仕事上、肩こりや腰痛でお悩みという方は多くいらっしゃいます。
痛みに耐えて仕事を続けるのはツラいですから、治療とストレス解消をかねて、マッサージ店や整体院を利用することがあります。
仕事も一因となった治療費ですから、「この費用を経費で落とせないか?」と考えるのも当然です。
では個人事業主や法人の役員・社員が使ったマッサージ費用は、経費で落とすことができるでしょうか?
経費になるマッサージ費用と経費にならないマッサージ費用の違いとは?
マッサージ費用は経費になるケースと、経費にならないケースの2通りあります。
マッサージ費用が経費になるポイントは次の3つです。
- 事業の売上に関係があるか?
- 福利厚生費用にあたるか?
- 接待費用になるか?
このうちのどれか一つに該当すれば、経費になります。
1・事業の売上に関係があるか?
経費になる基本は、その費用が「売上に関係しているか」です。
したがって、マッサージを受けることが売上に関係している場合は、経費とすることができます。
2・福利厚生費用にあたるか?
福利厚生費用であれば、文句なく経費になります。
福利厚生ですから、役員・社員の健康増進のための費用は福利厚生費になると思いがちですが、そうではありません。
福利厚生費として経費にするためには次の2つを満たす必要があります。
- 従業員全員が使えるものであること
- 常識的な範囲のものであること
この2つを満たすのであれば、マッサージ費用を経費にすることはできます。
3・接待費用になるか?
取引先と接待目的でマッサージを受けた場合は、接待交際費になります。
中小企業の場合、特例で接待交際費は上限はありますが経費にできます。
なお、個人事業主の場合は接待交差費の上限はなく、全額経費にできます。
では具体的な事例で、マッサージ費用が経費になるか説明していきます。
マッサージ費用が経費になる場合
1・マッサージ店・エステサロンの従業員・役員、または個人事業主が利用した場合
マッサージ費用が売上に関係している場合は経費になります。
もっともわかりやすい例は、マッサージ店やエステサロンの従業員・役員、個人事業主が研究のため、他店のマッサージや整体を受けたときです。
自分の技術向上や同業の研究のためですから、経費にすることができます。
あるいは、スポーツ選手が体のメンテナンスでマッサージを利用した場合、経費にすることができます。
スポーツ選手は体が資本ですので、体の不調でパフォーマンスが落ちてしまえば、それが売上減と直結します。
パフォーマンスの低下を理由に誰でも経費にできるわけではない
体が資本といえば、誰だって体の好不調が仕事のパフォーマンスと繋がっているわけですが、それをいい出したらキリがありませんので、税務署もそんなことは認めてくれません。
経費として認められるのは、スポーツ選手のように、体技が売上と直結しているようなケースと覚えておきましょう。
ただし、そのマッサージ店や整体院に営業目的で通って、実際に仕事を受注できたのなら、経費になる可能性があります。
2・取材目的でマッサージを受けた場合
このケースは少ないかもしれませんが、雑誌やホームページで、そのマッサージ店や整体院を紹介する目的で取材した場合、そのときのマッサージ費用は経費になります。
その際、取材をした証拠となるメモ、雑誌やホームページは残しておきましょう。
3・社員・役員全員がマッサージを受けることができる場合
会社の全従業員・役員がマッサージを受けられるときは、福利厚生費として経費になります。
ただし、高額でないという条件がつくことをお忘れなく。
より経費性を明確にするためには、
- マッサージ店や整体院と「会社が契約」する
- 支払いは法人カードで行う
- マッサージ店や整体院を利用するときの利用規約を作っておく
- いつ誰が利用したか記録を残しておく
などして、福利厚生費であることを、きちんとわかるようにしておくのがポイントです。
4・接待目的でマッサージを受けた場合
取引先を接待する目的でマッサージを受けた場合は、接待交際費として経費になります。
領収書をもらうのはもちろん、念のため、誰と行ったか、何人でいったかなどをメモしておきましょう。
マッサージ費が経費にならない場合
1・個人が医師の指示により治療目的でマッサージを受けた場合
個人が医師の指示により、治療目的でマッサージや整体院に通う費用は経費になりません。
もし会社の経費としてしまうと、税務調査でその人の給与扱いになり、源泉徴収の対象になります。
ただ会社の経費になりませんが、個人の「医療費控除」を受けられますので、領収書は残しておきましょう。
2・個人が慰安目的・健康増進目的でマッサージを利用した費用
個人が慰安目的や健康増進目的で利用したマッサージ費用は経費になりません。
治療目的でもないため、個人の医療費控除の対象にもなりません。
私的に使ったマッサージ費用ということです。
当然ながらこの手の費用を会社の経費にすると、税務調査で指摘されその人の給与とみなされ、源泉徴収が必要になります。
3・特定の従業員・役員しか利用できないマッサージ費用
特定の従業員・役員しか利用できないマッサージ費用は、福利厚生費にならないため、経費になりません。
もし経費に計上した場合は、従業員はその人の給与扱いに、役員はその人の役員賞与となって課税されます。
役員の場合は役員賞与ですので、法人と個人で課税されますので、注意が必要です。
4・一人社長が受けたマッサージ費用
一人社長ですので、一見すると、福利厚生費の要件
- 従業員全員が使えるものであること
- 常識的な範囲のものであること
を満たすことができると思えます。
しかしながら一人社長がマッサージ費用を経費にしようとしても、認められないのが現実です。
社長1人で従業員ゼロの1人社長の場合であっても、法人格をもつ株式会社と、役員は形式的には別人格です。
そのため1人社長の会社であっても、役員に対する福利厚生というものは形式的には存在します。
しかし実際は、福利厚生をする側とされる側が同一です。
税務調査では実態で判断されるため、福利厚生費は認められず給与とみなされるでしょう。
同じように家族役員、家族従業員に対する福利厚生費も認められず、給与とみなされる可能性が高いです。
5・フリーランス・個人事業主が受けたマッサージ費用
フリーランス・個人事業主は、福利厚生を受ける側でなく、施す側です。
したがって、フリーランス・個人事業主が受けたマッサージ費用は、福利厚生費の対象にはならず、経費になりません。
また、フリーランス・個人事業主が家族を雇っている場合、その家族が受けるマッサージ費用も福利厚生の対象にならない可能性が高いです。
従業員の場合は福利厚生費になります(福利厚生費になる2つの条件を満たしていることが前提です)。
まとめ
一見複雑なようの思えますが、経費にするためには、
- 事業の売上に関係があるか?
- 福利厚生費用にあたるか?
- 接待費用か?
でわけて考えてみるとわかりやすいです。
これ以外は、「経費にならない」と覚えておきましょう。
マッサージ費用が経費になる場合と経費にならない場合について解説しました。
参考になれば幸いです。
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