無借金経営にこだわると却って事業の成長スピードを遅らせることになります。

もちろん、事業規模や事業形態、社長の経営方針によって無借金経営はありです。

しかし事業を成長させたいなら、あえて無借金経営にこだわる意味はないでしょう。

ビジネスはお金の先出しが基本

売上をつくるには、どんなビジネスでもお金の先出しが基本です。

仕入れをする、店舗を借りる、権利を買う、道具を揃えるなどなど、ビジネスでは売上をつくるためにお金の支出が先行します。

その後に、販売、代金回収と続きます。

この逆に、注文を聞いて代金引き換えに納品をするパターンがありますが、これだと機会損失を起こし、売上を伸ばせないという弊害が起こります(それ以前にビジネスをはじめるには何らかの備品なども揃えなくてはいけないので、やはり先出しがビジネスの基本です)

要するに多くの事業形態では、売上をつくるためには、ビジネスの構造的に先に資金を投入しなくてはいけないのです。

運転資金を理解する

ではなぜ無借金経営にこだわると却って成長スピードが遅くなるのでしょう?

それには初めに運転資金のことを理解しなくてはいけません。

運転資金とは、いわずもがな、事業を運営していくために必要な資金のことをいいます。

具体的には、次の計算式で運転資金を求めます。

・売掛金+在庫-買掛金

なぜこの計算式で運転資金を算出できるのか?そのメカニズムを簡単に説明させていただきます。

先述したように、ビジネス基本はお金の先出しで、その後に、販売、仕入れ支払い、代金回収と続いていきます。

販売できるまでの間は、商品は「在庫」され、販売から代金回収までの期間は「売掛金」となります。

これを逆に考えれば、たしかに「在庫」「売掛金」という資産は帳簿上にはありますが、実際の手元のお金は、在庫と売掛金に化けて「ない」ことになります。

お金に換わるのは、販売代金を回収したときです。

その一方、「買掛金(仕入れの支払代金)」は、帳簿上はマイナスの財産ですが、仕入れ先に支払いをするまでは、手元にお金が残っています。

つまり、手元にないお金(売掛金と在庫の合計金額)から、手元にあるお金(買掛金)を引いた金額が、実際に必要なお金、運転資金(正式には「経常運転資金」といいます)というわけです。

売上が増えても運転資金は減らない

そして経常運転資金は売掛金、在庫、買掛金の比率が変わらない限り減りません。

たとえば、500万円の売上げが2倍の1,000万円に増えても、在庫、売掛金、在庫の比率が同じであれば、経常運転資金も同じ比率で増えます。

仮に売掛金500万円、在庫500万円、買掛金が500万円だったとします。

このときの経常運転資金は500万円です。

・500万円+500万円-500万円=500万円

この構造のまま売上が2倍にもなっても、売掛金、在庫、買掛金が同じ比率で増えるなら、経常運転資金も2倍の1,000万円になります。

・1,000万円+1,000万円-1,000万円=1,000万円

これでは売上が増えても運転資金も同じスピードで増えるので、資金繰りは楽にならないことがわかります。

経常運転資金を減少させたいなら、売掛金・在庫を減らすか、買掛金を増やさないといけません。

それは運転資金を求める計算式からも明らかです。

・売掛金+在庫-買掛金

無借金経営が成長を遅らせる

以上のように、売掛金、在庫、買掛金の比率を変えない限り、売上げが増えると同様に運転資金も増えてしまうのです。

ということは、事業を成長させよとすれば、それだけ経常運転資金も必要になり、その分の資金を調達してこなくていけなくなるということです。

運転資金の不足分を、会社の自己資金や社長の資産だけでまかなえるのは、売上げ規模が小さいうちだけです。

売上が1億円を超える規模になってくれば、銀行などの金融機関からの融資を考えなくてはいけなくなります。

そのため、無借金経営にこだわっていると、却って成長スピードを遅らせてしまうことになるのです。

もちろん社長の経営方針が、自己資金だけで回せる規模で納めたいというのであれば、無借金経営にこだわることも悪くありません。

しかし、今以上に事業を成長させたい、というのであれば、無借金経営にこだわる意味はなく、むしろこだわるほど、事業が成長するスピードが遅くなる、事業を縮小せざるを得なくなるなど、逆方向に進むことになります。

ですから、事業を成長させたい、事業が一定規模以上になった、というのであれば、融資を考える必要が出てくるのです。

在庫をしないことで売上を失う

ちなみに、「先に注文を聞いて後で納品(現金取引で)のパターンならお金の先出しは必要ないだろう」というケースもあります。

たしかに上記パターンならお金の先出しは必要ありません。

しかし「機会損失」という、目に見えないところ売上をつくるチャンスを失っている可能性は高くなります。

どの経営者だって在庫をしたくないと考えていて、できれば売れることが確定した商品だけ仕入れて販売・代金回収をしたいはずです。

ですが、在庫がないことで販売チャンスを失うことがあるのも事実です。

仮に1個500円の昼食用のお弁当を100個作って、午前8時に開店、その2時間後の午前10時に完売したとします。

たしかに2時間で5万円の売上で万々歳となるかもしれません。

ただ逆に、2倍の200個を作っていれば、10万円の売上を獲得できたともとれるわけです。

もし原価率が50%となら、100個売った段階で利益はトントン、万が一100個が売れ残っても損はない計算です。

であるなら、売れ残りのリスクを負ったとしても、在庫を200個持って販売した方が機会損失を起こさず、なお儲かったということになります。

もちろん事業形態によりますが、注文を聞いてその分だけ販売するというのは、リスクを負わない分、得られるリターンも少なくなってしまうのです。

(クオリティの高い商品を作れる人は、受注して制作・販売という流れになりますが、人に依存ずるため大量生産はできません。それで商売が成り立つのは、独占販売による高リターンを得ているためですが、同質のものを作れる、例えばテンプレートかして販売できるなら、やはり機会損失を起こしていることになります)

まとめ

たしかに事業を運営するのに無借金経営は理想でしょう。

しかし自社や社長の個人資産に、運転資金をまかなえるだけの自己資金が不足しているのなら、無借金経営にこだわることでの弊害が出てきます。

自己資金が足りないなら、思い切って融資を受けてキャッシュを増やした方が、資金不足が解消され、事業の成長スピードが速まります。

繰り返しますが、融資を受けるか無借金経営にこだわるかは、社長の経営方針によりますので、金融機関からの借入を推奨しているわけではないのであしからず。

しかし、事業を成長させたいのであれば、借入を怖れることは足かせになります。

「借金=悪」という概念を取っ払って、積極的な融資を取り入れましょう。


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