お金と共に選択肢が消える
会社にとってお金の存在とは、経営の選択肢を得ることです。
お金があることで、攻めも守りもさまざまな施策を打つことができます。
その反対にお金がないと選択肢を失います。
攻めるにも攻めが弱く、耐えるにも耐性は脆弱です。
もちろん、お金を持てばすべて上手くいくわけではありませんが、選択肢が豊富な方が競合との生存競争を有利に進められることは間違いありません。
赤字仕事を受注しないという選択
お金を持つことで、さまざまな選択をすることができます。
たとえば耐性です。
お金を持つことで、不況の時でもあえて「仕事を受注しない」という選択肢を取れるのです。
これにより、赤字仕事で自分の首を自分で締める悪循環を避けられます。
お金の先出しで資金繰りは火の車
わたし自身も経験ありますが、売上がなく、手持ち資金が少ないときほど、背に腹は代えられぬとばかりに赤字仕事を受注することがあります。
ですが、この選択は多くの場合間違いで、資金繰りは良くなるどころか一層悪くなります。
なぜなら、売上を作るためにはお金が先に出ていくからです。
商売はお金の先出しが基本です。
売上をつくるには、人件費や仕入れが必要で、そのお金は代金の回収前に出ていくことがほとんどです。
そうなると、ただでさえ少ない資金が余計に少なくなっていくのです。
そして売掛期間の長さが追い打ちを掛けます。
利益が少なければ売掛期間を短縮する交渉をすればまだましなのですが、足元を見られているせいか、そのような交渉もせず、とにかく仕事ほしさで受注します。
すると、仕入れや人件費の代金を立替えている期間が長くなるので、資金繰りは一層火の車となるのです。
もし代金回収が2か月後になれば、その間、支払いが2回来ることもあるでしょう。
それを無収入でしのがなくてはいけないわけですから、これはかなりキツいです。
さらに赤字仕事で、利益自体ギリギリか赤なので、代金が回収できても右から左で、資金繰りは一向に楽になりません。
これでは一体何が何やら、仕事を受注しない方がよっぽどマシというものです。
実は売上げがない苦しいときほど、仕事を選ばなくてはいけないのです。
資金ショートで終了
しかしとにかくお金がほしいという考えが、冷静な計算をできなくします。
黙っていても支払い日は到来するわけですから、一時しのぎでも安い仕事で資金繰りを回さなければ、それはそれで詰んでしまいます。
しかしどこかで方向転換しないと、下手をすると資金ショートを起こして、それこそ終わりかねないのです。
いわずもがな、赤字仕事は危険な綱渡りです。
キャッシュを残すのは経費削減だけでない
その一方、手持ち資金に余裕があれば、売上げが減っても赤字仕事は受けないという選択ができます。
この選択で、むやみやたらに赤字仕事を受けるより、無駄な支出が抑えられ、会社の体力は温存されます。
そして消耗戦で疲弊した競合をしり目に見ながら、景気回復時に着々と投資を行えます。
支出とは経費の削減だけではなく、仕事を選んで受注することも支出の抑制なのです。
要するに、お金がある方が実は支出を抑制できるという話で、お金がないと選択肢を失い、皮肉にも支出は余計に増えていくのです。
お金が集まる経営
だから普段からお金が貯まる経営を心掛けることはもちろん、無借金経営にこだわることなく、お金を借りられる体制を築いておくことが重要です。
それもただ単に借りるのではなく、できる限り大きな金額を借りられるよう、決算書を磨いておかなくてはいけません(けっして粉飾決算という意味ではありません)。
そのためには、
- 無駄な節税で利益を削らない
- 無駄な資産は持たず、お金を持つようにする
- 1円でも多く利益を稼げる体制を築く
- 平常時でも銀行からお金を借りて実績を作っておく
などの施策が必要になります。
お金があるとは多くの選択肢を得られることです。
それは借入のお金でも同じことです。
まとめ
お金ですべてが決まるわけではありませんが、お金があることで選択肢が増えるのは事実です。
逆にお金がなくなれば、選択肢を失い、どんどんジリ貧へと追い詰められます。
だから借入でもお金を調達できる体制は必要ですし、普段からお金の貯まる経営を心掛けなくてはいけません。
財務の強い会社は防御力が高く、不況期を切り抜けられる体力があります。
それはお金があるから、赤字仕事で余計な支出を防げることも意味するのです。
会社にとってお金の存在は、競争力という圧倒的な差となります。
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