2020年以降、資金調達能力を上げないと会社が生き残れない理由

人件費対策 財務改善

社会保険料の負担、消費税の10%増税と続き、人手不足による人件費高騰、同一労働同一賃金と、会社にキャッシュが残らない環境は今後ますます加速していきます。

これを売上だけで乗り切れる企業は、そう多くないと思われます。

企業が厳しい環境を生き抜くには、資金調達能力がこれまで以上に必要です。

社会保険料という強制徴収の固定費

すでに実感されていると思いますが、社会保険料の負担は重いです。

社会保険料の料率は2020年1月現在、労使合わせて約30%です。

企業側はこのうち半分を負担しなくてはいけませんので、社会保険料は支給した給料の15%にもなります。

月給20万円の社員が10人いれば、毎月30万円、年間で360万円の会社が負担しなくてはいけません。

・20万円×15%×10人×12か月=360万円

しかも社会保険は利益の赤黒に関係なく発生します。

これは固定費の増大ですので、企業の利益を直撃し、利益が同じなら資金繰りは苦しくなります(しかも社会保険は強制徴収です)。

預かり税の消費税が資金繰りを苦しめる

そこにきて2019年10月には、消費税が10%に増税されました。

消費税は預かり税なので、これもまた利益に関係なく支払わないといけないお金です。

右から左に流すお金なら負担は関係ないように思えますが、お金には色がありませんから、手元にお金があればそれが消費税分だとしても、人件費やら仕入れやらで、いつの間にか消えてしまい、いざ消費税の支払いの段になると、納税資金が足らないということになります。

これは消費税増税前からあったことですが、8%から10%に増税されると、用意しておかなくてはいけないお金も2%増えることになり、その分負担感が増すというわけです。

人件費高騰と同一労働同一賃金のダブルパンチ

上記に加え、人手不足による人件費高騰と同一労働同一賃金もはじまります(同一労働同一賃金は中小企業は2021年4月から)。

人手不足の中、人材を確保するには、賃金を上げて他企業より好条件を提示することは避けられません。

優秀な人を雇うならなおさら賃金アップは必要です。

そして賃金が上がれば、それに伴い社会保険もアップします。

さらに2021年4月(中小企業の場合)から同一労働同一賃金がスタートします。

これは同じ労働なら正規社員と非正規社員に「不合理な待遇差をつけてはいけない」という制度です。

同一労働同一賃金はつまるところ

  • 正社員の給与を下げて非正規社員の給与に合わせる
  • 非正規社員の給与を上げて正社員の給与に合わせる

の2通りになります。

※このほかにも外注化するという方法もありますが、ここでは触れません。

上記2つのうち、同一労働同一賃金によるコストアップを避けるには、正社員の給与を非正規社員に合わせることになりますが、正社員の給与を下げることは、法律が簡単に許してくれません。

そうなると、非正規社員の給与を正社員に合わせるという方法を採らざるを得なくなります(無理やり正社員と同じ仕事でないといい張ることもできますが、非正規社員から訴えられるリスクがあります、さらに敗訴する可能性も高いです)。

人手不足で上がった賃金に、同一労働同一賃金で人件費は一段かさ上げされる。

これすなわち、今の利益と同じなら、資金繰りは悪化することを意味します。

資金調達能力が企業の存続を決める

会社の存続はお金のあるなしで決まります。

お金がなくなれば、否が応でも事業はストップします。

それゆえ会社を存続させるには、キャッシュを調達する能力は必須です。

しかもこれからは、社会保険の負担がのしかかり、消費税は増税され、人手不足による人件費の高騰、同一賃金同一労働のスタートと、企業にキャッシュが残りにくい環境になりつつあります。

このコストアップによる資金不足を売上だけで賄える企業はそう多くはなく、やはり大半の企業は、資金調達を考えざるを得なくなるでしょう。

つまり、今後企業が生き残っていくには、今以上に資金調達能力を問われることになるのです。

無駄な節税はやめる

資金調達能力を上げるためには、基本、財務改善を行って、決算書のスコアリングを上げなくてはいけません。

それには無駄な節税をして、無用に利益を削ってしまうのはいただけません。

節税と融資は相反する行為で、節税を優先させれば、決算書の数値は悪くなります・

反対に、節税をやめて1円でも利益を出すことを考えれば、決算書の数値は良くなります。

銀行が節税を嫌うのもそういうわけで、融資を行う上で不利な決算書になってしまうためです。

ですから、税金を支払っても毎年利益剰余金を出して、銀行が好む決算書にする必要があるのです。

もっとも、社会保険の負担、消費税10%増税、人手不足による人件費高騰、同一労働同一賃金と続けば、利益を残したくても残せない状況になり、節税どころの話ではなくなるかもしれませんが。

まとめ

社会保険の負担、消費税10%増税、人手不足による人件費高騰、同一労働同一賃金と、今以上に企業の資金繰りは悪くなります。

その資金不足を、売上だけで賄うのは無理があります。

やはり金融機関からの資金調達を視野に入れなくてはいけません。

つまり、今以上に資金調達能力が企業の存続に関わるようになるのです。

御社ではその準備はできていますか?

できていなくても支払いは待ってくれません。

金融機関から融資を引き出せる体制を、きちんと準備しておきましょう。

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