「資金繰りが苦しい」
売上はあるのに、利益はあるのに、なぜか月末になると資金繰りがキツくなる、こんな思いをされているのなら、それは「売上病」に罹っているかもしれません。
売上を上げるだけでは資金繰りは改善しない、このように認識を改めないといつまで経っても資金繰りは改善しないです。
あなたは売上病に罹ってない?
月末になると資金繰りが苦しくなる、そうした状況になると、売上をアップさせたら解決するのでは?とお感じになる社長もいらっしゃるでしょう。
売上アップをすれば資金繰りはとにもかくにも解決できる、そう思い込むことを俗に「売上病」と呼びます。
しかし安易な売上アップは、たとえ売上が増えたとしても、余計に資金繰りを苦しくしてしまうだけで、資金繰り改善効果はありません。
とくに短期となると、弊害の方が大きくなります。
では、なぜ売上をアップをしても、肝心の資金繰りは改善しないのでしょう?
売上アップには先行投資がかかる
まず売上アップを行うには、投資資金が必要です。
新商品を販売するなら、あらたに商品を仕入れなくてはいけませんし、場合によっては設備投資が必要になります。
さらに売上を増やすための、人件費も投入しなくてはいけません。
売上を作れるのは、これらの先行投資があってこそ、です。
ですから、仮に売上アップに成功したとしても、短期的には余計に資金繰りはキツくなってしまうのです。
売上アップで会社の資金繰りはガタガタ
先行投資をきちんと利益計画を立てて行う分には、既存のビジネスで儲けたキャッシュで回していくことができます。
その結果、売上が増えても資金繰りが苦しくなることはありません。
しかし、急場凌ぎや安易な売上計画で、利益のシミュレーションも行わず、先行投資を実行すればどうでしょう?
- 人件費・設備投資の増加で固定費が増え、利益が以前より少なくなる
- 人員があらたな部門や店舗に分散され、労働生産性が下がってしまう
- 新商品の在庫が増える
- 目の前の資金確保のため、利益の少ない仕事でもやむなく請け負ってしまう
- 思うように売上げが増えない
と、売上アップ前より、会社の財務状況は往々にしてガタガタになってしまうのです。
会社が、資金繰り改善効果を狙って、売上アップを狙うことはよくあることです。
また、新たなことに挑戦していかなければ、企業の成長が止まり、やがて衰退してしまうという、宿命のようなライフサイクルもあります。
ですが、売上を増やせば何とかなるという「売上病」に罹った社長は、自社を支える財務基盤がどうなっているかを確認することなく、ただただ突っ走ってしまうのです(わからないから目をつむったままともいえます)。
その結果は上記でお話しした通りです。
大事なので繰り返しますが、売上アップを図るときは、先行投資の結果、自社の財務状態がどうなるかを把握しながら行わなくてはいけないのです。
それには、
- 損益計算書だけでなく、貸借対照表も含めた事業計画のシミュレーション
- 試算表によるタイムリーな自社の財務状況の把握
- 月ごとの資金繰り表によるキャッシュの管理
などが必要になってきます。
売上アップより先に取組むべき資金繰り改善策
資金繰りの苦しい企業は、売上アップの前に、自社の「運転資金」の見直しと、経費削減に取り組む方が先です。
経費削減に取組むべきなのは、いわずもがなのことです。
取組めば、その月のうちに手元キャッシュを増やす効果を得られます。
そしてもう一つ、資金繰りを改善するには、運転資金の見直しが効果を発揮します。
運転資金とは、仕入れから販売してキャッシュ化するまでに必要な資金のことです。
現金仕入れ、現金販売というシンプルなビジネスモデルなら、それほど運転資金について考えなくておよいですが(しかし、このビジネスモデルも仕入れを買掛にすれば、資金繰りはグッと楽になります)、一般的なビジネスでは、仕入れは買掛、販売は売掛、在庫についても、ある程度はストックしておなかなくてはいけない、というのが普通です。
そうなるとそこに
- 販売から現金化までのタイムラグ
- 商品を仕入れてから販売までのタイムラグ
- 商品を仕入れてから仕入れ代金を支払うまでのタイムラグ
というものが生まれてきます。
このタイムラグに生じる資金こそが運転資金です。

売掛金と在庫は自社の資産ですが、手元にないお金のことです。
その反対に買掛金は取引先に支払わなくてはいけない負債ですが、支払うまでは手元に残るお金です。
つまり、手元にないお金(売掛金と在庫の合計額)と、手元にあるお金(買掛金額)の2つの差額が、事業を回していくのに必要となる運転資金というわけです。
・必要運転資金(経常運転資金)=売掛金+在庫-買掛金
運転資金を見直すと資金繰りが改善する理由
運転資金とは、売上を作るために必ず必要となるお金ですから、売掛金・在庫・買掛金の比率が変わらなければ、売上が増えたとしても資金繰り改善効果は見込めないのです。
逆にいえば、売掛金・在庫と買掛金の比率を変えることができれば、同じ売上でも資金繰り改善効果は劇的に上がります。
・売掛金・在庫→少なくする
・買掛金→多くする
要は、手元にないお金の額を少なくし、手元にあるお金を増やせば、手元資金は増えるでしょ、という単純な話です。
したがって、資金繰り改善を行いたければ、売上アップより前に、運転資金の見直しをしなくては意味がないのです。
まとめ
売上げアップをすれば、資金繰りが改善できるというのは幻想です。
それは社長が「売上病」に罹っている証拠です。
やみくもに売上アップをしても、実際は資金繰り改善効果はそれほど見込めないです。
それは、売掛金・在庫・買掛金の比率を見直してないために起こる現象です。
売上げアップで資金繰り改善を行いたいのなら、それと同時に
- 売掛金・在庫を減らす
- 買掛金を増やす
という運転資金の見直しこそが、早急に必要になります。
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