値引きは必要だが・・・
売上を増やすために良く使われるのが「値引き」です。
営業でも早く契約を決めたいときは「〇〇円値引きしますから、契約をお願いします」と、契約を促すトークとして使われます。
集客でも割引を使うことで、集客効果を得られます。
しかし値引きには、集客や売上を増加をさせる効果はありますが、その反面利益が飛んでしまうというデメリットがあります。
ですが現実問題、商品が売れ残ったり、集客数に影響することを思えば、やはり値引きせざる得ない環境もあります。
では値引きしても損しないためにはどうすればよいでしょうか?
この記事では損しないための値引き販売の方法について解説します。
値引きで損しないためには
値引きしても損しないためには、最初の段階で「確保したい利益率」と「段階的な値引き率」を決めておくこことです。
たとえば
- 目標粗利益率30%
- 1回目値引き率30%
- 2回目値引き率50%
とあらかじめ決めておくことで、値引きをしても損しない体制にできます。
粗利益率と値引き率はイコールではない
この仕組みの説明の前に、値引きと粗利益率の関係についてお話させていただきます。
商品を30%値引きで販売した場合、粗利益も30%少なくなるわけではありません。
値引きによる粗利益は、最初の値段設定によって変わります。
仮に1000円で仕入れた本に1000円を上乗せしてを2000円で販売する場合、値入率は50%です。
その本を30%の値引きで販売すれば、粗利益は
・(2000円×(1-0.3))-1000円=400円
となります。
値引き後の粗利益率は
・400円÷1000円=40%
です。
最初の価格設定が値入率率の50%の商品なら、30%の値引きをしても、40%の粗利益率を確保することができます。
しかし値入率を30%で販売した場合だと、値引きを30%してしまえば損益はマイナスになってしまいます。
・1000円×(1+30%)=1300円(販売価格)
・1300円×(1-30%)=910円(30%値引き後価格)
・910円-1000円=-390円(販売収益)
このように粗利益率と値引き率は必ずしもイコールではないのです。
むしろ値引き率によっては赤字となってしまいます。
やみくもな値引き販売では利益は残らない
ではなぜ値引き後の粗利益率を把握しておくことが大事なのか?
それはやみくもに値引きをしてしまえば、残る利益も残らなくなってしまうからです。
現実的にいって仕入れた商品がいつも完売するわけではありません。
売れ残ってしまえば無駄な売り場面積も取りますし、管理費用もかかってきます。
また在庫が増えると寝てしまうお金も増えますので、資金繰りも悪くなります。
このような無駄なコストや資金繰りを悪化させないためには、在庫になるより値引きしてでも売ってしまった方が得です。
そこではじめから売れ残りを見越して、「最初は30%割引」「次は50%と割引」と段階的に値引きして商品を捌けるようにすることがあります。
このような値引き販売をする場合、最初から値引き分を含めて粗利益がどうなるか計算しておかないと、適当に値引きしていては赤字になってしまいます。
たとえば1冊1000円の本を100冊仕入れたとします。
このとき初期設定の定価1500円で20冊売りました。
次は20%の値引きをしたところ30冊売れました。
最後に残り40冊を50%の割引で販売しました。
このときの粗利益は
・500円×20冊=10000円(定価1500円で販売)
・200円×30冊=6000円(20%値引きでの販売1200円)
・▲250円×50冊=▲12500円(50%割引で販売750円)
・合計:10000円+6000円+▲12500円=3500円
・粗利益率:3500円÷(1000円×100冊)=3.5%
完売できただけまだましといえますが、無計画に値引き販売してしまうと簡単に利益は飛んでしまいますし、もっと値引きをしたり売れ残ったりすれば赤字になってしまいます。
しかし逆にいえば、第1段階で20%の割引、第2段階で30%の割引と計画的に決めておけば、結果的にバーゲンをするとしても、目標とする粗利益を残せるということです。
粗利益を確保するための計算式
ではどのように値引きを計画すれば目標とする利益が残せるのか?
そのための計算式は次の通りです。
・目標粗利益率を確保できる初期値入率:目標粗利益率+(1回目の値引き率×目標消化率)+(2回目の値引き率×目標紹介率)・・・・
3回目、4回目と値引きをしていく場合は、上の式に「3回目の値引き率×目標消化率」と足していきます。
最初の目標粗利益率とは、値引きしないで販売いたときの粗利益率になります。
つまり値引きをしても必要な粗利益率を確保するには、何%の値引きを何回しても大丈夫なのかを最初の段階で把握しておくことが重要なのです。
いくらに設定すれば粗利益を確保できるか?
では具体的に計算していきます。
値引きしなければ35%の粗利益を確保できるとします。
たとえば先のケースで考えます。
前提条件は初期設定の定価で全体の20%売りました。
次は20%の値引きで全体の30%売れました。
最後に50%の割引で全体の40%を販売しました。
このとき目標の粗利益率を20%と設定した場合、最初の値入率を何%にすればよいか、上記の計算式に当てはめて求めます。
・20%(目標粗利益率)+(20%×30%)+(50%×40%)=40.6%
この値引き計画なら、最初の段階で値入率40.6%に設定しておけば、当初予定していた粗利益率20%を確保できることになります。
このように値引きしても粗利益を確保できるよう逆算して計算しておくことが、値引き販売で赤字を出さないポイントになります。
まとめ
経営者ならなるべく値引きを避けて販売したいところですが、そうはいっても相見積になったり、不良在庫にしないために値引き販売やむを得ずという現実があります。
しかしそのときにむやみやたらに値引きをすれば、利益は簡単に飛んでしまいますし、最悪は赤字となってしまいます。
不良在庫を抱えるよりましかもしれませんが、やはり赤字は避けたいものです。
とくに今後はいかに利益を確保するかが、企業にとって重要な方針となります。
利益を稼がなければ人材を雇うこともできなくなります。
値引き販売する場合でも、しっかり粗利益を確保できるよう、事前に計画しておきましょう。
コメント