法人クレジットカードのポイントを個人が利用したら社会保険の対象になるか調べてみた結果

社会保険料を削減する方法

法人クレジットカードのポイントを個人が利用した場合、税金の面でいえば、グレーゾーンが存在し、実質非課税手当になってしまいます。

あるいは法人からの贈与と考えて、一時所得で処理した場合も、50万円以下のポイントであれば、こちらもまた非課税です。

では税金だけでなく、社会保険料はどうなるでしょう?

この記事では、法人クレカのポイントを個人が使ったときの社会保険料について解説します。

クレジットカードのポイントが社会保険の算定基礎に含まれるか?

法人のクレジットカードのポイントを個人が使った場合が、社会保険料と何の関係があるかと疑問に感じる方もいらっしゃると思います。

そんな方のために簡単に説明しておきます。

社会保険は、給与だけが対象となるわけではありません。

給与以外の賞与や各種手当、現物による通勤定期券や食事・食券も、支給すれば社会保険料の対象となります。

その一方、同じ現金でも、病気等の見舞金や災害見舞金、退職金などは社会保険料の対象になりません。

このように、会社が役員や従業員に支給するものでも、社会保険料の「対象となるもの」と「対象にならないもの」の2つに分けられるのです。

では、法人のクレジットカードのポイントを個人が利用した場合、このポイント分は社会保険の対象となるでしょうか?それとも対象にならないでしょうか?

【悲報】社会保険の対象になるのだが・・・

この点をわたし自身、年金事務所に確認しました(2017年7月16日)。

その回答は、

「社会保険料の対象となります」

でした。

処理の仕方
  • 法人のクレジットカードのポイントを年3回以下で受け取ったとき→賞与として処理
  • 法人のクレジットカードのポイントを年4回以上に分けて受け取ったとき→給与として処理

報酬の範囲とは?

厚生年金・健康保険における「報酬」の範囲とは、次の通りです。

賃金、給料、俸給、手当、賞与等名称に関係なく、被保険者が事業主から労働の対償として支払を受けるすべてのものを「報酬」といい、次のいずれかを満たすものとされています。

(1)被保険者が自己の労働の対償として受けるものであること

(2)事業所から経常的かつ実質的に受けるもので、被保険者の通常の生計にあてられるもの

これに当てはめて考えると、法人のクレジットカードのポイントを個人が利用した場合、給与または賞与として処理しなくてはいけないと思えます。

しかし、今のところ給与や賞与として処理しなくても、その漏れを指摘できない、というのが現状です。

記載されてない

その根拠としては、法人のクレジットカードのポイントを個人が利用した場合の、「明確な処理の仕方」はどこにも記載されてないのが理由です(2019年7月16日現在)。

法人のクレジットカードのポイントを個人が利用した場合の処理の仕方、つまり「社会保険の算定基礎に含まれるかどうか」の記載がされてないため、「給与または賞与として処理しなくてはいけない」ことを知らない会社は、そもそも処理することなくスルーしてしまう可能性が高くなります。

そうなると、算定基礎の届け出時、または被保険者賞与支払届時に、法人クレカのポイント分を記載しないまま、届け出てしまうことが出てくるでしょう。

良心的な会社は、年金事務所に問合せて処理の仕方を聞くかもしれませんが、でも漏れを指摘しようにも指摘できないのです。

賃金台帳にも記載する必要なし

算定基礎の届け出にポイント利用分が含まれていなくても、賃金台帳との金額を比べれば、その差額分は判明します。

そこで、法人クレカのポイントを個人利用した場合について、「賃金台帳の賃金に含めて記載しないといけないか」を労働監督基準署に問合せてみました。

その回答は「含めなくてもよい」とのことでした。

賃金台帳の賃金に含めるものは、「原則通貨で支給しなければならない(労基法24条1項)」とのことで、法人クレカのポイントはこれに当たらないという解釈でした。

そのため、賃金台帳からも給与や賞与に含めるべきことの漏れを指摘することができないのです。

とはいえ、よくよく調べてみると、現物支給でも給与となる場合があるので、解釈の仕方によっては賃金に含めて記載しなくてはいけない可能性はあります(気になる人は労基署に問合せてみましょう。お役人といえど、間違ったことを回答するケースはあります)。

結論:法人クレカのポイントの個人利用はグレーゾーン

法人クレジットカードのポイントを個人が利用したとき、そのポイントは社会保険の対象になるかを、年金事務所に問合せた結果の結論は

  1. 原則は、給与または賞与に含めなくてはいけないので、社会保険料の対象になる。
  2. しかしそのことがどこの条文にも記載されてないので、知らない会社は届け出時に漏れる可能性が高い。
  3. とはいえ、届け出に漏れたといえど、それを調べる術がないので、不備を指摘しようがない。

というのが現状になります。

繰り返しますが、原則は社会保険の対象になるので、給与または賞与に含めなくてはいけないものになります。

ですが、仮にそれが漏れてしまっても、それを調べる書類がないので、年金事務所の調査でも「法人クレカのポイントの個人利用は給与か賞与に含めてください」と指摘できないのです。

これもまた、グレーゾーンといってもいいでしょう。

まとめ

ここで調べたことは、2019年7月16日現在の話です。

ですから、今後ポイントの個人利用が活発になって、それを問題視してくれば、条文で明記される可能性はあります。

しかし現在は、法人クレカのポイントの個人利用について、明確な規定がなされてないため、グレーゾーンができている、というのが現状です。

後々指摘されたくないなら、しっかり届け出ておきべきですが、届け出ない場合でもそれ判明する可能性は少ないです(大声ではいえませんが)。

法人クレカのポイント個人利用したときの、社会保険について解説しました。

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