法人のクレジットカード(コーポレートカード)を支払いで使えば、ポイントやマイレージが貯まっていきます。
法人のクレジットカード(コーポレートカード)を支払いで使えば、ポイントやマイレージが貯まっていきます。
法人の支払は経費から税金までありますから、年間通せばそれなりの金額になります。
仮に1ポイント1円、還元率1%のクレジットカードなら、年間1000万円の支払いがあれば10万円分のポイントが付与されます。
ではこのポイントを個人で使った場合の課税関係はどうなるでしょう?
ポイントやマイレージの国税庁の見解は
クレジットカードに付与されるポイントについて、国税庁の見解はどうなっているでしょう。
実はクレジットカードに付与されるポイントについて、はっきりした見解はありません。
国税庁のHPを調べてみると、ポイントについて述べられているのは以下の2つです。
(1) No.1490 一時所得 Q&A
(2) 企業が提供するポイントプログラムの加入者(個人)に係る所得税の課税関係について
(1)については、エコポイントの課税に関して述べられていて、エコポイントは一時所得にあたるとのことです。
しかしこれはエコポイントについてですので、クレジットカードのポイントやマイレージとは関係ありません。
(2)については、税務大学の研究部教育官が執筆された論文です。
この論文では国税庁の正式見解はわかりませんが、ざっくりいえばクレジットカードに付与されるポイントは、「課税されるべき経済的利益」とされています。※ただし、ポイントの付与され方にもよりますので、厳密に分ければそうでないポイントもあります。
ですから、付与されたポイントは使った時点で、会社の資産(雑収入)に計上すべきものになります。
※個人事業主の場合も「雑収入」に計上して処理します。
したがって、会社の資産を勝手に個人が使ってしまうのは問題となるといえるのです。
ですがここが大事なのですが、「企業が提供するポイントプログラムの加入者(個人)に係る所得税の課税関係について」という論文は、国税庁のHPに掲載されているだけであって、これが国税庁の正式見解とは記述されていません。
要は、クレジットカードのポイントやマイレージの実態に即した取り決めが所得税法の規定にない、というのが現状なのです。
会社の会計処理も雑収入として計上するべきですが、現実的にはほとんど行われていません。
クレジットカードに付与されるポイントは、 有効期限が過ぎれば失効してしまうなど、そのすべての経過を会計処理するとなると、作業量が膨大となる恐れがあるからです。
さらに国税庁に提出しなくてはいけない法定調書にも、マイルやポイントについての規定がないこともその理由となります。
法定調書(支払い調書)については、次の項でくわしく説明します。
給与として支払う場合
実態はポイントやマイルを会社の雑所得として計上してない会社も多いのですが、建前上は会社の資産を社長個人へ所得移転する場合、税務上認められないものについては、役員なら「役員賞与」、従業員なら「給与」とされてしまいます。
役員の場合は、役員賞与ですので、損金には算入できません。
個人と法人で課税される、いわゆる往復ビンタを喰らうことになります。
法人のクレジットカードに貯まったポイントやマイレージも、これに当たると思われます。
したがって、法人クレカのポイントを社長が使ってしまった場合は、役員賞与とされる可能性が高いです。
もっとも、先述した通り、「クレジットカードのポイントやマイレージの実態に即した取り決めが所得税法の規定にない」というのが現状です。
当てはめるべき規定がないわけですから、実際は法人クレカのポイントを個人が使っても問題ないとというのが「現状」の結論です。
そのポイントになるのが法定調書なのです。
クレジットカードのポイントやマイレージに関する法定調書(支払調書)がない
特定の支払いをした事業者が税務署に提出する書類に「法定調書」という書類があります。
法定調書には、支払いの内容・明細が書かれています。
税務署はこの書類を元に、支払いを受けた個人や事業者が正しく申告しているかどうかを照合するために利用します。
《所得税法に規定するもの》
1 給与所得の源泉徴収票(同合計表)
2 退職所得の源泉徴収票(同合計表)
3 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書(同合計表)
4 不動産の使用料等の支払調書(同合計表)
5 不動産等の譲受けの対価の支払調書(同合計表)
6 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書(同合計表)
7 利子等の支払調書(同合計表)
8 国外公社債等の利子等の支払調書(同合計表)
9 配当、剰余金の分配、金銭の分配及び基金利息の支払調書(同合計表)
10 国外投資信託等又は国外株式の配当等の支払調書(同合計表)
11 投資信託又は特定受益証券発行信託収益の分配の支払調書(同合計表)
12 オープン型証券投資信託収益の分配の支払調書(同合計表)
13 配当等とみなす金額に関する支払調書(同合計表)
14 定期積金の給付補てん金等の支払調書(同合計表)
15 匿名組合契約等の利益の分配の支払調書(同合計表)
16 生命保険契約等の一時金の支払調書(同合計表)
17 生命保険契約等の年金の支払調書(同合計表)
18 損害保険契約等の満期返戻金等の支払調書(同合計表)
19 損害保険契約等の年金の支払調書(同合計表)
20 保険等代理報酬の支払調書(同合計表)
21 非居住者等に支払われる組合契約に基づく利益の支払調書(同合計表)
22 非居住者等に支払われる人的役務提供事業の対価の支払調書(同合計表)
23 非居住者等に支払われる不動産の使用料等の支払調書(同合計表)
