助成金は厚生労働省が支給してくれる返済不要のお金です(自治体が支給する助成金は除く)。

助成金は主に労働関係で支給されますから、新たな雇用をしたり、従業員の待遇を改善するときに利用を考える中小企業も多いかと思います。

しかしここで、「返済不要」という言葉に惑わされると、後で手痛いしっぺ返しをくらいます。

助成金は、申請から実際にお金が入金されるまでの期間が長いため、助成金をあてにしてしまうと、かえって資金繰りは悪化してしまうのです。

資金繰り悪化を防ぐためには、助成金の受給計画と同時に、融資を考えることも一つの方法です。

助成金は原則「後払い」

助成金は主に厚生労働省が支給するものを指します。

よくある勘違いですが、助成金と補助金は別物です。

助成金と補助金の一番の違いは、条件さえ満たしていれば、ほぼ100%助成金を受給できること、補助金に比べ利用しやすいといえます。

そしてここからがポイントですが、助成金は「後払い」が原則になります(補助金も後払いが原則)。

まず助成金の申請を行い、申請内容を実施します。

その後、支給の申請を行って、はれて助成金を受け取れるという流れです。

したがって、実際に助成金を受け取れるまでの期間は、事業主が費用を立て替えなくてはいけないのです。

助成金は返済不要のお金です。

その返済不要というメリットが大きい過ぎるため、この「後払い」について深く考えずに申請して、後で後悔することが起こってしまうのです。

その理由は、後払いされるまでの期間が、長期になるからです。

受け取りまで1年

ではこの費用の立替え期間、つまり、助成金の申請からお金が入金されるまで、実際にどれくらかかるでしょう?

これは助成金の種類にもよりますが、半年から1年を超えるものまであります。

その間は事業主が費用を立替えておかなくてはいけないため、助成金を申請することで逆に資金繰りが苦しくなってしまうのです。

たとえば、キャリアアップ助成金で考えてみましょう。

キャリアアップ助成金の場合

キャリアアップ助成金には、非正規社員を正社員に雇用したときに支給される「正社員化コース」があります。

このキャリアアップ助成金・正社員化コースは、正社員への転換を行ってから「6か月以上給与を支給していること」という条件が入ります。 

さらに、「正社員への転換後6か月間の給与が、転換前6か月間の給与より5%以上増加していること」という条件が加わります。

したがって申請を行うまでの6か月間は、確実に人件費が増えます。

仮に、給与が15万円のパートの方を正社員に転換する場合、5%以上の賃金増額しなくてはいけないわけですから7500円は賃金は増えることになります。

・15万円×(1+5%)=15万7500円

ここに社会保険が加われば、会社の6か月の立替え費用は、社会保険料23625円、増額人件費7500円で、トータル186750円は確実に負担増になります。

・15万7500円×30%×1/2=23625円

・(23625円+7500円)×6か月=186750円

君は1年以上の立替えに耐えられるか?

さらにキャリアアップ助成金・正社員化コースには、「転換日の前日から起算して6か月前の日から1年を経過する日までの間に、当該転換を行った適用事業所において、雇用保険被保険者を解雇等事業主の都合により離職させてないこと」と条件が加わるため、最低でも1年間は事業主が増額分を立替えしなくてはいけないのです(転換日前6か月を含めると1年半)。

つまり、最低でも37万3500円の立替え費用が必要というわけです。

・(23625円+7500円)×12か月=37万3500円

キャリアアップ助成金・正社員化コースは、中小企業の場合、一人あたり57万円支給されますから、1年後にはれて立替え費用を全額回収できるというわけです(この場合は支出よりも多く受け取れるわけですが、年利にしたら52%というすさまじい高金利で受け取れることになり、その意味においては立替える意味も大いにあるといえますが、あくまでそれはこのケースについてのみに当てはまることです)。

ただし、「23625円+7500円=31125円」の負担は、助成金受給後も続けなくてはいけませんし、月給を7500円に上げるだけでパートさんやアルバイトさんが正社員になることを受諾するかどうかはなはだ疑問なわけで、その意味においては給与をもっと上げなくてはいけないでしょう。

要は、会社の人件費の負担は間違いなく増えるということです。

となれば、雇用コストがどれだけ増えるか視野に入れて助成金受給計画を立てないと、立替え費用で資金繰りが苦しくなるということです。

助成金が返済不要ということで、安易に助成金を受給しようとするのは、実は危険な行為なのです。

安全に助成金を受け取るためには、どれだけ資金不足になるか予想して、金融機関から融資を借りておくと、余裕を持って助成金を受給することができるのです。

助成金のための融資がある

でも助成金を受給するための、いわば「助成金のためのつなぎ融資」のような金融商品はあるのでしょうか?

はい。あります。

それが日本政策金融公庫の「働き方改革推進支援資金」です。

「働き方改革推進支援資金」は、働き方改革に伴う、非正規雇用の処遇改善に取り組む事業主や従業員の長時間労働の是正に取り組む事業主などに融資してくれる制度です。

具体的には次のことに取り組む事業主に融資してくれます。

  • 非正規雇用の処遇改善に取り組む方
  • 従業員の長時間労働の是正に取り組む方
  • 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、その旨を都道府県労働局長
    へ届け出ている方(届出が義務付けられている方を除きます。)
  • 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく一般事業主行動計画を策定し、その旨を都道府県労働局長へ届け出ている方(届出が義務付けられている方を除きます。)
  • 青少年の雇用の促進等に関する法律 に基づく「ユースエール認定企業」の認定を受けた方
  • 地方公共団体が推進する施策に基づき女性従業員の活用促進に取り組む方
  • 事業所内に保育施設を整備する方
  • 障害者の雇用または障害者に対する合理的配慮の提供に取り組む方

このような融資を受けることで、助成金の立替え費用による、資金不足を解消することができます。

助成金の受給には、資金繰りに余裕のある状態で助成金の申請を行い、支給された助成金は会社の余剰資金として蓄えておく、というのが理想的な助成金の受け取りかたなのです。

まとめ

助成金は、従業員の処遇改善や労働環境の整備などに使うためのお金です。

労働環境や待遇が向上すれば、従業員のモチベーションも高くなります。

しかし助成金は後払いのため、どうしても費用の持ち出しが必要になります。

従業員のために行うことでも、資金繰りが苦しくなってしまえば、会社の経営危機を招いてしまいます。

ですから、返済不要という言葉に惑わされないで、しっかりした助成金受給計画を立ててから、行動に移す必要があるのです。

助成金を受給するときは、資金不足にならないため、融資も同時に考えてみましょう。


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