M&Aの「のれん代」でわかる企業が投資すべきは無形資産である理由

財務改善

企業の価値は、数字で表される有形財産と、数値化できない無形財産に分けられます。

ややもすると、はっきりわかる有形財産を貯めることに目が行きがちですが、実際に価値が高いのは無形財産です。

それがわかるのが、M&A時の「のれん代」です。

企業活動は無形財産を蓄えることにシフトしてこそ、企業価値は高まります。

のれん代からみても、それは明らかです。

企業の目に見える価値と身に見えない価値

企業の価値は

  1. 目に見える価値→有形財産
  2. 目に見えない価値→無形財産

の2つに分けられます。

有形財産とは、

  • 土地
  • 建物
  • 機械設備

など、価値(値段)が明確なものをいいます。

その一方、無形財産とは、

  • ブランド
  • 知名度
  • 信用力
  • 技術
  • ノウハウ
  • 組織力・組織文化
  • 知的財産
  • 取引先
  • 顧客リスト
  • 市場シェア

といった、価値を具体的に明示することがむずかしいものをいいます。

この2つが組み合わさって、企業は大きな価値(収益)を生み出します。

建物や機械設備だけあっても利益は生み出されません。

それを動かす人や技術やノウハウがあって、はじめて価値が生まれるというわけです。

つまり有形財産と無形財産は表裏一体なのです。

無形財産の価値がわかる瞬間とは?

ただ有形財産と無形財産は、目に見える、目に見えない特徴があることから、

  • 有形財産→決算書で数値化される
  • 無形財産→決算書に表れない

という違いが出てきます。

人間はわかりやすいことを好む生き物ですから、目に見えて数字の伸びがわかる有形財産を増やすことに意識がいくかもしれません。

しかし本当に企業価値を高めるのは、目に見えない無形財産です。

それが顕著にわかるのが、M&Aの「のれん代」です。

のれん代とは?

のれん代とは、

「M&Aの対象となっている事業全体の価格から事業で使っている財産の価格を引いた差額」

のことです。

これでも何をいっているのか良くわからないと思いますが、ここで思い出してほしいのが有形財産と無形財産です。

事業から生まれる収益は、有形財産と無形財産が一体となってはじめて得られるのは先述した通りです。

工場や設備、ソフトウェアといった有形財産に、人や技術、ノウハウといった目に見えない無形財産が加わって、大きな収益を生み出します。

逆にいえば、事業全体の価格から有形財産を引いた差額、すなわち無形財産こそがのれん代の正体です。

決算書に表れない財産にこそ価値がある

たとえば、時価1億円の工場があったなら、これを購入するには1億円出せば足りるでしょう。

しかし、この工場を使って3億円売上げているなら話は別、この事業自体を1億円で購入できません。

事業で生み出す収益を考慮して、事業全体の値段が算出されます。

そこで仮に5億で売れたとしたなら、その5億円から有形財産の1億円を引いた4億円がのれん代です。

それつまり、無形財産に4億円の価値ががついたということです。

・事業全体の価値-有形財産=のれん代(無形財産)

だから債務超過や赤字が続く一見価値のないような会社でも、無形財産の価値によっては値段がつくことがあるのです。

要は、企業の持つ無形財産は、決算書に数値となって表れる有形財産より価値があるということが、のれん代からも明らかなのです。

無形財産に高値がつく理由

では、なぜのれん代といわれる無形財産に、買い手は高い価格をつけるのでしょう?

それには以下の理由が考えられます。

  • 買い手が手に入れるのがむずかしいから
  • 買い手が1から構築するのに時間がかかるから
  • 買い手が新規参入しても追いつけないほど参入障壁があるから

要するに市場に算入して収益化、そこから優位性を持つ会社にするには、膨大な時間と人や労力を投入しなくてはならず、それならすでにある会社や事業を買収した方が早いということで、M&Aで高いお金をつけてまで購入するということです。

そののれん代(無形財産)は、必ずしも合理的な計算で算出されるわけではないようです。

むしろ、買い手が「どうしてもほしい」「高値で買っても惜しくない」というふうに、買い手の主観で決まるとのこと。

つまり、会社が赤字や債務超過といった財務的にボロボロの会社でも、ときに高値がつくのは

  • 今は赤字でも業務改善すれば十分黒字にできる
  • この会社を傘下にしたら、市場シェア独占できる
  • この事業は将来大きなる可能性がある。今が買い時
  • この技術があればシナジー効果が生まれる
  • ライバル社に買われるくらいなら、高くなっても自社に取りこもう

といった、買い手にどうしても買収したい理由があるからなのです。

のれん代といっても決まった評価があるわけでなく、A社の評価は高いがB社は低いというように、買い手の事情(ニーズ)によって変わるということです。

それでも一つだけいえることは、無形財産に魅力のない事業や会社なら、高値はつかないということ。

アフターコロナで企業の再編が進むことを思えば、無形財産への投資こそが、企業の生き残りや業績アップのカギを握っているといえます。

まとめ

無形財産のような普段意識しない茫洋とした価値でも、M&Aという市場に出せば、そこに値段がついてしまいます。

会社を売却することが頭にない経営者にとっては関係ない話のように思えますが、普段意識しないだけで、実はきちんと価値がつけられているのです。

そして企業価値は目に見える有形財産より無形財産の方が価値が高い事実があります。

企業の価値を高めるには、無形財産への投資は必須です。

関連記事

この記事へのコメントはありません。

<無料コンテンツ>

<マニュアル>


最近の記事

  1. 労働分配率から適正な成果報酬を算出する方法

  2. 労使トラブルの増加に備えて節税している場合ではない

  3. 貸主が法人で借主が個人(社長)の場合の借地権の課税関係について解説…

  4. 親が子供に賃貸用建物を贈与するメリットと注意点を解説

  5. 社長(役員)が同族会社へ「時価より高い価格」で賃貸用不動産を売却し…

  6. 役員が同族会社に賃貸用建物を「低額」で譲渡(売却)したらどうなるか…

  7. 賃貸用建物を同族会社へ譲渡(売却)した場合の所得税の計算方法を解説…

  8. 土地の所有者の同族会社が建物を所有する場合の相続税課税価格をシミュ…

  9. 土地の所有者(親)、賃貸用建物の所有者(子)の場合の相続税課税価格…

  10. 土地と賃貸用建物の所有者が親のときの相続税の課税額をシミュレーショ…