会社の4つのライフステージで変わる法人保険の加入の仕方

人が生まれて成長して成熟して、最後は亡くなるように、企業にも、創業があって、成長し、やがて成熟期を経て衰退してくというライフサイクルがあります。

ただ企業の場合、人のように死や衰退というものを避けたいところですが、企業の、創業期・成長期・成熟期・衰退期では、直面するリスクがそれぞれ異なります。

お金の動く規模、取引先の数、従業員の数、設備投資の額など、創業期と成長期をとっても全く違います。

つまりリスクの備えて準備しておく法人保険もまた変わってくるのです。

保険は上手に見直せば、同じ保障でも安い保険料で備えることができます。

個人ではその時々のライフプランを見直して保険を加入しなおします。

それと同じように企業もライフステージによって見直しが必要です。

この記事では、会社の創業期・成長期・成熟期・衰退期の4つのステージで、どのような保険加入すべきか解説していきます。

保険は大事

ますはじめに、保険と聞くと毛嫌いする人も多いですが、少ないお金で大きなリスクに備えられるのは保険だけです。

社長がお亡くなりになった場合、自然災害で損失が出た場合など、金額が大きくなれば会社や個人の財産だけで賄うのは無理があります(仮に会社の資産で損失を補えても、資金繰りのダメージで致命傷を負うかもしれません)。

そんなもし万が一、まさかのときに役立つのが保険です。

たとえば社長が十分な死亡保障に備えずお亡くなりなった場合、銀行から口座を凍結される恐れが出てきます。

銀行が融資をしている場合、自身の債権と口座に残っている残高を相殺するためです。

取引に大打撃!会社の銀行口座が凍結された場合の解除方法は?

