無駄な保険料をなくす法人保険の見直し5つのステップ

保険の見直し

2019年に行われた法人保険の税改正により、法人保険での節税は封じ込まれました。

もともと法人保険には税の繰延べ効果しかなかったわけですが、今回の税改正で少なくても「短期的」な節税効果は見込めなくなりました(とはいえそれでも繰延べ効果しかないのは同じですが)。

「残念だ」との声が聞こえてきそうですが、しかこれは見直しのチャンスです。

そもそもが法人保険に節税効果はないのですから、節税保険を見直し、無駄な保険料を抑えて資金繰りを改善する機会です。

この記事では最適な法人保険の見直し方について解説します。

法人保険の見直し3のメリット

ここであらためて法人保険を見直すメリットをみていきましょう。

法人保険の見直しは「面倒」と思われるでしょうが、メリットを見れば重い腰も上がります。

メリット1・手元のキャッシュが増える

法人保険の見直しをすることで、無駄な保険料の支出が減るわけですから、その分手元のキャッシュが増えます。

さらに節税保険で積み立てを行っていた場合、解約返戻金が貯まっていますので、解約でこのお金が返ってきます(ただし大方は払い込んだ保険料より少ない)。

毎月の保険料は減り、解約返戻金が返ってくるので、会社の資金繰りは良くなります。

もっとも節税タイプの法人保険の解約返戻金は、解約時に益金として課税されますので注意しましょう。

メリット2・保険料が安くなる

保険商品は年々新しくなって、同じ保障でも昔に比べ安くなっていることもあります。

同じ保障でも別の保険商品なら、以前は年間保険料が100万円だったものが、90万円になることもあります。

保障が同じ内容なら、これぞまさに保険の無駄というものです。

保険の見直しで保険料の支出を安くできます。

メリット3・リスクの再検討ができる

会社のステージもその時によって変わるように、保険の保障も会社の置かれた状況で変わります。

たとえば事業が小さい内なら、それほど大きな事業保障は必要ないでしょう。

しかし事業が成長し、取引先や借入が増えているのなら、万が一の事業保障も大きな額が必要です。

また、事業承継時であれば、株価対策や後継者への相続税の納税資金対策などの保険が必要になります。

このように必要な保険(保障や対策)は、会社のステージによって変化します。

法人保険の見直しは、そのリスク対策を見直す良い機会なのです。

法人保険の見直し5つのステップ

自社に合った最適な法人保険プランにするための5つのステップをご紹介いたします。

ステップ1・現在の保険内容を確認する

はじめに、現在加入中の保険がどんな内容かを確認しましょう。

保険の内容(保険の種類・保障内容・保険期間・保険料など)は、保険証券に記載してあります。

とはいえ慣れない人には難しい言葉が並んでいてよくわからないかもしれないので、その場合は、契約した保険営業マンや保険会社に確認してみましょう。

具体的には次のことを確認します。

法人保険の見直し内容
  • 支払い保険料:いくら支払っているか?
  • 保険期間:いつまで保障期間なのか?
  • 保障内容:どういう場合にどんな保障を受けられるか?
  • 被保険者の確認:誰が保障の対象になっているか?
  • 保険金受取人:誰が保険金を受け取るか?
  • 損金性:損金として算入できる割合
  • 解約返戻金の有無:解約したらお金は返ってくるか?
解約返戻金がある場合
  • 解約返戻金の額:解約返戻金があれば、解約したときにいくら返ってくるか?
  • 解約返戻金のピークの時期:解約返戻金のピーク(最も返戻金が高くなる時期)はいつか?
  • 解約返戻金のピークの期間:解約返戻金が高くなる期間はどれくらいか?

上記は法人保険を見直すうえで大事な情報です。

とくに節税型の保険の場合、解約返戻金の情報は重要になります。

面倒でもしっかり調べましょう。

ステップ2・加入した目的を確認する

保険の内容を確認したら、次はどんな目的で加入していたか整理してみましょう。

法人保険に加入する目的は、主に次の内容になります。

  • 事業保障(経営者がお亡くなりなったときの保障)
  • 従業員の福利厚生
  • 事業承継対策(株価引き下げや納税資金対策)
  • 資産運用
  • 節税目的の積立て

上記の保険加入目的と照らし合わせることで、

  • 保障が足りてない
  • 保障が多すぎる
  • 節税保険のピークが過ぎようとしている
  • 事業承継対策ができてない

など気づくことが出てきます。

保障が不足していれば保障を付け足す必要がありますし、逆に不要な保障があれば減らすことで、現在必要な適正な保険料に近づけることができます。

迷ったときは以下の質問を自分に投げかけてみてください。

  • その保険は目的に合った機能があるか?
  • 今または将来にその保障は必要か?

