自己資金ゼロで起業すると資金繰りに詰まる理由

日本政策金融公庫対策

自己資金ゼロのまま、あるいは自己資金が少ない状態で起業に踏み切る方もいらっしゃると思います。

しかし自己資金が少ない状態は、自ら起業の失敗リスクを招いているようなものです。

自己資金をがんばって100万円以上貯めて、日本政策金融公庫から融資を受ける選択をした方が賢明です。

「支払は絶対で入金は不確実」という現実

ご存じのように、事業を継続できるかどうかはお金のあるなしで決まります。

お金がなくなれば、事業を継続するための支払いはできなくなり、そこで事業はストップします。

いわゆる廃業や倒産です。

お金がなくなってしまう原因は、基本、収入より支出が上回ってしまうことですが、それ以外にも、黒字倒産のように、売上はあるのになぜかお金がない状態もあります。

黒字倒産を防ぐには、資金繰り表をつけることが大事になります。

資金繰り表をつけることで

  • いつお金が入ってくるか?
  • いつお金が出ていくか?

の2つがあらかじめわかりますので、資金繰りに詰まることを防げます。

では資金繰り表をつけていれば、倒産を回避できるかといえばそんなことはありません。

資金繰り表はあくまで予定であって、現実ではないからです。

その現実とは何か?

それは「支払は絶対で入金は不確実」ということです。

債権はどこまでも追いかけてくる

会社に届く請求書には、確実に支払いをしなくてはいけません。

中には踏み倒す不届き者もいますが、支払いをしないと商品も止められますし、場合によっては法的措置を取られることもあるでしょう。

もし仕入れ先の債権者が倒産してしまっても、その業者との間にある未払い代金は、代わりの業者(仕入れ先の取引相手)が回収しにきます。

ない袖は振れないという諺がありますが、ない袖が振れなくなるまで追い回されるのが債権です。

債権が免除されるのは、ない袖が振れないところまで追いつめられたときです。

つまり支払わなくてはいけないものは、絶対に払わなくてはいけない、確実に出ていくお金なのです。

最後は税金

ちなみに、取引先への債権を放棄してしまうと、「債務免除益」が発生します。

放棄額の分だけ収益が増えますので、その期の利益によっては法人税が発生します。

貸倒れ損失を損金として計上するためには、「回収不能」であることを明確な状態でなくてはいけません。

債権は相手によって回収も厄介ですが、支払を放棄すると今度は税金が追いかけてきます。

何とも難儀な相手です。

回収は絶対ではない

支払いに対し売上は、絶対回収できるとは限りません。

運悪くない袖が振れない人に当たることもあるでしょうし、はじめから踏み倒す目的の悪質な人もいるでしょう。

あるいは取引先の急な倒産で、手持ち資金がなくなったということだってあります。

売上をあげることも重要ですが、本当の意味で大切なのは販売代金を回収することです。

売上代金を回収して、はじめて会社は回ります。

その回収に絶対はありません。

そうなると、売上があがって安心だと思っていたのが、実際はマイナスになってしまうこともあります。

つまり、資金をギリギリで回しているようだと、いつ資金繰りが詰まってもおかしくないということです。

起業後、資金繰りに詰まらないための対策

繰り返しますが、支払いはほぼ確実に出ていくお金です。

何月何日に株式会社○○への支払い、これは資金繰り表で管理できる数字です。

しかし代金回収で入ってくお金に関しては、「入ってくることが確実」なわけでなく、実際は「入ってくるかもしれない」お金です。

ですから、「入ってくるかもしれない」お金に対して、対策が必要になってきます。

その対策とは、「余裕資金を持っておくこと」です。

余裕資金には、自分で用意したお金があります。

しかし自己資金を余裕を持って起業できる人は少ないでしょう。

多くの人は、自己資金が十分にないまま起業してしまいます。

もちろんそれが、仕入れがほとんど必要ないようなビジネスモデル(アフィリエイトやコンサルなど)なら、資金繰りで詰まるリスクは低くなりますが、それでも自己資金が少ない状態で起業することは、実は自ら首を絞めているのと変わりがないのです。

自己資金があることで有利な起業環境を作れる

ですから起業するにあたっては、少しでも多くの自己資金を貯めておくことが必要です。

そらにそれだでなく、その自己資金を持って融資を借りられないか検討すべきです。

自己資金を担保に融資を引き出せば、レバレッジをかけて手持ち資金を増やせます。

借りられる額も自己資金が多い方が多く借りれますし、融資の審査を通る確率も高くなります。

自己資金の多寡が起業の成功を分けるわけではないでしょうが、少なくとも生き残る確率は自己資金の多い方が格段に上回ります。

自己資金なし、あるいは手持ち資金が少ない状態とは、まさにキツキツで資金繰りを回している状態なので、何かアクシデントがあれば、すぐに事業が止まってしまいます。

売上の安定しない創業期なら、輪をかけて資金繰りが苦しくなります。

それに資金に余裕がなければ、売上をあげるための施策(広告や先行投資など)を行うこともできませんので、事業自体がどんどんジリ貧に追い込まれていきます。

やはり自己資金を少しでも多く持って起業すべきです。

そしてできればその自己資金を元に(100万円が一つのライン)、日本政策金融公庫でお金を借りれないか検討しましょう。

それが起業後に資金繰りに詰まらないために対策になります。

まとめ

自己資金ゼロ、または自己資金が少ない状態で起業するときの、リスクについて解説しました。

資金繰りが詰まってしまう理由の一つは、「支払いは絶対で入金は不確実」という絶対的な現実を忘れてしまうことです。

売上代金の入金を絶対だと思っていると、万が一未回収になったときのリスクに対処できません。

そのリスク対策の基本は「余裕資金を持っておくこと」です。

余裕資金を持つためには、自己資金を貯めておくこと、その自己資金を担保に融資を受けておくことが必要になります。

起業を考えたら、まずはしっかり自己資金を貯めましょう。

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