24 非居住者等に支払われる借入金の利子の支払調書(同合計表)
25 非居住者等に支払われる工業所有権の使用料等の支払調書(同合計表)
26 非居住者等に支払われる機械等の使用料の支払調書(同合計表)
27 非居住者等に支払われる給与、報酬、年金及び賞金の支払調書(同合計表)
28 非居住者等に支払われる不動産の譲受けの対価の支払調書(同合計表)
29 株式等の譲渡の対価等の支払調書(同合計表)
30 交付金銭等の支払調書(同合計表)
31 信託受益権の譲渡の対価の支払調書(同合計表)
32 公的年金等の源泉徴収票(同合計表)
33 信託の計算書(同合計表)
34 有限責任事業組合等に係る組合員所得に関する計算書(同合計表)
35 名義人受領の利子所得の調書(同合計表)
36 名義人受領の配当所得の調書(同合計表)
37 名義人受領の株式等の譲渡の対価の調書(同合計表)
38 譲渡性預金の譲渡等に関する調書(同合計表)
39 新株予約権の行使に関する調書(同合計表)
40 株式無償割当てに関する調書(同合計表)
41 先物取引に関する支払調書(同合計表)
42 金地金等の譲渡の対価の支払調書(同合計表)
43 外国親会社等が国内の役員等に供与等をした経済的利益に関する調書(同合計表)
実は上記の法定調書の中には、現在のポイントやマイレージに関する規定が決められてないのです。
つまり法定調書がないため、課税事由もないということになります。
繰り返しますが、法定調書は税務署がお金の動きを把握するために提出させる書類です。
その書類がないとなれば、ポイントやマイレージがどう動いたかも把握できず、社長個人が使っても判明しようがないのです。
そのため税務調査時にチェックされる可能性も低く、帳簿を作成する必要がないと考えられています。
これは法が整備されてない分部をついたグレーゾーンともいえます。
ただし、ポイントやマイルについて今後税法が改正され、法定調書を提出しなくてはいけなくなった、といった場合には、課税されることになるでしょう。
とはいえ、その間はお咎めなしということです。
雑所得と一時所得の場合
上記以外にも、クレジットカードのポイントやマイレージを個人が使ったら、「雑所得」または「一時所得」になるという意見もあります。
なぜこのような説が出るかといえば、国税が正式な見解を出してないためです。
では念のため、雑所得か一時所得で課税された場合はどうなるでしょう?
一時所得の場合
一時所得はその言葉の通り一時的な所得のことです。
懸賞や福引の賞金、競馬や競輪の払戻金などがあります。
その一時所得を規定する条文の中に
・法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの、継続的に受けるものは除きます。)
No.1490 一時所得
という項目があります。
つまり、これを根拠に法人のクレジットカードのポイントを個人が利用した場合は、一時所得にあたるという解釈です。
一時所得で課税される場合、課税所得金額は次の式で求めます。
・(総収入金額-必要経費-特別控除額(最大50万円))×1/2
ここで注目していただきたいのは「特別控除額」です。
特別控除に50万円の枠があるため、それ以下のポイントの場合、実質非課税になります。
ポイントで50万円相当になると、1ポイント1円、還元率1%だと5000万円の買い物をしないと貯まらないので、法人クレカといえど、そうそうはないと思います(買掛金の支払も入れたらそれくらいいく会社もあると思いますが、実質無料で借りているお金を、ポイント欲しさに金利を支払ってまでクレカ払いにすべきかということは考えなくてはいけません)。
つまり、わざわざ法定調書の提出というグレーゾーンに手を出さなくても、一時所得として処理すれば、ほとんどの人は非課税となってしまうということです。
繰り返しますが、ポイントやクレジットカードについて、国税の正式見解が出てないのが現状です。
ただし、一時所得には生命保険の一時金(業務に関して受けるものを除く)や、損害保険の満期返戻金などもあります。
そのため、その年に生命保険の一時金などが入る場合には、特別控除枠の50万円を超えてしまうこともあるため、クレカのポイントが50万円以下でも、税金が発生するケースが出てきます(とはいえ、一時所得には1/2課税という大きなメリットがあるため、それでもおいしいことには変わりありませんが)。
雑所得の場合
雑所得の場合は、法人のクレジットカードでなく、自分名義のクレジットカードのポイントを利用したケースです。
サラリーマンや主婦、学生等が自身のクレジットカードのポイントを利用した場合は、収入となるため、「雑所得」として申告の対象となります。
ただし年間20万円以下の場合には、所得税の申告の必要はありません。
ここでも同じように、1ポイント1円、還元率1%だとすると、2000万円以上の買い物が必要ですので、ほとんどの人は非課税となるでしょう。
社会保険料はどうなるか?
税金は以上ですが、社会保険料はどうなるでしょう?
法人のクレジットカードのポイントはマイレージや商品券に変換できる利益ですので、社会保険の対象になるかの問題も出てきます。
その点について調べた記事がありますので、ご興味がある方は参考にしてみてください。
一言でいえば、社会保険料にもグレーゾーンが存在しました。
まとめ
法人クレカの貯まったポイントを、個人が利用した場合の税金について解説しました。
法人クレカのポイントを個人利用できれば、非課税のボーナスをもらえるようなものです。
今後、ポイントとマイレージについての税制が変わるまでは、個人の
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