損益計算書で資金繰りを考えるのは間違い

財務改善

貸借対照表はよくわからないけど、損益計算書は理解している社長は多いでしょう。

それゆえ損益計算書で資金繰りを考えてしまっていませんか?

たしかに損益計算書の最終利益を見れば、利益が出ていることはわかります。

しかし損益計算書の時系列の通り、実際の資金繰りは動いているわけではありません。

そのため、損益計算書で資金繰りを考えてしまうと、それが悪化の原因となってしまいます。

上から順番にとはならない現実の商売

損益計算書に記載されている項目は、上から順番に売上高、仕入れ原価、売上総利益、販売費および管理費・・・と並んでいます。

そして上から順番に引いたり足したりしていき、最後に手元に残る利益が記載されます。

しかし実際の資金繰りは、売上高が発生して、そこから仕入れ原価を引いてとはなりません。

売上を作るために、仕入れをして、そこから広告費や人件費をかけてと損益計算書とまるで逆のことが起こります。

つまり、損益計算書の通りにお金が出入りしているわけではないのです。

このことを理解して損益計算書をみないと、資金繰りを見誤ってしまいます。

現実のお金の流れ

ビジネスはお金の先出が基本ですから、先行投資して売上を作ることになります。

「売上があるのに資金繰りが苦しい」、これは売上を作るのに先行投資しているがために起こる現象です。

たとえば売上げを作るには、商品を仕入れてそれを販売しなくてはいけません。

ただ仕入れた商品が全部売れるわけでもなく、一定数は売れ残りが発生しますし、品切れを起こさないように予備の在庫も必要です。

会計的にいえば、仕入れ原価に計上できるのは売上に連動したものだけなので、売れ残った在庫も予備の在庫も、この時点で損益計算書には反映されなくなります(貸借対照表に計上される)。

つまり在庫が発生した時点で、損益計算書は現実の資金繰りを反映してないというわけです。

さらに商品を仕入れてもそれを販売する人が必要です。

商品の宣伝のための広告費、商品を販売するためのスペースも確保しなくてはいけません。

このような経費を使って、はじめて売上を作ることができるわけです。

損益計算書のように、売上があってそこから仕入れ(売上原価)を引いて、とならないことがよくわかります。

売掛金も反映されない

また販売代金の回収もすべてが現金取引というわけにもいきません。

売掛での回収になることもあります。

BtoCの個人のお客様相手でも、カード支払いになれば入金されるまでの間は売掛と同じです。

そして売掛金もまた、損益計算書には反映されません。

こうなると損益計算書の「利益」とは何ぞやという話になってきます。

損益計算書の利益とは?

損益計算書の利益とは、ある時点での売上から仕入れや人件費や経費を引いた「利益」です。

しかしその利益には在庫や売掛金や買掛金は反映されておらず、現実のお金の出入り(資金繰り)とはギャップができてしまうのです。

つまり、損益計算書は儲かっているかはわかりますが、資金繰りを見るときには、それだけでは不完全なのです。

誤解しないでいただきたいのですが、わたしは損益計算書が大事でないといいたいわけではないのです。

損益計算書は1年間どれだけ利益が出たかを見る財務諸表で、これはこれで重要です。

ですが、会社の存続とは何で決まるのでしょう?

そう、現金のあるなしです。

であるならば、経営者がみるべきも資金繰りということになります。

世の中には、売上があっても潰れてしまう黒字倒産もあるわけですから、損益計算書だけ睨んでてもダメでしょという話です。

まとめ

資金繰りを管理するには、損益計算書でなく資金繰り表で行うべきです。

資金繰りに余裕のある会社はキャッシュフロー表でも間に合いますが、資金繰りに余裕がないなら、月ごとの資金繰り表が必要になります。

繰り返しますが、損益計算書は現実の商売の流れや現金の出入りを反映してないのですから、それを見て資金繰りを判断するのは危険なことです。

資金繰りで詰まらないためには、それに適した資金繰り表での管理が必要です。

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