金を差押えられるのは致し方ないですが、これで困るのが差押え後に社長がお亡くなりなってしまうケースです。

相続財産を簡単には放棄できない事情

仮に生命保険の解約返戻金を差押え後に、社長がお亡くなりなった場合、残されたご家族に生命保険の死亡保険金はありません。

残された財産は、自宅や預貯金などのプラスの財産と、借金、会社の連帯保証人の地位というマイナスの財産に分けられます。

そして90日以内に、その相続財産を相続するか、放棄するか決めなくてはいけません。

さらに大事なのがここからです。

相続財産はプラスの財産のみと選んで相続することはできません。

プラスの財産を相続するなら、マイナスの財産も相続しなくてはいけなくなります。

繰り返しますが、その中には社長が会社のためになっている連帯保証人の地位も含まれます。

もし、負債の額が大きすぎるときや、借金を負うのが嫌なときは、すべての相続財産を放棄しなくてはいけません。

しかし相続の放棄を行うと、自宅や預貯金などのプラスの財産も失うことになり、残されたご家族は生活の拠点やその後の生活費までなくしてしまうことになるのです(一部の財産を相続できる限定承認という方法もあります)。

お子様が小さかったりすると、生活費や生活拠点を失くすことは大きな痛手です。

そんな状況下で相続するかどうか、3ヵ月以内に決めなくてはいけません。

まさに八方ふさがり、できることならこんな事態は避けたいところです。

生命保険が連帯保証人対策になる理由

そんなときに役立つのが「定期保険」です。

※ここで想定しているのは個人契約の生命保険の場合です。

※ 契約形態は、

  • 契約者:社長
  • 被保険者:社長
  • 死亡保険金受取人:配偶者

を想定

定期保険は、保険料は掛け捨てのため、差押え財産となりません。

したがって、会社の業績が傾いて返済が困難になり、その状態で社長がお亡くなりになるような事態が起こっても、保険金受取人に死亡保険金を渡すことができます。

死亡保険金は「受取人固有の財産」ですので、たとえ相続を放棄したとしても、死亡保険金を受け取ることができるのです。

これならご家族が相続放棄でプラスの財産を失っても、死亡保険金でその後の生活を守ることができます。

死亡保険金の受取人を配偶者にする意味

さらに、受取人を「配偶者」にしておけば、相続税の配偶者控除により

  • 1億6,000万円
  • 法定相続分(相続人が配偶者と子供の場合は1/2)

のどちらか多い金額までは相続税はかかりません。

No.4158 配偶者の税額の軽減

死亡保険金は受取人固有の財産のため、相続財産の対象にはなりませんが、相続税の対象となります(これをみなし相続財産といいます)。

相続財産ではないのに相続税に課税されてしまう『みなし相続財産』とは?

ですから、たとえば子どもを受取人している場合は、相続財産の対象とはならずとも、相続税が発生してしまいます。

※相続を放棄した場合は、生命保険の非課税枠(相続人の数描ける500万円)の適用を受けることはできません。

※契約形態は

  • 契約者:社長
  • 被保険者:社長
  • 死亡保険金受取人:子ども

の場合

それが受取人を配偶者にしておくと、相続税の対象にはなっても、配偶者控除の非課税枠を使って、ほとんどのケースで無税で死亡保険金を渡すことができるのです。

今後のことを考えれば、1円でも出費は抑えておきたいものです。

そんなとき、配偶者を死亡保険金の受取人にしておけば、最低でも1億6,000万円の配偶者控除ですから、相続税はほどんのケースで発生しないでしょう。

※生命保険の非課税枠(相続人の数×500万円)は、相続を放棄しているため適用されません。

相続放棄した配偶者が受け取った死亡保険金

以上のような理由から、連帯保証人対策としては、掛捨ての定期保険の方が適しています。

解約返戻金があるタイプの生命保険の場合の対処法

解約返戻金のある保険の場合、差押えられる前に、延長という制度を使って定期保険に移行することができます。

延長定期保険(延長保険)

延長定期保険とは、保険料の払込を中止しても、それまでと同額の死亡保障を定期保険として継続する方法です。

その時点の解約返戻金をもとに、保険金額を変えないで一時払の定期保険に切り替えることになります。

ただし特約はすべて消滅します。

この方法を差押え前に使えば、解約返戻金はなくなりますが、死亡保険の受取人をご家族にして、連帯保証人対策を行うことはできます(ただし死亡保障期間が短くなる可能性があります)。

こういった柔軟性があるのも生命保険の強みです。

まとめ

今回のケースは、返済が困難になって、債権者から差押えられてしまうような状態の場合を想定してお話しました。

ですから、会社の借入の返済ができているのなら、連帯保証人対策が定期保険である必要はなくなります。

しかし差押えというリスクに対しては、解約返戻金のない定期保険が最適なのです。

ただし定期保険は「一定期間」という縛りがありますので、その期間を過ぎてお亡くなりになると、1円もお金が残せないというデメリットもあります。

いずれにしても、連帯保証人は怖ろしい制度で、何も対策してないと、残されたご家族は、相続するにしてもしないにしても、大変な思いをしなくてはいけません。

そういうときに生命保険は非常に役立つツールとなります。

状況に合わせてしっかり対策をしておきましょう。