何のために加入した保険か、その目的を整理してみましょう。

ステップ3・本当に必要なものを考える

既契約の法人保険の、保険内容と保険の加入目的を再確認したら、次はその保険が自社にとって必要かを考えましょう。

秋の場合は無駄な保険料を支払っている可能性が高く、見直しが必要です。

  • 必要のない保障に入っている
  • 割高な保険に加入している
  • 節税になってない(出口対策ができない、出口体策が当初の計画とズレてきている)
  • 節税を意識しすぎて資金繰りが悪くなっている

既契約の法人保険が適正かどうかは、さまざまな面からシミュレーションしてみる必要があります。

下記に法人保険(とくに節税型保険)の見直しのヒントをお伝えしておきます。

1・解約返戻金

節税型の法人保険に加入しているのであれば、解約返戻金のピークをみてみましょう。

解約返戻金のピークを過ぎているのであれば、解約するタイミングです。

節税型の法人保険の特徴は、その名の通り節税に照準を合わせていますので、出口対策となる時期がピークと重なり、その時期を過ぎると後は解約返戻金は下がり続けます。

そして最終的には、解約返戻金は0円になります。

事業保障ならもっと安い保険がありますので、ピークを過ぎた節税型保険に加入するメリットはなくなります。

主な節税型法人保険
  • 長期平準定期保険
  • 逓増定期保険
  • 全額損金定期保険
2・保険料が資金繰りを圧迫している

節税保険にありがちですが、節税という名に惑わされて不要な保険に加入していることがあります。

それが負担にならい程度の保険料ならまだよいですが、保険料が高額になって資金繰りを傷めているのなら本末転倒です。

節税は手元キャッシュを最大化するためのものであって、節税のために手元資金が減ってしまっては意味がありません。

繰り返しますが、節税型の保険は繰延べ効果しかなく、さらに解約返戻金も100%を割込むので、ほとんどの商品は損して返ってきます。

節税法人保険に加入しないで、銀行に定期積立した方がよっぽど良いくらいです。

そんな節税であって節税でない、しかも損する商品なら加入する意味ないでしょう。

2019年の税改正が良い機会です。

節税効果のない保険なのですから、この際、節税とは切り離して、本来の事業保障で加入を考えるべきです。

その方が支払い保険料も減って、手元資金が増えて資金繰りが改善します。

さらにいえば、融資が必要な企業なら、保険の解約で決算書の改善効果を意識すべきです。

ステップ4・必要のないものは解約をする

必要のない保険は解約しましょう。

むやみやたらに保険を解約していいものではありませんが、無駄な保障や意味のない節税保険はきっぱり解約すべきです。

解約返戻金のある法人保険の場合、支払った保険料より戻って来るお金(解約返戻金)は少なく損切りに躊躇されるかもしれません。

ですが、無駄な保険料をそのまま支払うことそこ、金銭的デメリットは大きいです。

勇気をもって解約することをお勧めいたします。

ステップ5・加入し直すときは有利な保険で

法人保険の見直しは、複数社見積りを取って比較しましょう。

同じ保障でも現在と過去では保険料が安くなっている場合もありますし、保険会社によっても保険料は異なります。

たくさんといわないまでも、数社は見比べてみて少しでも保険料の安いものを選びましょう(もちろん保障内容がほぼ同じでという意味です)。

とくに保険料の支払いは資金繰りに影響しますので、保険料と解約返戻金は十分検討しましょう。

保険料

保障が充実しているに越したことはありませんが、保険料が負担になるようでは意味がありません。

支払いが負担にならない範囲で保険料は収めましょう。

解約返戻金

保険には掛け捨てタイプもありますが、解約返戻金があるタイプは、

  • いつ
  • いくら戻って来るか
  • ピークの期間

をきちんと把握します。

せっかく戻って来るお金があるわけですから、損しないように確認を怠らないようにしましょう。

節税型法人保険を有効にするためには

ここで多くの見直し対象となる節税型法人保険について簡単に解説しておきます。

節税型法人保険には繰延べ効果しかありませんが、出口対策があれば節税効果を享受することができます。

節税保険は入り口では保険料を損金(全額・1/2・1/3・1/4)にできますが、解約すれば解約返戻金が益金に計上され、そこで繰り延べた利益に対し一気に課税されます。

