会社の売上の規模が大きくなれば、それに比例して事業を回すための「運転資金」も大きくなります。
仮に運転資金が1億を超えてくるようになれば、足りないからといって、社長の個人資産から賄うことはむずかしくなります。
しかし銀行から融資を受ければ、通常社長は、会社の借入の個人保証をしなくてはいけません。
そこで万が一会社が倒産するような事態になれば、保証人となった社長は、それこそ家屋敷まで失ってしまいます。
そんな最悪のケースを避けるためには、借入の保証人から、社長を外してもらうことが必要になるわけですが、そのためには会社の財務状態が銀行が求める基準値以上にならなくてはいけません。
その基準値以上にするためには、無駄な節税は止めて、利益を大きくすることを考えなくてはいけないのです。
会社はそのときの規模によって、何を優先するかの順位度は変わってきます。
会社の売上が大きくなると社長の個人資産ではまかないきれない
会社の売上が大きくなれば、それに伴い運転資金も大きくなります。
運転資金とは、通常の営業活動で必要となる資金で、仕入れ資金や諸経費の支払いに使う資金のことをいいます。
運転資金を求める計算は次の通りです。
・売上債権(売掛金・受取手形)+棚卸資産-買入債務(買掛金・支払い手形)
この計算式を見ればわかるとおり、在庫を持たないビジネスや現金が即入金されるビジネスは、必要な運転資金も少なくて済みますが、BtoBビジネスのような売掛や在庫が必要なビジネスの場合、売上の増加に比例して、売掛金・在庫・買掛金の比率が変わらない限り、運転資金も増大していきます。
たとえば、売掛金2億、在庫3億、買掛金1億8千万円の事業の場合、運転資金3億2千万円必要ということになります。
この規模になってくると、運転資金が足りないからといって、社長が個人マネーで簡単には補てんできなくなります。
そうなると、必然的に銀行からの融資が必要になります。
連帯保証人というどデカいリスク
しかし銀行から会社が融資を受けるには、通常社長に個人保証を求められます。
会社の借入の個人保証をすると、社長が個人で借りたも同然ですから、会社が万が一倒産でもすれば、社長自身が債務を弁済しなくてはいけなくなります。
そうなれば、社長は個人資産を売却して返済せざるを得ないでしょう。
それこそ事業の失敗で、すべての財産を失いかねません。
となると、事業規模が大ききなってくると、会社の借入の連帯保証人になっていることが、すでに大きなリスクとなっているのです。
であるなら、社長の個人資産を守るためには、「銀行からの借入の個人保証を外すこと」が、優先順位として上になってくるでしょう。
社長が連帯保証を外すには?
とはいえ、銀行も金貸しです。
おいそれと、「では、社長の個人保証を外します」とはなりません。
銀行が何より心配なのは、貸したお金が確実に回収できるかです。
その証左となるのが、決算書です。
決算書の数値が基準値以上であれば、「この会社なら安心」ということで、連帯保証人を外してくれる交渉のテーブルに乗ってくれるのです。
その基準値となるのが、融資の際に用いるスコアリングシートで、この得点が65点以上といわれています。
節税で社長が個人資産を失う理由
スコアリングシートの点数を上げるためには、貸借対照表の純資産を増やし、損益計算書の税引き後利益を大きくしなくてはいけません。
要は、毎年よく儲けて、その利益をたんまり貯めている会社なら、倒産リスクも低い上、万が一財務状況が傾いても、貯めた資産から弁済してもらえるよね、という話です。
そのためには、節税で利益を削っていては、いつまで経っても会社にお金が貯まりません。
会社の財務状況をよくする(つまりスコアリングシートの評価を上げること)には、節税を止めて、税金を支払ってでも、毎年の利益剰余金を大きくしなくてはいいけないのです。
節税と会社の財務状況をよくすることは、相対する行為であって、両立させることはできません。
つまり何がいいたいか?
会社規模が大きくなってくれば、節税より会社の財務改善の方が優先順位が高くなるということです。
そのことが結果として、社長の個人資産を守るリスク対策になります。
会社が倒産すれば、節税どころの話ではなくなりますし、せっかく貯めた会社のお金や社長個人のお金も、すべて失くしてしまうことになります。
もちろん会社の財務改善は、本来はいつでも意識しておく優先順位の高い施策です。
しかし、節税という言葉に惑わされると、この本質を忘れてしまい、財務状況はいつまでも改善されないまま、となってしまいます。
その結果、連帯保証を抱えたまま、自身の個人資産を失うリスクと、いつまでも対峙しなくてはいけなくなるのです。
会社の規模によって、優先事項が変わると冒頭でお話ししたのは、こういう訳です。
まとめ
節税をしたり、社長が個人資産を貯めておくこことは、会社の財務戦略の一環として大事です。
しかし会社の規模によっては、上記より優先させなくてはいけない施策もあるのです。
会社の規模が大きくなれば、それに伴って銀行融資も必要になるでしょう。
そのとき、会社の財務状態が一定基準以下であれば、社長は連帯保証を外すことができません。
これは、大きなリスクです。
ですから、社長の個人資産を守るためには、節税より財務改善を優先させなくてはいけないのです。
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