「自己資金はないけど起業をしたい」、そうお考えの方も多いのではないでしょうか?
自己資金ゼロで起業するには、元手が必要ないビジネスモデルを選ぶか、お金を借りて資金調達をするかの2択になります。
しかし自己資金ゼロでの融資は、かなり厳しいものになります。
創業間もない人、起業を考えている人の融資は、創業・起業を積極的に支援している日本政策金融公庫がメインになりますが、それでも自己資金ゼロでの融資の可能性はかなり低くくなります。
では融資が必要でも、自己資金ゼロの人は起業の道は閉ざされてしまうのか?
そんなことはありません。
今からでも自己資金を貯めるためにできることはあります。
この記事では、自己資金ゼロの人が融資を受けるための対策について解説します。
自己資金ゼロでは審査に通らない
日本政策金融公庫は、政府系の金融機関であるため、国の事業として中小企業を育てることを目的としています。
そのため通常では民間の金融機関では融資を受けられない、創業間もない経営者や起業を考えている人でも融資を受けることができます。
しかしそんな日本政策金融公庫の融資でも、自己資金ゼロでは審査は通らないと考えておいた方が無難です。
自己資金ゼロが審査に通らない理由
自己資金ゼロでは審査に通らない理由は以下の通りです。
1・自己資金が少ないとビジネスの成功率も下がる
運転資金や設備資金が必要となるビジネスで、自己資金が少ないとビジネスが失敗する確率は高くなります。
ビジネスを回しいくには、仕入れや経費、自分の生活資金も必要になります。
創業期は売上は安定せず、マイナスからスタートすることがほとんどです。
その不安定な時期に自己資金が少なければ、簡単に資金ショートを起こしてしまいます。
創業・起業を支援している日本政策金融公庫といえど、破たんが見えているような事業に融資してくれるわけがありません(融資の原資は税金なわけですし)。
2・万が一のリスクヘッジにならない
起業して5年後の廃業率は80%ともいわれています。
それだけ厳しい現実があるわけですから、日本政策金融公庫もリスクヘッジを考えなくてはいけません。
その担保となるのが自己資金です。
自己資金が多ければ事業の存続率も上がり、いざというときの回収資金になるわけですから、自己資金がどれだけ融資の審査に影響するかも理解できます。
3・計画性がないと思われる
元手の必要ない事業で起業するならいざ知らず、運転資金や設備資金の投入が必要なビジネスなら、思いついてすぐに起業とはいきません。
やはり事業を立案してスタートするまで、準備期間が必要です。
その間には自己資金を貯める時間も含まれます。
にもかかわらず自己資金を貯めてないということは、計画性がない、思い付きで事業を始めようとしていると思われても仕方のないことです。
先述しましたが、起業しても5年後に生き残るのは、20%の会社や個人事業主しかいないのです。
そんな厳しい環境で、計画性もなしに事業を存続できるとは思ってくれず、融資の審査も通らないのです。
4・本気でないと思われる
計画性がないとも関連していますが、準備期間があるにもかかわらず自己資金を貯めれてないということは、起業に対して「本気で取り組んでない」と思われます。
何度もいいますが、事業で生き残るには、全知全能、全身全霊を掛けて行わないと、3年、5年と存続していけないのです。
そんな厳しい現実を知っている融資担当者が、やる気のない人に甘い判断をしてくれるわけがないでしょう。
起業は「起業することが目的」でなく、会社を存続させなくては意味がありません。
自己資金がないことは、起業に対して「本気で取り組んでない」という気持ちの表れです。
日本政策金融公庫が認めてくれる自己資金とは
日本政策金融公庫は、どんなお金でも自己資金と認めてくれるわけではありません。
自己資金とみなしてくれるお金と、自己資金とみなしてくれないお金があります。
自己資金として認めてくれるお金
日本政策金融公庫が自己資金とみなしてくれるお金は次の通りです。
- 自分で貯めたお金
- 配偶者の預貯金
- 自分や配偶者の加入している生命保険の解約返戻金
- 自分や配偶者の所有している株式、国債などの有価証券
- 自分や配偶者が所有していた車や不動産を売却した資金
- 親から贈与されたお金(贈与契約書があり、返済しなくてもよいことが確定しているものに限る)
自分で貯めたお金はもちろんですが、配偶者が貯めた預貯金も自己資金としてみなしてくれます。
配偶者は生計を共にする家族であり、「返済も一緒にしてくれる人」と判断されます。
一方、親からの資金提供は、自己資金とはみなしてくれません。
配偶者とは違い「返済が必要なお金」と判断されるからです。
親からの資金提供を自己資金としてみなしてもらうには、返済の必要のない「贈与契約によるもの」の場合に限ります。
要するに自己資金と見なしてくれるのは、自分で貯めたお金、または自分や配偶者の所有物で換金価値がはっきりしているものまたは売却したもの、それ以外は返済の必要のないお金と確認できるものということです。
自己資金にならないお金
お金があっても自己資金と認められないものは次の通りです。
- タンス預金
- 知り合いや消費者金融から借りたお金(いわゆる見せ金)
タンス預金は存在そのものを証明するものがないため、自己資金として認められません。
