カフェや飲食店など、店舗系ビジネスで開業を考える方も多いと思います。
しかしそこで問題となるのが資金です。
開業資金は業種によっても異なりますが、平均すると1000万円以上というデータもあり、これを自己資金だけで貯めるには無理があります。
また事業を継続していくには、改装費や設備などの初期投資だけでなく、仕入れや人件費などの運転資金も必要になります。
開業当初は安定した売上を見込めないので、手元資金は1円でも多く持っておきたいところです。
そうなると、自己資金以外で資金を確保することを考える必要が出てきます。
この記事では、開業資金を借りたい人のための借入れできるお金について解説します。
起業・開業にお金の借入れを考えるべき資金調達先
日本政策金融公庫
まず一番に考えたいのが日本政策金融公庫です。
日本政策金融公庫は国が出資している政府系金融機関のため、民間金融機関では通常借りられない起業・開業資金も積極的に融資してくれます(当たり前ですが、誰でもという意味ではありません)。
経済を活性化させるという政府の指針に則て運営されるためです。
日本政策金融公庫でお金を借りるメリットは
- 固定金利で借りられること
- 金利が低いこと
- 長期間の融資を受けられること
- 信用保証料がいらないこと
などがあります。
資金調達するには、日本政策金融公庫から考えるのがベストです。
融資は、起業・開業希望者に合わせた制度がそれぞれ用意されています。
新規開業資金
新たに事業を始める人や、事業開始後おおむね7年以内の人が受けられる融資です。
女性、若者/シニア起業家支援資金
事業開始後おおむね7年以内の女性、35歳未満か55歳以上の人が対象の融資です。
再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)
廃業歴等のある人で、創業に再チャレンジされる人が対象の融資です。
「廃業歴がある」という変わった条件がある融資です。
新事業活動促進資金
新たに事業を始める人や事業を開始して間もない人が融資の対象となりますが、新事業活動促進資金の特徴は、「無担保・無保証」で借りられることです。
さらに自己資金の条件も1/10と低く設定されているため、開業希望者には借りやすい融資となっています。
ただし上限が3000万円(うち運転資金1500万円)までと、ほかの融資に比べ低く設定されています(ほかの融資は7200万円(うち運転資金4800万円)までと2倍以上の上限で設定されています)。
自治体の制度融資
起業・開業希望者に借りやすい融資に「制度融資」があります。
制度融資とは、中小企業の資金調達などを支援するために、各地方自治体が信用保証協会、金融機関と連携して設けている制度です。
まず、企業から融資の申し込みを受けた地方自治体が、金融機関に対して制度融資のあっせんを行います。
そこで信用保証協会が融資の保証人となり、さらに、地方自治体が預託金を金融機関に提供したり、保証料や金利の一部を負担したりします。
このようなリスクを分散する仕組みを取り入れることで、金融機関が貸し倒れるリスクを減らし、開業したばかりの事業主でも融資が受けやすくなる制度です。
制度融資のメリット
審査に通りやすい
制度融資は中小企業を支援する目的の融資です。
また、通常では民間の金融機関では融資を受けられない開業希望者でも、リスク分散することで借りやすくしています。
そのため審査に通りやすい傾向があります。
金利が低い
金利が1.0~2.0%と民間の金融機関に比べ低く設定されています。
据置期間が長い
据置期間とは、元本を返済せずに金利だけを支払う期間です。
制度融資にはこの据置期間が1年前後で設定されていることが多く、余裕を持った返済計画を立てられます。
利子補給や保証料補助がある
自治体にもよっては、信用保証協会の保証料や金融機関の利息の一部を補助する制度が用意されていることがあります。
制度融資のデメリット
融資実行までに時間がかかる
融資を受けるためには金融機関での手続きだけでなく、地方自治体の承諾や信用保証協会の審査などを経なくてはいけません。
それに付随する必要書類も多く、手間と準備に時間がかかります。
そのため相談開始から融資実行まで、2~3か月程度かかってしまいます。
資金繰りを考えると融資スピードの遅さは大きなデメリットになります。
リスケの後は一括返済しなくてはいけない
事業が上手くいかず、借りたお金をリスケジュールする場合、最初のリスケの期間終了後に一括返済を求められます。
リスケを前提に語るのはおかしいかもしれませんが、創業後生き残る会社は20%程度だと考えると、万が一の状況を想定しておくことも大事です。
制度融資の場合、リスケの延長を申し入れても受け入れてもらえず、それが原因で倒産ということも考えられます。
資金調達に選ぶと危険なもの
助成金
助成金は国が事業を支援してくれる制度です。
そのため返済する必要もありません。
そのことで、資金調達のお金と見る向きがありますが、助成金を資金繰りのあてにするのは間違いです。
なぜなら、申し込みから入金されるまで、長い期間がかかるからです。
長いものなら1年以上かかります。
その間の費用は、事業主が持ち出しで立替えしなくてはいけません。
開業時に立て替えておけるだけの費用に余裕があればいいのですが、ないのであれば助成金で資金調達と考えるのはやめておきましょう。
逆に資金繰りが苦しくなります。
また、助成金を受け取るということは、新たに人を雇用したり、従業員の待遇を改善したりと、受給するための条件を満たす必要が出てきます。
そのことが返って足かせになる場合も出てきます。
助成金を資金調達の手段にするのは間違いの元です。
ノンバンク
ノンバンクは、審査が緩い、融資実行までの期間が短い、審査にあたっての書類が少なくて済む、などの「借りやすいこと」が利点です。
しかしその反面、金利が高く、ノンバンクから借りていることがわかると、銀行や日本政策金融公庫からは厳しくみられます。
つまり、ノンバンクからお金を借りていて、その後、日本政策金融公庫に申し込んでも、審査でそのことがマイナスに働いてしまうのです。
ノンバンクから借りられるお金と、日本政策金融公庫で借りられるお金では、その金額に大きな開きがあります。
開業時に借り入れで手持ち資金を増やしておくことは、事業存続に大きな影響をもたらします。
また、開業後でも資金繰りがピンチのときに、日本政策金融公庫は強い味方となります。
そのパイを使えないようにしてしまうことは、自ら倒産危機を招くようなものです。
「借りやすいから」と、安易な気持ちでノンバンクからの借入れを優先させるのは間違いです。
資金調達の優先順位は日本政策金融公庫の方が高いです。
まとめ
開業資金を借りたい人のための、借入れできるお金について解説してきました。
開業を考えた場合、まず日本政策金融公庫に申し込んでおきたいところです。
日本政策金融公庫は、起業・開業希望者にとって借りやすい金融機関です。
開業資金は場合によっては、1000万円を超えてしまいます。
そのような多額の資金を調達するためには、ノンバンクやカードローンでは無理で、やはり政府系金融機関や自治体の制度融資が必要になります。
ですから開業で資金調達を考えたときは、日本政策金融公庫か制度融資の利用を考えましょう。
ただし日本政策金融公庫と制度融資で断られたら、民間の金融機関ではなお難しいと認識しておきましょう。
そうならないためにも、開業の準備はしっかり立てておきたいところです。
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