会社の事情があって役員報酬を「ゼロ」としたいときもあるでしょう。

起業当初や売上が激減していて収入の目途がつかない、社会保険料の負担が重いといったときです。

役員報酬を支給すれば、所得税・住民税・社会保険料の負担が発生します。

とくに社会保険料は労使合わせて30%にもなりますので、この負担を何とかしたいというお気持ちは重々察します。

ではそのような状況で役員報酬を「ゼロ」にするのは何か問題があるのでしょうか?

役員報酬はゼロ円にできる

結論からいえば、役員報酬をゼロ円とすることはできます。

役員報酬をいくら支払うかは、定款や株主総会で決めれば基本的自由ですので、国から規制があるわけではありません。

※ただし高すぎる役員報酬は問題になります。

役員報酬をゼロ円にするとどんな影響があるか?

役員報酬をゼロ円にすることは問題なくても、やはり影響は出てきます。

役員報酬をゼロ円にすることで次のことに影響します。

金融機関からの融資

社長の役員報酬がゼロならば、金融機関は「どうやって生活をしているのか?」と疑ってきます。

そのため、会社から役員貸付金や仮払金で受け取ってないか、決算書から調べられます。

また、本当に役員報酬がゼロであれば、融資したお金を生活費に使わないかも疑念に思われるため、個人資産があればそれを証明するもの、他に収入源があるのであれば、それらをきちんと説明して、事業資金のみに使うことを理解してもらわなくてはいけません。

もし担当者の理解を得られなかったり、決算書に仮払金や役員貸付金が記載されていれば、大きなマイナスポイントになります。

税金

役員報酬をゼロ円にすれば、個人の所得税・住民税の負担もなくなります(その他の収入がない場合)。

しかしその反面、役員報酬を法人の損金として計上できませんので(社会保険料も)、法人税が増える可能性があります。

それはマズいということで、役員報酬は期の途中で増額すると、「増額した部分」が損金に計上できなくなります。

とくに役員報酬がゼロ円から増額すると、増額した全額が損金にならないので、上げるときにはどれくらい税負担が増えるかシミュレーションが必要です。

役員報酬は、期の途中での変更すると、変更した部分が損金に計上できませんが、会社の経営が著しく悪化したといった、特段の事情がある場合は、減額したとしても損金に計上できるケースがあります。

会社分割で手取り収入を増やす方法

もっとも、会社を分割した場合になりますが、一方の会社はあえて役員報酬をゼロ円にするのが得策の場合があります。

会社から社長個人へ所得移転する際は、どんな形にせよ所得税を課せられます。

つまり、会社から個人へ効率よく資金移転するには、いかに「所得税率を下げるか」がポイントなるのです。

そこで使うのが「退職金」です。

簡単にいえば退職金には大きな税優遇があるため、最も所得税率を低く抑えて、社長個人へと所得移転できるのです。

ざっくりしたスキームこうです。

分割した会社のうち、一方は役員報酬を支払い、一方は役員報酬をゼロ円にします。

役員報酬を支払わない会社の方は、そのお金を、経営セーフティ共済などを使って、税金を繰り延べながら会社側にプールしておきます(プール期間は5年以上)。

その間も、出張旅費規程や借り上げ社宅制度を使って、社長へ所得移転を行っておきます。

そしてプールしたお金を、引退(事業承継)、精算(廃業)、売却(M&A)などいずれかのときに、退職金として社長個人に所得移転します。

こうして最も税率の低い方法で、会社に残したお金を社長個人へ移すことができます。

税金のために会社を分割したり新設法人を作るのはどうかと思いますが、M&Aが盛んになっている時代ですから、会社を売ることを想定して、社長個人の手取りをMAXにすることを考えておくのも方法です。

