社長が連帯保証人になっていると相続税が増える理由

連帯保証は思う以上に怖い制度です。

連帯保証人になると、「自分が借りた」と同じになることはよく知られたことです。

しかし問題はそこで終わりになりません。

もっとも困るのが「相続時」です。

残されたご家族に思わぬ相続税が発生することがあります。

社長が連帯保証人になるのは宿命

連帯保証人なると、

  • 催告の抗弁権
  • 検索の抗弁権
  • 分別の利益

という3つの権利を失い、債務者と同等の責任を負わされることになります。

要は、「連帯保証人が借りわけではないけれど、借りたと同じ状態になる」ということです。

そして社長の場合、会社が融資を受けるときに、会社の借入に対して銀行から連帯保証任なることを求められます。

連帯保証人にならなければ、会社が倒産しても、その弁済の義務は出資額までとなります。

しかし、会社の連帯保証人になることで、その弁済義務の範囲は「借りた額と同額(あるいは借入残高と同額)」となってしまいます。

これはできれば避けたいところ。

ですが、借入の条件が「経営者個人が連帯保証すること」なので、多くの経営者は断わるわけにもいかず(会社の財務状態が良ければならないで良いケースがあります)、やむなく会社の連帯保証人となります。

自分の会社の借金ですから、社長自身はある意味仕方ないと割り切れます。

ですが、連帯保証制度が猛威をふるうのが「相続時」、つまりは残されたご家族が困ることになるのです。

連帯保証人の地位は引き継がれる

仮に会社の連帯保証人となった社長がお亡くなりになると、保証人の地位は相続人に引き継がれます。

相続人とは残されたご家族のことです。

そうなると、相続したご家族が会社の借金を保証し、債務の弁済を引き継ぎます。

もし、借入が多すぎる、会社を承継できないなどの理由で、相続人の地位を引き継ぎたくなければ

  1. 相続を放棄する
  2. 相続を限定承認する

といういずれかの方法を採らなくてはいけません。

相続を放棄すればプラスの財産も放棄せねばならず、連帯保証だけ放棄というわけにはいかないのが現実です。

ちなみに、生命保険金は受取り人の「固有の財産」です。

仮に相続を放棄するような事態でも、死亡保険金をご家族に指定しておけば、そのお金は相続財産と切り分けられるため、ご家族の手元にお金を残すことができます(ただし、相続税の対象になります)。

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相続財産から連帯保証の債務を引けない

そして問題はそれだけではありません。

連帯保証を相続したことで、思わぬ相続税が発生することがあるのです。

相続税を計算する際は、「債務控除」が認められています。

債務控除とは、相続税を計算するときに、被相続人(お亡くなりになった人)が残した借入金などの債務を遺産総額から差し引くことができる金額をいいます。

相続財産には、プラスの財産もありますが、借金のようなマイナス財産もあります。

借金にまで相続税が課せられるのはおかしな話ですので、債務控除として引くことができます。

No.4126 相続財産から控除できる債務

そこで連帯保証の債務です。

連帯保証は自分で借入しているのと同じと先述しました。

であるなら、債務控除として相続財産から引けそうですが、果たしてそうなるのでしょうか?

答えは否。

引くことはできません(債務控除できない)。

つまり、引けない分だけ相続税が増えてしまうことを意味します。

たとえば、基礎控除後の相続財産が3000万円あったとします。

基礎控除とは、相続税がかからないボーダーラインで、相続人の数によって変動する非課税枠のことです。

財産を相続したとき

ここでは話を簡単にするため、相続人の数や、基礎控除のことは考慮しません。

単純に相続財産から基礎控除を引いて、残った財産が3000万円、つまり相続税の対象となる財産が3000万円になるという前提で話を進めます。

そこで債務控除があった場合を考えてみましょう。

仮に、相続財産が3000万円で、債務控除できる借入が3000万円あったなら、

・3000万円(相続財産)-3000万円(債務控除額)=0円

で、相続税の対象となる財産は0円となり、相続税も0円です。

一方、3000万円の連帯保証になればどうでしょうか?

連帯保証で負った債務はたしかに3000万円ありますが、これは債務控除にできませんので、3000万円の相続財産に丸々税金がかかることになるのです。

・3000万円(相続財産)-0円=3000万円(相続税の対象となる金額)

なぜ債務控除できないのか?

自分が借金をしたも同然なのに、なぜ連帯保証の債務は、債務控除できないのでしょうか?

判例によりますと、

相続税の計算に際して課税価格の算定の際にその金額を控除すべき債務は「確実と認められるものに限る」とされている。

そして、「確実と認められる」債務とは、債務が存在すると共に、債権者による請求その他により、被相続人の負担に帰することが確実な債務であると解すべきである。

連帯保証債務は、それが履行された場合でも、その履行による負担は、法律上は主たる債務者に対する求償権の行使によって補填されて解消する関係にあり、このような観点からみると、被相続人が連帯保証債務を負っているというだけでは、原則として法14条1項の「確実と認められる」債務にただちになるものでなく、相続開始の現況において、主たる債務者が資力を喪失して弁済不能の状態にあるため、主たる債務者に求償しても返済を受ける見込みがない場合にはじめて「確実と認められる」債務であるとして債務控除の対象になるというべきであり、このような解釈基準は、結局のところ、評価基本通達205にいうところの「その他回収が不可能または著しく困難であると見込まれるとき」という基準とほぼ同様のものというべきである。

要するにこれは、連帯保証債務が債務控除となるには

  • 相続開始の時点で、債務が「確実と認められる」こと。
  • 連帯保証は、ただ単に「債務の保証をしている」だけで、債務が「確実に認められる」状態ではない。
  • 債務が「確実に認めらる」状態とは、主たる債務者が返済能力のない状態をいう。
  • それは、評価基本通達205にいうところの「その他回収が不可能または著しく困難であると見込まれるとき」

となります。

つまり、会社の連帯保証の場合だと、会社に返済能力がなく、ほぼ倒産したような状態であるとき、はじめて債務控除できるというわけです。

ちなみに、会社が債務超過でも、毎期赤字を出していている状態でも

  • 返済を滞りなくしている
  • 新規融資を受けている
  • 営業を続けている
  • 強制執行を受けていない

などの事実によって、債務が「確実を認められる」わけでない(債務控除できない)と裁決を受けている判例もあります。

連帯保証が債務として認められるには、事実上の倒産状態でないと無理で、かなりハードルが高いことがわかります。

まとめ

連帯保証は時限爆弾のようなもので、それが爆発するのは相続時です。

会社の借入は生命保険で解決すればいいとお思いの社長もいらっしゃると思いますが、そんな簡単な話ではないのです。

こんなことを知らずに社長の身に相続が起きるて困るのは残されたご家族です。

できるなら連帯保証を外す努力をしておきたいところです。