退職金の損金対策のため、退職間際に「急に」役員報酬を上げるケースがあります。

これは税務署と揉める一因になり、極力に避けなくてはいない行為です。

退職を考える年齢になったら、段階的に役員報酬を上げて、「役員報酬を上げたことが目立たない」ようにしておかなくてはいけません。

退職金は金額が大きいだけに、これを否認されたときのインパクトも強烈です。

退職金を安全に受け取るには、数年をかけた対策が必要です。

退職金はいくら支払っても問題ないが・・・

退職金自体は「個人の側」では、いくらもらってもかまいせん。

退職金の税優遇も、いくら受け取っても「個人の側」は受けられます。

※個人の側でも、退職金だけ受け取って「実際は退職してない」といったケースは、退職金の税優遇を取り消されます。

しかし「法人側」では、損金に計上できる金額に「上限」が設けられます。

いくらでも損金にできるのであれば、税務署の大嫌いな利益調整に使われてしまいます。

そのため「法人側」では、適正と認められる損金の「上限」という制限があるのです。

法人が損金に計上できる金額を求める計算式

退職金の損金の上限を出す方法は、一般的には功績倍率法を使います。

算式は以下の通りです。

・最終報酬月額×役員在職年数×功績倍率(+功績加算)

功績倍率は役職によってある程度決められていて、役員在職期間も変えることはできません(社長の場合、功績倍率は「功績加算」も含めて3.0が上限というのが、国税の見解)。

損金の上限を上げるためには、最終報酬月額を上げることが必須となります。

もし、最終報酬月額が100万円、役員在職年数が20年、功績倍率が3.0で計算すると、損金の上限は6000万円になります。

・100万円×20年×3.0=6000万円

しかし最終報酬月額が150万円になれば、損金の上限は9000万円まで増やせます。

・150万円×20年×3.0=9000万円

税金を取る方にしてみれば、納税額に900万円(法人税30%で計算した場合)も差があるわけで、目を光らすもの当然です。

ですから退職前に、「急に」役員報酬が上がっていると、「それは租税回避行為ではないか」と疑ってくるのです。

追徴できる金額が大きくなれば、見返りが多いわけですから、「更生」をちらつかせたとしても、交渉の余地は少ないでしょう。

退職金を否認されるペナルティは強烈

仮に功績倍率で出した金額が否認された場合は、類似法人の役員退職金との比較で、損金の上限額を決められてしまいます。

しかし類似業種から求めた損金適正額は、自社で求めた金額より低くなります(低くないと否認する意味がありません)。

損金に算入できないのは「不相当な高額部分」ですので、全額損金不算入になるわけではありません。

自社で求めた金額と、妥当と認められた類似業種の損金額の差額分部について課税されることになります。

とはいえ、役員報酬自体も「高い」と否認されるわけですから、

  1. 役員報酬
  2. 役員退職金

の2つの「不相当に高い部分」に課税されることになります。

課税は、法人税、延滞税、過少申告加算税、悪質なら重加算税となりますから、否認をされたときのリスクは大きくなります。

だからこそ、退職前に役員報酬を急激に上げるようなことは、避けなくてはいけないのです。

役員報酬を高額に設定するには

ただ、退職前に「急に」役員報酬を上げたとしても、その金額に妥当な根拠があれば認められます。

役員報酬は高額であっても、そこに「妥当といえる根拠」があれば、否認されることはありません。

では何をもって妥当とするかは、形式基準と実質基準があります。

形式基準は、株主総会または定款で定めた金額か、という形式的な基準で見られます。

株主総会で決めてない、または定款に定めてないとなると、それだけで否認されることになりますので、きちんと形式基準を揃えておかなくてはいけません。

まずはこれが大前提です。

そして次は実質基準でみられます。

実質基準とは次の4つを照らし合わせて、総合的に判断されます。

  1. 役員の職務の内容
  2. 会社の収益状況
  3. 使用人に対する給料の支給状況
  4. 事業規模が類似する同業他社の役員報酬の支給状況

この基準で判断して、最終年度の役員報酬の額が「適正」と認められるなら、否認される怖れはないでしょう。

役員報酬を「上げること自体」リスクがある

ただし、最終年度の役員報酬が適正かどうかにかかわらず、税務調査では、役員報酬を退職間近になって上げることが(3年かけて上げるといった感じ)、調査官の目にとまってしまうのです。

それをどう解釈するかは税務調査官の判断ですが、「寝た子を起こす」リスクがあることは理解しておくべきです。

ですから、退職金の最終報酬月額を否認されないためには、5年以上の長期で対策を考えておかなくてはいけません。

社長の中には、あえて役員報酬を取らず、退職金で貯まったお金を引き出したいケースもあるでしょう。

そんなとき、無報酬の期間が長期間でいきなり役員報酬を上げれば、仮にそれが適正額でもあっても認めてもらえない可能性が高くなります。

無報酬の場合も、退職を考えるようになったら、役員報酬は受け取っておきましょう。

まとめ

役員報酬を退職前に上げるリスクについて解説しました。

最終報酬月額を問題とされないためには、長期間かけて役員報酬を上げておくべきです。

そういう意味では、事前確定届出給与を使った社保削減スキームは、非常にリスクがあるといえます。

判例での最終報酬月額は「総報酬÷12か月」ではなく、最終的に支払った役員報酬月額とされていますから、極端に低額に設定していると注意が必要です。

退職前に役員報酬を上げるときは、リスクがあることを理解して行いましょう。


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