配偶者への役員報酬は会社倒産時のリスク対策になる

社長の手取りを増やす方法

配偶者に役員報酬を支払うことで、節税以外にも万が一のリスク対策を行えます。

万が一のリスク対策とは、会社が倒産してしまったときの財産についてです。

倒産により社長自身が個人財産を失ってしまっても、配偶者の財産は差し押さえらませんので(個人保証をしていなければ)、生活の基盤がなくなってしまうことは防げます。

配偶者を役員にすることは、自身や家族をも守るリスク対策にもなります。

節税だけで考えるのは視野が狭いといえます。

※倒産するとわかっていて計画的に配偶者へ資産を移すと債権者から訴えられる可能性があります。

節税対策としての役員報酬

配偶者や身内に役員報酬を支払うことで、所得の分散が行え、結果的に節税することができます。

個人の所得は超過累進課税ですので、所得が増えればそれに比例して税率も高くなります。

また役員報酬には「給与所得控除」があります。

そのため、仮に1000万円を一人で受け取るより、配偶者と2人で受け取った方が、給与所得控除も2人分受けられ、その分節税になるというわけです。

所得を分散すれば、税率も下がり、控除枠も増え、税額が減る、これが配偶者や身内を役員にして報酬を支払うメリットです。

会社倒産時のリスク対策

しかしそれ以外にも、配偶者に役員報酬を支払うメリットがあります。

それが冒頭でお伝えした、万が一のリスク対策になる、ということです。

配偶者に所得を移転しておくことで、社長が破産しても、配偶者の個人資産は残しておけるのです。

ここで誤解されている人もいらっしゃるかもしれませんが、「役員=負債の責任を負う人」でないことに注意しましょう。

役員になったからといって、会社が倒産した場合、その負債を全部弁済しなくてはいけないわけではないのです。

法律上、法人と役員個人は、別の人格として扱われます。

そのため、会社が破産した場合でも、役員個人が破産した会社の負債を負担する必要がないのが原則なのです。

ただし、どのような場合でも債務を免れるわけではありませんので注意しましょう。

※倒産するとわかっていて計画的に配偶者へ資産を移すと債権者から訴えられる可能性があります。 また 役員の行為に悪意や重過失があった場合には、第三者に生じた損害を賠償する責任に問われる可能性があります。

取締役(役員)のデメリットと責任範囲ってどのぐらい?

株主の場合

役員が株主の場合は、出資した金額の範囲で責任を負うことになります。

仮に500万円出資したなら、1000万円の負債で倒産しても、返済の範囲は500万円までとなります。

保証人・連帯保証人の場合

銀行からの借入れやリース契約を会社が行う場合に、役員個人がその保証人・連帯保証人になったときは、その負債について個人で弁済しなくてはいけなくなります。

仮に奥様が役員になった場合で、社長から頼まれて会社の借入れの連帯保証人になれば、その債務については、会社が支払えないときは、奥様個人が返済の義務を負うことになります。

逆にいえば、役員になったとしても、会社の保証人・連帯保証人にならなければ、会社の債務について責任を負う必要はないのです。

役員に返済義務はない

上記以外でも、役員や取締役の行為によって会社や第三者に損失を与えたということで、取締役や役員が損害賠償責任を問われるケースもあります。

しかし原則は、単に「会社経営に失敗して破産した」からといって、経営陣である役員が、会社の負債をすべて返済しなくてはいけないわけではありません。

ということは、です。

社長の配偶者を役員にしたとしても、株主ではない、会社の債務の保証人・連帯保証人でなければ、会社が倒産した場合でも、配偶者の個人資産は残るわけです。

これは社長の万が一のリスク対策となります。

もちろん、会社の倒産をきっかけに、愛想を尽かされ出ていかれてしまえば、元も子もないわけですが。

※倒産するとわかっていて計画的に配偶者へ資産を移すと債権者から訴えられる可能性があります。 また 役員の行為に悪意や重過失があった場合には、第三者に生じた損害を賠償する責任に問われる可能性があります。

取締役(役員)のデメリットと責任範囲ってどのぐらい?

なぜ役員で支払うべきなのか

配偶者への所得移転方法は、別に役員でなくても、従業員として雇って給料を支払うことはできます。

しかし所得移転の「効率」からいえば、役員の方が圧倒的有利です。

従業員の場合、労働契約ですので、労働時間が給与のベースになります。

一方役員は委任契約です。

そのため労働時間によって報酬が決まるわけでなく、経営への関与度や貢献度で報酬額を設定できるため、従業員に比べ報酬を高くできます。

したがって、より多くの所得を配偶者へ移転しようとするなら、従業員よりも役員という立場を使った方が有利なのです。

ただし、そのことが却ってデメリットになるケースもありますので、よくよく考えて役員にするべきかを決めましょう。

もっとも、たとえ名義上役員といえど、実体を伴わない役員報酬額であれば、否認される怖れが出ることには注意が必要です。

役員報酬は相続対策・二次相続対策になる

配偶者に役員報酬を支払うメリットは、それ以外にも、配偶者自身の相続対策になる、二次相続対策になるなどが挙げられます。

節税以外にも中・長期の視点を持って対策を行うのが肝心です。

まとめ

会社経営を行っていれば、倒産時のリスク対策など考えてもいない、という方もいらっしゃるかもしれません。

しかしいつ何時何が起こるのかわからないのが会社経営です。

死亡に備える保険はありますが、倒産に備える保険はありませんので、自らリスク対策を行っておく必要があります。

その一つに、配偶者への役員報酬があります。

長期の視点に立って、しっかりリスク対策を行っておきましょう。

ちなみに、小規模企業共済も「差押え禁止財産」というメリットがありますので、倒産時のリスク対策として経営者なら加入しておきたい金融商品です。

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