節税の優先順位は会社の成長段階によって変わる

財務改善

会社が成長するとそれに比例してお金が必要になります。

運転資金もそうですし、人件費やその他経費もかかってきます。

これを社長自身の個人資産でまかなうことはできず、どこかの段階で銀行融資が必要になります。

となれば、節税を行うにしても会社の財務状況と表裏一体で考えなくてはいけないでしょう。

節税は会社の成長段階によって優先順位は変わります。

運転資金は売上に比例して増える

会社の売上が増えれば、それにより必要な資金も同時に増えます。

運転資金で考えてみましょう。

常時必要となる運転資金のことを経常運転資金といいます。

常に必要なお金ですから、これが不足すれば支払いができず、資金ショートを起こします。

経常運転資金を求める計算式は次の通りです。

・売掛金+在庫-買掛金

売掛金が1000万円、在庫が2000万円、買掛金が1400万円なら経常運転資金は1600万円です。

・1000万円+2000万円-1400万円=1600万円

では売上が2倍になって、売掛金、在庫、買掛金も同時に2倍になればどうでしょう?

そうです、同じく経常運転資金も2倍の3200万円必要になります。

・2000万円+4000万円-2800万円=3200万円

売上を2倍にして経常運転資金を減らしたいなら、売掛金・在庫を減らし、買掛金を増やすなといった施策が必要になります。

ただそれはビジネスモデルを劇的に変化させるなど、簡単なことではないでしょう。

やはり売上が増えていけば、それに比例して運転資金も多額になる、これが法則です。

人件費や経費も増える

さらにこれに加えて、売上が増えると人件費や広告費、その他の経費も増大します。

とくに人件費の負担は、今後ますます重くなります。

社会保険料がすでに重い負担となっているのは周知の事実です。

そして2021年4月(中小企業の場合)には、同一労働同一賃金がスタートします。

これにより、正社員と非正規社員で賃金差を付けることが困難になり、企業の人件費の負担は間違いなく重くなります。

要は、売上アップすると、賃金負担がこれまで以上にかかるようになります。

格付けを意識した決算書が必要になる

では売上に比例して増えた運転資金や販管費を、会社の資金だけで間に合わせることができるのでしょうか?

無借金経営は理想ですが、それを達成するためにどれだけキャッシュを貯めなくてはいけないか?自社の決算書を眺めて計算してみてください。

もしそれで現金が足りないとなれば、銀行から融資を受けなくてはいけません。

銀行から融資を受けるためには、格付けを意識した決算書が必要です。

決算書のスコアリングが低ければ、格付けが下がり、融資を受けられなくなってしまいます。

社長の個人資産ではカバーできない

オーナー社長の個人資産で、会社の運営資金をまかなうにも限度があります。

売上が1億円以下なら、それも可能かもしれませんが、それ以上に売上が増えてくると、社長の個人資産だけではカバーしきれません。

それに社長の個人資産をその都度に事業に投資してしまば、貯まるお金も貯まらにという話です。

会社で使うお金は会社で用意すべきで、それが不足するなら銀行からの融資を考えなくてはいけないでしょう。

そうなると、節税して会社にお金の残らない状態を作ってしまうのが、本当に良いか考えなくてはいけません。

たとえば役員報酬を見直して、税金や社会保険料のかからない方法で、社長個人へ所得移転できたりしますが、それだってある意味、最適解ではなく分部解です。

たしかに社長の手取りは増えますが、会社が次の段階に進むとき、返ってそれが足かせになってしまっては意味がありません。

事業規模が一定の段階までくれば、節税でキャッシュの手残りだけを見るのではなく、今度は資金調達で視野に最適解を探る必要が出てくるのです。

社長の節税は会社の成長段階に応じて行うべき、というのはこういったことが理由です。

まとめ

事業が成長して来れば、それに応じて運転資金や経費も増大します。

そのときに銀行融資で大きな額を資金調達しなくては、会社の資金繰りが回らなくなってしまうのです。

その段階になってくれば、銀行から融資を受けられるような決算書を意識しなくていけなくなります。

そうなると節税でお金を残すが優先順位でなくなるのです。

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