口座が凍結されれば、売上金の受領も資金の引出しもできません。

経費やその他の支払い・送金もできなくなり、業務に大きな影響が生じます。

十分な保険金があれば、少なくても支払いで業務がとん挫する心配はなく、当面は業務を続けられるにも関わらずです。

このような状況になれば、残されたご家族や従業員は途方に暮れることでしょう。

保険は契約時に約束したお金が必ず振り込まれます。

これは下手な金融機関や親せきを頼るより心強いことです。

自分のお金で自分の会社を守ること、それは社長の責任といっても過言ではないのです。

会社の4つのライフステージ別、法人保険の加入の仕方

創業期

創業期は何かとお金が掛かる時期で、しかも売上げも安定していません。

ですから創業期はなるべくお金を掛けないよう、掛け捨て型の保険します。

保険期間も長くなれば保険料が高くなるので、3年、5年、10年などの短期の更新型を検討します。

保障額は、会社を清算した場合でもプラスマイナス「0」の状態になる額にします。

必要最低限の保険料で、必要最低限の保障を買うイメージです。

保障額を決める際は、売上・経費・負債を基準に決めましょう。

一般的に、

「短期の借入金」+「買掛金」+「従業員の給料の3か月分」

が、その会社の所要運転資金といわれています。

社長が万が一のとき、所要運転資金分手元にお金があれば、とりあえずの返済や支払いは行うことができます。

つまり緊急性の高い支払いのお金なのです。

ですから、この金額をカバーできる保障額を設定します。

成長期

成長期には売上げも増えていきますが、それと同時に従業員の数も増えていき、着々と会社は成長していきます。

この時期は、今後の成長を見込みつつ、いざというときのために資金を積み立てておいたり、経営者の退職準備金や従業員の福利厚生の充実を図ります。

昨今は人手不足ですので、人材を確保するためにも福利厚生の充実をさせておきたいところ、良い人材ならなおさら待遇面での優遇が必要です。

加えて従業員や取引先が増えますし、事業拡大意欲が高く投資も積極的に行われるので、銀行からの借入も増えます。

経営者に万が一が起こった場合のインパクトは、創業期に比べどん大きくなります。

そのため、社長死亡という一大事でも事業が継続できるよう、事業保障をしっかり備えなくてはいけません。

また、先述した通り、経営者の退職金や従業員の福利厚生の充実を図ります。

具体的には

  • 社長・役員・従業員の退職金
  • 社長・役員・従業員の死亡弔慰金

を社内制度の一環として規定を定め、資金準備をはじめることを検討しましょう。

規定は役員と従業員で分けて作ります。

従業員の福利厚生を整えてなければ、人材確保もむずかしくなりますし、せっかく雇用したのに短期間で辞めてしまうことにもなりかねません。

有能な人材の確保と長期定着のためには、福利厚生制度の充実は欠かせない要素のひとつです。

会社の福利厚生が充実することは、社員の帰属意識や満足度を高めます。

退職金制度や弔慰金の準備など、社員が安心して働ける環境を整備することは長期的視点で大事な施策です。

なお、社長や役員が受取る退職金には、会社側で「損金にできる上限」があり、これを超えると税務調査で否認される可能性が飛躍的に高まります。

退職金規定を作るときは気を付けましょう。※個人側には退職金の上限はありません。

退職金の損金計上額について詳しくは下記記事をご覧ください。

成熟期

成熟期には右肩上がりだった売上げも、成熟期には横ばい傾向になります。

財務を見直し、無駄な借入はなくし、資金繰りの改善に取り組んでいきましょう。

社長は運転資金が不足すれば、会社存続のために、個人資金を会社に差し入れざるを得ないこともあります。

これを役員借入金といいますが、この会社との貸し借りも、安定した利益があるうちに清算しておく必要があります。

なぜなら、役員借入金をそのままにしておくと、社長がお亡くなりになったときに相続財産となり、ご遺族に多額の相続税が発生することがあるからです。

会社との貸し借りは、役員借入金だけでなく、役員貸付金も含まれます。

むしろ役員貸付金の方がタチが悪く、この勘定科目がある場合は必ず解消しておきましょう。

役員貸付金・役員借入金があるのであれば、保険を使った解消法を検討するのもいいでしょう。

話が逸れましたが、資金繰り改善の一環として支出を見直す際、保険も当然ながら見直すことになるでしょう。

そのときにやってはいけないのは、無駄だからとすべての保険を解約してしまうことです。

保険は、社長・役員・従業員を万が一から守ってくれる商品ですから、簡単に火薬すべきものではないのです。

仮に解約でもしてしまうと、社長の年齢や健康状態によっては再度加入できないこともあります。

保険料の支払いが苦しい場合でも、掛け捨て型の定期保険に加入したり、「払い済み」や「延長」といった方法を活用しましょう。

事業承継対策をはじめる

また社長の年齢によっては事業承継を考えなくてはいけなくなります。

中小企業の社長は、資産が事業用資産ばかりで、現金が少ない場合があります。

これでは事業を承継する後継者が相続時の納税資金や自社株の買い取り資金に困ることになります。

そこで後継者が困らないよう、事業承継策をはじめる時期です。

事業承継時に現経営者の退職金は、必ず利用しなくてはいけないツールになりますので、しっかり規定を作って準備しておきましょう。

また、生命保険を使えば、低い税率で後継者にお金を移転することができます。

事業承継対策に生命保険の利用は必須です。

衰退期

衰退期は、ライバルの参入も多く、売上は横ばいや右肩下がり、利益も取りにくくなっていきます。

業績が悪くなればボーナスの支給などにも影響します。

それが原因で従業員の士気が下がって負のサイクルに入ってしまうこともあるでしょう。

資金繰りが本格的に厳しくなれば、経営者が自己資金を会社に貸付せざるをえない状況もあります(役員借入金が発生したら、どこかの段階できちんと解消しておきましょう)。

そのため、無駄な保険の見直しは必須です。

複数の保険に入っている場合には、保障の重複がないか確認し、重なっているのものは解約を検討します。

それ以外にも、保険の「種類」で保険料に違いが出ます。

たとえば死亡保障なら、同じ保障額でも、積み立てがある終身保険より、掛け捨て型の定期保険の方が、基本的に保険料を抑えることができます。

また業績が極度に悪くなっている場合は、解約返戻金があるタイプの保険(とくに節税型保険)を解約して資金繰りに充てることも考えましょう。

業績が悪く赤字なら、保険を解約してお金が雑収益に計上されても、法人税は課せられない可能性もあります。

ただし先述した通り、むやみやたらに解約するのではなく、必要な保障はきちんと押さえておく必要があります。

そこで、保険料は抑え保障のみ残したいときは、「払い済み」や「延長」を検討します。

これは、保険料を支払っていくのはきびしいが、先々のことを考えて保障を残したいという場合に有効な方法です。※上記の手続きをすると特約は消滅するので注意が必要です。

あるいは現在契約している生命保険の保険金額を減額するという方法もあります。

減額は保険料の払い込みは継続しますが、減額した部分の保障は解約と同じ取扱いになり、以後の保険料は少なくなります。

このような見直し方法を採り、必要な保障のみを残し、保険料を安く抑えるようにします。

事業承継時

ここで事業承継時の保険の加入の仕方についても解説しておきます。

中小企業の経営者の多くはオーナー経営者です。

保有資産の多くを自社株や不動産といった現金に換えずらい資産が占めていることが多く、相続時にさまざまな問題を起こす可能性が高いです。

たとえば

  • 相続税の納税資金を捻出するために、不動産を売却せざるを得ない
  • 後継者に渡すべき自社株を換金しないと現金が用意できない
  • 代償分割がうまくいかず、争い(いわゆる「争続」)になってしまう

などです。

こうしたリスクを回避し、事業承継を円滑に進めるためには、相続税を後継者が支払うための資金を準備できるかが大きな課題となります。

また、業績が好調で過去の利益が貯まっている会社の場合、自社株の価格が高くなっています。

そんなケースでは、後継者に事業承継を行う場合、贈与・相続・譲渡のどの方法を行うにせよ、多額の税金が発生してしまいます。

そのため、納税資金の準備と共に、株価の引き下げ対策も必要になります。

納税資金と自社株対策、事業承継時に必ず付きまとう問題を解決するには、生命保険は必須のツールです。

しっかり活用して、円滑な事業承継に役立てましょう。

まとめ

企業の、創業期・成長期・成熟期・衰退期・事業承継時の保険の見直し方について解説しました。

保険の加入の仕方は一律ではなく、その時々のライフステージによって変わるのは、人も企業も同じです。

きちんと見直して、万が一のときにご家族や従業員、取引先など、会社の関係者が困らない保険に加入しておきましょう。