事業を行っていれば、大きな設備資金が必要なときがあります。
最新設備で利益向上を図りたいとき、ITによる新システムの導入など、売上アップや収益性改善には設備投資は欠かせません。
しかし投資を行うにも、「いくらまでなら大丈夫か?」を考えてしまうものです。
自社の財務状況に見合った借入額、つまりは適正額でなければ、借入の支払いに困るようになります。
銀行は「貸します。借りてください」というが、それをそのまま信じてしまってもよいものかどうか、やはり経営者としては借入れの目安となる基準が知りたいところです。
この記事では、銀行から借入を行って投資を行う際の、数字から見る判断基準を解説していきます。
設備投資の2つの判断基準
自社がどの程度まで資金調達できるかの判断基準は2つあります。
1つは、債務償還年数。
もう一つは、自己資本比率です。
これは銀行が融資の実行を判断する基準でもありますが、会社が実際の投資判断をするときにも使える指標です。
1.債務償還年数
債務償還年数とは、現在借りている全額を、毎年の利益(フリーキャッシュフロー)で返済した場合、何年で返せるかを見る指標です。
計算式は次の通りです。
・債務償還年数=(有利子負債-(売上債権+棚卸資産-買入債務)-現預金等)÷(経常利益+減価償却費-税金等)」
※債務償還年数はいくつか計算パターンがあります。上記はその一例です。
債務償還年数は短ければ短いほど、会社の「返済能力が高い」ことを表します。
つまり、毎年稼いで手元に残るキャッシュが多いため、借入を余裕で返済できるということです。
銀行の基準では、債務償還年数が10年以内に収まると適正範囲とみられます。
債務償還年数などというと小難しく聞こえますが、「投資したお金を何年で回収できるか?」ということです。
たとえば、次の条件の場合
- 設備投資に伴う借入:2億
- 設備投資後の税引き後利益:2500万円
設備に投資したお金は8年で回収できることになります。※このケースでは減価償却費を考えない
反対に債務償還年数が長いと、「返済能力が低い」、逆にいえば「借り過ぎ」ということになります。
債務償還年数が長くなるのは
- 毎年稼ぐ利益が少ない
- 利益に対して借入が額が多すぎる
の2つが原因です。
先の銀行の基準で考えると、設備投資に必要なお金が既存の借入を含め債務償還年数が10年を超えるようだと、投資の適正値を超えてしまっているという判断になります。
実際に、毎年稼ぐ利益が少なく、それでいて借入額が増大すれば、支払い利息は増えて、元本の返済も大きくなります。
こうなると、資金繰りが苦しくなることは目に見えてわかります。
経営者なら、新たな投資に慎重にならざるを得なくなるでしょう。
債務償還年数を適正値内に収めるには
- 設備投資の金額を債務償還年数が10年内になるように抑える
- 毎年稼ぐ利益(税引き後の手元に残る利益)を大きくする
- 既存の借入を減らしてから投資を行う(つまり現状は無理ということ)
ということを考えなくてはいけません。
2.自己資本比率
自己資本比率とは、簡単にいうと会社の体力を表します。
自己資本比率は、総資本に対して自社で用意できる返済不要の資本が何%あるかを示す指標なので、自己資本比率の割合が大きくなるほど、返済余力が大きく安全性が高いといえます。
・自己資本比率=自己資本÷総資本
中小企業であれば、10%を維持しておきたいところです。
つまり、設備投資後の自己資本比率が10%を下回るようなら、借入が多すぎることを表します。
一方、自己資本比率が小さければ、借入に依存した経営体質を示し、会社の「返済能力は低い」ということになります。
そのため、そもそもの資金調達能力も低く、設備投資のお金を銀行から借りられるかも危うくなってきます。
危ない投資を見抜く2つの目安
設備投資を行う際は、設備投資ごとの収益性を見ていくことはもちろんですが、会社全体として
- 債務償還年数は適正値内か(目安は10年内)
- 自己資本比率は安全圏内か(目安は10%以上)
という2つの基準で判断することが重要になります。
これなら、銀行にいわれるがままに借りたり、勘頼りの危ない投資にならずに済みます。
まとめ
設備投資は多額の投資になります。
投資の失敗が、そのまま会社の財務を直撃します。
そのなリスクを伴うものですから、しっかりした基準を持って設備投資を行うべきかどうか判断するに限ります。
設備投資を行う際は、
- 債務償還年数
- 自己資本比率
の2つを判断基準にしてみてください。
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