事前確定届出給与で年2回の役員賞与を支給することもあります。

しかしこのとき、1回目は届け出た額面通りの賞与を支給、2回目は届け出た額面とは違う額を支給した場合、片方だけが損金不算入になるのか、それとも両方損金不算入になるのか、どちらの処理になるでしょう?

事前確定届出給与は社会保険料削減スキームにも使いますので、このあたりはしっかり理解しておきたいところです。

この記事では、事前確定届出給与を2回以上に分けて支給した場合の取り扱いについて解説します。

事前確定届出給与をざっくり解説

事前確定届出給与とは、原則は損金にできない役員賞与を、例外として損金にして処理できる方法です。

具体的には、役員賞与を「いつ支給するか」「いくら支給するか」を事前に決めて、所轄の税務署に届け出ることで損金に計上できます。

届出の期限は次の通りです。

  • 役員の職務について定める株主総会等の決議日から1月を経過する日
  • 会計期間開始の日から4月を経過する日
  • 新設法人は設立の日以後2か月以内

役員賞与を損金にすることを認めてしまうと、簡単に利益調整されてしまうので、原則損金に算入できなくしています。

しかし期のはじめに決めた役員賞与であれば、利益調整の余地はありませんので、例外的に損金を認めているのです。

ただし、届け出た時期と金額と、実際に支給した時期と金額に違いがあれば、全額損金に計上できなくなります。

損金にならないパターン

この事前確定届出給与を使った賞与ですが、年1回の支給ということだけでなく、中には年2回の支給というケースもあります。

では、1回目の支給は届け出た額面とは異なり、2回目は届け出た額と同じで支給したらどうなるでしょう?

結論からいえば、支給した役員賞与全額が「損金不算入」になります。

たとえば、3月決算の法人で次の条件で役員賞与を支払うため、事前確定届出給与を税務署に届け出たとします。

  • 役員の任期:令和元年6月30日~令和2年6月29日
  • 賞与の支給時期:令和元年12月と令和2年6月
  • 役員賞与の額:各200万円ずつの合計400万円

しかし令和元年12月の役員賞与は100万円しか支給できず、それに対し令和2年6月の役員賞与は届け出た金額の200万円を支給することができました。

この場合、12月の100万円のみ届出金額と異なるので損金不算入となるのか、それとも300万円全額が損金不算入になるのかという問題です。

繰り返しになりますが、事前確定届出給与とは、支払い時期、支給金額が事前に確定し、実際に、届け出た内容と同じ通り支給される給与のことをいいます。

したがって、届け出た内容と実際に支給した内容が異なるのであれば、それは「事前に確定していた」といわないため、事前確定届出給与に該当しなくなり、損金には認められなくなるのです。

そのため、仮に増額したのであれば、増額分だけでなく全額損金不算入となります。

上記のケースも、届け出た内容と異なる内容を支給したため、「事前に確定していた」給与にならず、令和元年12月に支給した100万円と、令和2年に支給した200万円の合計額300万円が損金不算入となります。

9 役員給与等


損金になるパターン

ただし、国税庁の見解では、届け出た内容と異なった内容で役員賞与を支給した場合でも、損金に認められるケースがあります。

たとえば、先ほどと同じケースで考えてみます。

  • 員の任期:令和元年6月30日~令和2年6月29日
  • 賞与の支給時期:令和元年12月と令和2年6月
  • 役員賞与の額:各200万円ずつの合計400万円

先の例とは逆で、令和元年の12月は届け出た金額の200万円を支給(令和2年3月期)、令和2年の6月には届け出た金額と異なる100万円を支給しました(令和3年3月期)。

このとき、令和2年6月に支給した賞与が直前の事業年度(令和2年3月期)の課税所得に影響しないことから、翌事業年度(令和3年3月期)に支給した役員賞与についてのみ、損金不算入として取り扱ってもかまわないとされています。

最初にお話ししたケースとの違いは、すでに支払った役員賞与が、事業年度の課税に影響するかどうかです。

課税に影響するものは、当然ながら損金不算入となります。

なお、役員給与等のページでは、「損金不算入と取り扱っても差し支えないものと考えられる」とあり、「差し支えない」と断言しておらず、ケースのよっては個別の判断になるということでしょうか。

このあたりの含みを残したいい回しは、お役所独特のものがあり、当方からは何ともいえません。

事前確定届出給与を「未払い」にしたときは

なお、事前確定届け給与を「未払い」とすればどうなるでしょう。

会計上の事前確定届出給与は「確定した債務」になりますので、未払いであっても計上するこもできます。

しかし事前確定届出給与は、通常の役員報酬と同じく、役員の職務に対する対価です。

対価であるなら、未払いになることを前提に「事前に給与を確定しておく」ことはおかしな話です。

この観点に立てば、事前確定届出給与の「確定額」に「未払い分」が含まれていることは論理的に成り立ちません。

よって、未払い分が含まれた役員賞与は「確定額とはいえない」とされています。

しかし役員給与等では、「損金に算入できない」とはされておらず、「個々に判断していく」となっているため、未払い計上、即すなわち損金不算入とはならないようです。

現物支給は認められない

もう一つ付け加えておきますと、事前確定届出給与は現物資産による支給を認めていません。

繰り返しますが事前確定届出給与とは、「確定した額」のことで、現物資産は支給額が確定しているといえないため、該当しないのです。

また、単に支給額の上限のみを定めたもの(たとえば、「○○○万円以下の金額とする」等)や、一定の条件を付すことにより支給額が変動するものも対象とならないので気を付けましょう。

まとめ

事前確定届出給与で、役員賞与を2回支給したときの損金の有無について解説しました。

役員賞与を使って、節税や社会保険を削減するパターンもあります。

とくに社保削減スキームの場合は、役員給与に占める役員賞与の割合いが大きくなりますので、1回ではなく2回の支給をすることも考えられます。

そのときに、損金に計上できなければスキームの意味もなくなってしまうので、損金になるかならなかの基準をしておくことは大事です。

事前確定届出給与を複数回支給するときは、気を付けておきましょう。


<社長におススメの【資金繰りに役立つ】記事>

【2019年最新】働き方改革推進で活用したい助成金大特集

【消費税・社会保険料対策】知らないと怖い業務委託契約の事実

【緊急レポート】今すぐ節税・社保削減したい社長のための極秘マニュアル

社長必見!知らないと税金を2倍取られる税務調査対策



<おススメサービス>

【求人革命】Webで人手不足を解消するサービス

銀行から見た「自社評価がわかる」格付け診断サービス