そこで、その益金に対し大きな損金をぶつけて、その益金の利益を消すというわけです。

この入り口から出口まで対策することで、はじめて節税保険を活用できたことになります。

出口対策として主に使われるのが

  • 役員退職金
  • 建物などの修繕費用

などです。

このような大型の支出を損金に計上して、法人保険の解約返戻金の益金と相殺します。

仮に1000万円の解約返戻金が返ってくるのなら、設備投資で1000万円の損金を作ればプラスマイナス0で法人税も発生しません。

節税保険の問題点

節税型法人保険で節税効果を享受するには、入り口から出口までしっかり設計する必要があります。

しかしここに罠があります。

それは「現実が計画通りにはいかない」ということです。

たとえば社長の役員退職金用に法人保険に加入していた場合です。

加入当初の計画では、仮に10年後なら10年後に社長が退職し、法人保険の解約返戻金のピークも10年後に来るようになっています。

ですが、10年後の事情は現状からではわかりません。

後継者が育ってない、後継者を見つけられなかったなどの理由で、社長を続けざるを得なくなっているかもしれません。

第一、社長の気持ち自体変化しているかもしれません。

今は10年後には引退したいと思っていても、いざその時になってみればやはり引退したくないと考えているかもしれないでしょう。

このように現実は思う通りにいかないものです。

それは修繕や設備投資でも一緒です。

保険の解約時期に振り回される

そして会社の経営は、現実の事情に合わせるべきであって、法人保険の解約時期に合わせるべきものではありません。

にもかかわらず、法人保険の解約返戻金のピークは来てしまうわけで、何のための当初の計画だったか、という話になります。

それならわざわざ繰延べ効果しかないものに加入して、自ら縛りを受けるのはナンセンスです。

結局納める税金が一緒であれば、事業計画に制限を受けないよう銀行で定期積立をしておく方がよっぽど賢い選択です。

法人保険の解約返戻金があるから、損金を作るために無理やり設備投資するというのも、経営の選択として明らかに間違いです(設備投資の場合、 長い年月をかけて償却する資産になってしまうので、その期に一度に経費になるわけではありません。その結果、法人税を課税されてしまいます)。

節税型法人保険の問題点は、繰延べ効果しかないこと、ピークを迎えても解約返戻金は支払い保険料を下回ること以外に、保険の解約時期に振り回されることもあるのです。

法人保険の解約時に注意すること

法人保険を解約するときは、何度も説明しましたが、解約返戻金が益金に計上されますので、何も対策をしないとその金額に法人税が課せられます。

とくに出口対策を用意してなかった場合でも、2019年の税改正前なら、あらたな節税保険に加入してそのまま繰り延べていく方法を採ることができました。

しかし2019年の改正で、それをしても効果はなくなりました。

出口対策がなく法人保険も使えないとなると、オペレーティングリースなどの別の節税対策で繰り延べていけば、課税を免れることができますが、これを機会に、本当に節税することがベストの選択なのかきちんと検証してみるべきです。

まとめ

無駄な保険料をなくす法人保険の見直し方について解説してきました。

法人保険の節税効果は2019年の税改正で見込めなくなりました。

むしろこれをチャンスと捉えて法人保険の見直しをし、無駄な保険料を削減していただきたいです。

その方が会社のキャッシュフローと決算書の数値は改善し、経営的にはプラスに働くことが多いです。

節税は基本利益を削る行為なので、会社の経営に支障がない基準を満たしてから始めるべきです。

法人保険を見直し無駄な保険料をなくせば、会社の資金繰りは楽になります。

節税に振り回されないよう、自社の法人保険を見直して、無駄のない法人保険に加入しましょう。

関連記事

この記事へのコメントはありません。

マニュアル・書籍


最近の記事

  1. 最高裁の判例から考える誤魔化しの残業代は通用しない時代

  2. 就業規則にない事由で従業員を懲戒処分にはできない

  3. 髭や金髪はあり?!社員の身だしなみはどこまで制限できるか?

  4. 業務命令を拒否する社員を業務命令に従わせることはできるか?

  5. 定められた手続きを踏まない36協定は無効になる

  6. 能力のない社員を解雇できるか?判例から読み解く解雇前に必要な準備

  7. 連帯保証解除に無借金と節税が「妨げ」になる理由

  8. 自宅謹慎を命じた社員の「謹慎中の賃金」は支払わなくてはいけないか?…

  9. 懲戒解雇・競業避止で社員の退職金は減額・不支給にできるか?

  10. 不祥事を起こした社員の退職金は損害賠償と「相殺」できるか?