仮に1000万円目の前に出して「自己資金です」といっても、そのお金の出所がわからないため、自己資金として認めてくれないでしょう。
もしかしたら、知人から一時的に借りた見せ金の可能性があるからです。
要は、「そのお金を自分で用意したか?」がわかる証拠が必要なのです。
そのためタンス預金がある場合には、融資を受ける前に口座に入金して、通帳に記帳して証拠にしておきましょう。
知り合いや消費者金融から借りたお金を自己資金のように装うことを「見せ金」といいますが、見せ金は自己資金とみなされません。
見せ金を「借りたお金です」と正直に申告すれば問題はないですが(自己資金としてはみなされませんが)、もし自己資金として偽装すれば、それがバレたときには一気に信頼を失います。
ウソをついたとなると、審査に通ることはできません。
そしてウソはバレますので、絶対にやめておきましょう。
自己資金のないときの融資対策
家族や親族に資金援助をしてもらう
親や親族から出してもらうお金は自己資金とはみなされませんが、返済猶予のあるお金とみなしてもらえます。
ただし返済ができなくなったときは、多大な迷惑をかけてしまいます。
担保・保証人を提供する
日本政策金融公庫事態は、無担保・無保証で融資を受けることができます。
しかしあえて担保や保証人を付けることで、融資を受けやすくすることは可能です。
所有している不動産がある場合、資力のある保証人がいるときは、担保の提供や保証人になっていただくことを検討してみるのも方法です。
現物出資で自己資金を増やす
個人事業主では使えませんが、法人を設立して起業する場合は現物出資という方法が使えます。
現物出資とは、現金ではなく現物を出資することで、会社を設立するために必要な資本金の代わりにできるというものです。
現在、個人で所有しているパソコンや車を、会社の資産にするのであれば、それを自己資金として認めてくれます。
みなし自己資金を増やす
本来自己資金とは、手持ちの現金をいいますが、会社を興す前に事業に対して支払った資金があるときは、その一部のお金については「みなし自己資金」として認めてもらえます。
たとえば、店舗を借りるための敷金・礼金や設備資金を、審査前にすでに支払っている場合です。
仮に、手元に100万円があり、すでに150万円を敷金・礼金に支払っていた場合は、合計250万円を自己資金としてみてくれます。
出資者を増やす
出資者を増やし、共同創業の形を取れば資金を増やすことができます。
ただし、この場合は単に資金の出してではなく、役員として働いてもらうことを自己資金の要件とする場合もありますので事前に確認しておきましょう。
ですが、株主を増やすということは、今後の経営権にもかかわる問題ですので、よく検討のうえ出資者を募りましょう。
ノンバンクや消費者金融からの借入れを安易に行わない
自己資金がないから日本政策金融公庫に申し込んでもダメかもという理由で、ノンバンクやカードローンから安易に借りてしまうのは考え物です。
たとえばノンバンクから借りていることがわかれば、日本政策金融公庫から厳しく見られます。
起業後でも融資が必要になれば、そのときは日本政策金融公庫に申し込まなくてはいけないこともあります。
そんなときにノンバンクからの借入れがアダとなって融資を受けられないとなれば、これは大きな痛手です。
繰り返しますが、日本政策金融公庫は中小企業や個人事業主にとって、借りやすい金融機関です。
その資金調達手段を無くしてしまうことは賢明ではありません。
借りやすいからと、カードローンやノンバンク、消費者金融で資金調達を行うのはやめておきましょう。
必要な自己資金の額
ではいくら自己資金を貯めれば、融資を受けられやすくなるのか、この一つの目安は100万円です。
起業を検討中の方は、がんばって100万円貯めましょう。
日本政策金融公庫の融資の中には、自己資金が1/10で借りられる制度もあります。
まずは100万円を目安にコツコツ貯めていきましょう。
融資の確率をアップするためには認定機関を利用する
自己資金を貯めた後、さらに融資の審査に通る確率を上げたいなら、認定支援機関を経由して融資の申し込みを行います。
認定支援機関は、中小企業や小規模事業者の経営課題に対し、事業計画策定支援などの専門性の高い支援を行う専門家です。
企業の財務や税務など専門的な知識を持っており、経営革新計画の策定などの業務を一定期間行ない、しっかりとした経験年数のある機関や人に対して国が認定しています。
このような国が認定して専門家が事業計画を一緒に作ってくれるわけですから、信用力が上がり、審査に通る確率もアップするというわけです。
また認定支援機関を経由することで、金利優遇、融資枠拡大などのメリットもあります。
別途お金が掛かりますが、融資の可能性を高めたいなら、利用を検討すべきです。
まとめ
自己資金ゼロのときの融資対策について解説しました。
自己資金ゼロのときは、基本日本政策金融公庫からの融資は厳しいと認識しておきましょう。
日本政策金融公庫で無理なら、民間の金融機関ではもっと無理です。
すこしでも融資の確率を上げるためには、ここで解説した方法で自己資金を貯めておく必要があります。
今日から自己資金を準備して、起業の際の融資に備えましょう。
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