コロナ融資の出口戦略はすでにはじまっている

融資対策

コロナ融資の「延命」でない「出口戦略」

コロナショックで融資の審査は一時的にゆるくなりましたが、借りたお金は借りたお金、いずれ返さなくてはいけません。

借りたのはスタートであって、返済という出口戦略はすでにはじまっています。

出口戦略のない借入ではただの延命になり、却って借入だけが増えて状況は悪くなります。

悲観的シナリオで借入後のストレステストを行う

コロナショックのような先の見えない状況では、どれくらい厳しい環境下でも生き残れるかストレステスト、とどのつまり、事業計画を作成し、収益シミュレーションを行う必要があります。

たとえば売上3割減でも、返済に耐えうる財務体力はあるかを把握することが大事です。

最悪の状況でも資金繰りを回せることがわかるから、ある意味安心して事業活動を行えます(もちろん油断はしてはいけませんし、良くも悪くも予想以上の事態が起こる可能性もあります)。

そして最悪を想定できれば、改善手段を事前にいくつか用意でき、それを実行することで最悪を回避できます。

逆にやってはいけないのは楽観的シミュレーションです。

最悪の状況を想定するから対処できるのであって、何も想定していなければ対応できないのが現実です。

資金繰りは予想以上にシビアです。

予想を下回る業績が続けば、資金繰りは簡単に詰まってしまいます。

PL・BS・CFの三位一体シミュレーションでなければ意味がない

そしてシミュレーションを行うときのポイントは、損益計算書(PL)だけでなく、貸借対照表(BS)、キャッシュフロー計算書(毎月の資金繰り予定表まであるとベスト)三位一体でつくることです。

毎年どれくらい利益が出るか損益計算の収益シミュレーションだけでは、会社の財務状態を把握することはできませんし、ましてや改善策も出せません。

たとえば、BSを見れば、調達した資金(自己資金・金融機関からの借入・買掛金など)をどう運用しているかがわかります。

つまり、調達した資金はいくらで、その資金の内訳はどうなっているか?といったことがBSから読み取れるのです。

となれば、返済資金の増減が会社の財務状態にどのような影響を及ぼすかも見て取れるのです。

PLとBSがつながってわかること

仮に設備資金で1000万円融資を受けたとします。

損益計算書だけを見れば、借入利息と減価償却分の費用しか把握できません。

1000万円の新たな借入れをすることで、会社の資産がどのように動くかまで読めないのです。

それによって起こることは、これまで貯めたお金の流出です。

もし設備投資で損益分岐点となる利益を回収できなければ、設備資金の返済で会社の現金はどんどん減ることになります。

PLでわかるのは事業の収益までで、利益が出ない中で返済が進むと会社の財務状態がどうなるかまでは掴めないのです。

その結果、キャッシュ残高が月商の3か月分を切り、資金繰りが月を追うごとに苦しくなります。

このような流れは、PLとBSをつなげてみないとわからないのです。

ゆえにPLとセットでBSをつくる必要があります。

キャッシュフロー計算書で資金繰りを把握

そして必ず、その結果お金がどう動くか、キャッシュフロー計算書で把握しましょう。

キャッシュフローとは、その期に、

  1. どれくらいキャッシュを稼ぎ出したか?
  2. どれくらい投資に回したか?
  3. どれくらいお金を借りて、いくら返済したか?

がわかる一覧表です。

貸借対照表と損益計算書は発生主義会計で作成さるため、簡単にいえば実際のお金の流れとは若干タイムラグがあります。

そのため、帳簿上の利益と現実のお金の残高は一致しないのです。

それゆえ、損益計算書上は利益があっても、お金が足りない「勘定合って銭足らず」が起こります。

反対に、利益はないのにキャッシュはあるのような状態もありますが、経営者が気をつけなくてはいけないのは、利益が現金に換金されるまでのタイムラグで起こる黒字倒産でしょう。

その点キャッシュフロー計算書は、

  1. 売上げがあっても収入に計上されない
  2. 仕入れがあっても支払うまで支出に計上されない

という現金主義によって作成されるので、実際のお金の流れを把握することができます。

これにより、売上げが減った状態でも、本当に資金繰りに詰まらないかをシミュレーションすることが可能になるのです。

このように三位一体のシミュレーションして、返済に耐え得ることができるかやっとわかります。

会社の存続はお金で決まります。

資金繰りが回らなければ、事業を継続できないことを思えば、PLとBSだけでは足りず、CF計算書までのチェックが必要です。

借りた後こそケアが大事

コロナ融資でお金を借りた後も、金融機関に定期訪問して密なコミュニケーションを取りましょう。

借りたらそれまでが、一番まずい対応です。

ところで、銀行の好む会社はどのような会社でしょうか?

それは「資金繰りの管理をしっかりしていて、継続的に利益を出す会社」です。

実はイケイケドンドンのような勢いのある会社は、売上が大きくても好まれなく、しっかりした会社の方が銀行は好感を持つのです。

その理由は、確実に堅実に借入を返してくれるからです。

勢いだけでお金の管理ができてない会社は、怖くて貸すことに慎重になってしまうのです。

だから支払い能力を見るために、6か月先の資金繰り表の提出を求めるのです。

貸したは良いが、すぐにバンザイされては困るからです。

それゆえ、シミュレーションとはいえど、資金繰りに詰まらないことを証明する証拠(書類)を銀行に提出することは大事です。

借りたら借りっぱなしでなく、定期的に訪問して、問題なく返せることを証明し、信頼関係を築くことが何より重要なのです。

この記事はコロナ融資の出口戦略として書いていますが、売上げの先行きが不透明である以上、また融資が必要になるかもしれません。

そんなとき、普段から銀行とコミュニケーションを取って信頼関係を構築しておけば、スムーズに融資を受けられます。

自社内でシミュレーションして終わりでなく、その結果を定期的に銀行へ訪問してお知らせしましょう。

そのコミュニケーションも、コロナ融資の出口戦略の一旦です。

まとめ

ドンブリ勘定で楽観するのは精神論までです。

資金繰りを詰まらさないためには、具体的シミュレーションでの確認作業が必要です。

お金を借りるのははじまりに過ぎません。

コロナショックを乗り切るには、出口を見据えた計画が明暗を決します。

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