社会保険料

役員報酬がゼロ円だと、社会保険の加入資格を喪失します。

社会保険の加入資格は次のように定められています。

法人の理事、監事、取締役、代表社員、無限責任社員等、法人の代表者又は業務執行者であっても、法人の労働の対償として報酬を受けている者は、その法人に使用される者として被保険者の資格を取得するようになっています。(昭24.7.28保発74号)

「法人の労働の対償として報酬を受けている者は、その法人に使用される者として被保険者の資格を取得する」ということであれば、法人から受け取る報酬がゼロ円であれば、社会保険の加入資格を失くすというわけです。

ただし、経営者や役員の役員報酬を下げる期間が一時的なことも多くあることから、ゼロ円だからといっても、一概に加入資格を喪失するわけではないと注意書きもあります(1円のような極端な役員報酬額でも)。

「会社役員については、経営状況に応じて給与を下げる例は多く、このような場合は今後支払われる見込みがあり一時的であると考えられるため、低報酬金額をもって資格喪失させることは妥当ではないことから総合的な判断が必要であり、最低金額を設定しその金額を下回る場合は、被保険者資格がないとするのは妥当ではない」

「社会通念上、業務の内容に対して1円の報酬しかないなど、内容に相応しいものかどうか疑わしい場合は、報酬決定に至った経過、その他常用的使用関係と判断できる働き方(多くの職を兼ねていないかどうか、業務の内容等)であるかなどを調査し、判断してください」

加入資格を喪失すると「国保+国民年金」への加入に

役員報酬をゼロ円にすれば、基本は社会保険の加入資格を喪失します。

しかし、今度は国民健康保険と国民年金に加入しなくてはいけなくなります。

社会保険と「国民年金+国民健康保険」のどちらに加入した方が得かは、ケースバイケースですが、国民健康保険は前年度の所得や扶養家族数をベースに計算され、控除枠も33万円しかないことから、高額報酬を受け取っていた社長であれば、社会保険料よりも高くなる可能性があります。

また扶養家族がいらっしゃるのであれば、その方の保険料がどうなるかも考えておく必要があります。

役員報酬を1万円の定額にした場合

では、役員報酬をゼロ円ではなく、1万円の低額に設定した場合、社会保険料はどうなるでしょう?

社会保険料の最低負担額は、健康保険で2871円(第二号被保険者で3372円)、厚生年金で8052円となっています。※個人負担部分

この場合、毎月納める社会保険料は10923円です。

ということは、役員報酬だけでは保険料を支払えないので、923円のマイナス分については、貯金などから自腹で補わないといけなくなります。

自腹を切るなんて実にアホらしいことですし、それならもう1000円か2000円上げてくださいと、役所からいわれるかもしれません。

となれば、低額の役員報酬額に設定する場合でも、最低1万1000円以上の役員報酬にしておかなくてはいけないのです。

ただこんなことをわざわざするくらいなら、いっそう会社の事業を個人事業と法人事業に分割することを検討してみるべきでしょう。

なぜなら、法人事業の役員報酬を5万円程度に設定すれば、わざわざバカ高い国民健康保険料と国民年金保険料の支払いをしなくても、最低限の社会保険料の支払ですむわけですから。

いわゆる個人事業主の国保削減スキームの逆バージョンです。

会社員から起業した場合

会社員から起業する場合で、「どうしても社会保険に加入したい」というときは、それまで勤めていた会社で加入していた健康保険の継続を選択するのも方法です。

社会保険は、年収が130万円未満の家族を扶養にすることができますので、一人分の社会保険料で家族の医療費をまかなうことができます。

国民健康保険には、そもそも扶養家族という考え方がなく、家族で国民健康保険に加入すると、保険料が増えてしまうことがあります。


まとめ

この記事では、役員報酬をゼロ円にできるか?ゼロ円にした場合の影響について解説しました。

役員報酬をゼロ円にすることはできますが、それによって会社経営に影響が出てくることは知っておおきたいところです。

役員報酬をゼロ円にするときは、トータルで考えて損をしないようにしましょう。


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