会社にとって「資本金」は重要です。
資本金は会社の体力を表すと同時に、融資に関係してくるからです。
資本金が少ない会社は債務超過になりやすく、なってしまうと融資を受けることが困難になります。
会社にとってお金は命です。
借入であってもお金があれば生き残ることができます。
今は無借金経営の会社でも、ピンチのときは融資で資金調達できるようにしておくべきでしょう。
だから資本金を分厚くしておくことは、会社にとって重要な財務政策です。
債務超過で融資はアウト
銀行は債務超過の会社には基本的に融資をしてくれません。
受けられたとしても、担保がある、保証人に資力がある、一過性の債務超過で抜け出せる見込みがあるなど、融資のハードルは一段も二段も上がります。
債務超過でも銀行から融資を受ける秘訣とは?
債務超過とは会社の資産より負債の方が多い状態で、会社の全資産を売っ払らっても借金が残ります。
銀行だって金貸しです。
弱り目の会社にお金を貸してくれといわれても、おいそれと貸してくれるわけがないでしょう。
決算書が如実に物語る
銀行は融資の際、決算書の提出を求めますが、決算書が債務超過だと、債務者区分が「破綻懸念先」以下へ分類されます。
債務者区分とは、債務者(借りる側のこと)の財務状況、資金繰り、収益力等により、返済の能力を判断して、5段階に分類する区分けのことです。
債務者区分は
- 正常先
- 要注意先
- 破綻懸念先
- 実質破綻先
- 破綻先
となり、要管理先以下(要注意先の中にある区分け)になると、融資の審査に通る確率はぐんと厳しくなるのです。
それは決算書から「返済困難」とはっきり数字が出ているからです。
これを覆して融資を受けるには、よほどの説得力を持った事業計画か、先述した通り、担保がある、保証人に資力があるなど、返済の見込みを確約するものがないと銀行も納得してくれないのです。
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資本金が重要な理由
それゆえ資本金は会社にとって重要な財務政策になるのです。
資本金が厚くなれば、簡単には債務超過にならないからです。
債務超過にならなければ、融資の目を潰れることはないのです。
たとえば資本金1000万円と3000万円の会社を比べてみましょう。
同じ500万円の赤字でも、資本金1000万円だと2年で債務超過です。
しかし資本金が3000万円あると、6年間は債務超過を避けられます。
債務超過になると、新規の融資に応じてもらえないばかりか、場合によっては現在借りている融資も引き上げられてしまうかもしれない危機的状況です。
だからこそ、1円でもあっても債務超過にならないよう、資本政策を進めなくてはいけないのです。
債務超過の解消法
債務超過になった場合、これを解消するには、基本は毎年稼ぐ利益を黒字化することです。
しかし早急に融資を受けたい場合は、すぐに債務超過状態を解消しなくてはいけません。
そこで短期的な施策で債務超過を解消する方法を2つご紹介いたします。
増資をする
増資によって資本金を増額すれば、純資産額は増えて、その分、負債が解消されます。
これにより債務超過を解消できます。
オーナー経営者に個人資産があるなら、その資金で増資するのも方法です。
こういったいざというときのために、役員報酬を見直して手取りを増やしておくことは、経営者の財務戦略の一環です。
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役員借入金を免除する
経営者が会社にお金を貸すことを「役員借入金」といいます。
たとえ経営者からの借入といえど、会社にとっては負債ですから、貸借対照表の負債に計上されます。
そこで役員借入金を経営者が免除することで(平たくいうと借金をチャラにすること)、その分負債が少なくなり、債務超過を解消できるというわけです。
ただし、借入を免除すると「債務免除益」が発生し、その期の利益によっては税金が発生します。
またこれは、あるとき払い催促なしという超ゆるい借金がなくなった、要は会計的なテクニックで表面上整えただけにしか過ぎませんので、債務超過の根本解決にはなりません。
つまり、資金は不足したままということです。
抜本的改善を行わなければ、融資も単なる延命で終わります。
2期連続赤字でも融資は困難だが・・・
ちなみに、銀行には「2年連続赤字」でも融資のハードルは高くなります。
だったら2年で赤字になろうが、6年で赤字になろうが、最初の2期連続赤字を出した時点で、両方の会社とも融資を受けられない、という結論が導き出されます。
しかし2期連続赤字だからといって、すぐに融資の目がなくなるわけではありません。
業績回復の見通しを具体的に説明し、金融機関の納得を得ることによって融資の道が開けます。
そうであるなら、資本金が0円になってしまうのと、残り2000万円あるのとでは、再生の事業計画を立てるのにも説得力が違ってきます。
繰り返しますが、債務超過とはその時点で企業を清算したときに、借金だけが残る状態です。
しかし債務超過でなければ、資産を売却すれば、手元に資金が残るのです。
ですから、2筋連続赤字だとしても、資本金がある方が融資を受けやすくなります。
お金で「時間を稼ぐ」
余談ですが、資金力の差は買える時間の差でもあります。
資金があれば時間を短縮したり、時間を稼ぐことができます。
前者は投資の場合ですが、後者は投資が失敗したときの時間稼ぎです。
不況を耐えることができれば、生き延びてこそ、得られる利益もあります。
たとえば不況の波に同業が次々飲み込まれて潰れても、その波を乗り切り生き残れば、必然的に残った利益を享受できます。
淘汰の途中で事業の継続を断念すれば、そこですべてが終わってしまいます。
もちろん、好不況の波だけで、会社の存続が決まるわけではありませんが、一定期間時間を稼ぐ意味がそこにあります。
だから繰り返しますが、会社にとって資本金は重要な政策なのです。
無策では会社の生存確率はだだ下がりです。
資本政策は、毎年の利益をきちんと稼ぐと同時に、中長期で社長が組み立てなくてはいけないほど大事な経営戦略なのです。
まとめ
毎年の利益を稼ぐことに熱心な社長は多いですが、それと同時に大事なのが資本政策です。
損益計算書に興味があるが、貸借対照表に興味がない(あるいはわからない)という社長は、資本金の重要性を認識すべきです。
でなければ、いざというとき資金調達できなくて、会社を潰してしまうことになりかねません。
今日からでも遅くはありません。
ぜひ資本政策にも取組みましょう。
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