起業に失敗しないためには、お金の知識も必要です。
起業といえば売上をあげるための、マーケティングや営業ばかりに目がいきがちですが、お金のことを知っておかないと、売上があっても資金繰りに詰まってしまうことがあります。
会社の存続はキャッシュのあるなしで決まります。
もちろん、マーケティングや営業も起業を成功させるうえでとても重要なのですが、お金の知識もそれと並行して身につけておけば、企業の成功率もアップします。
この記事では、ぜひとも身につけておきたい、起業後に失敗しないために必要な4つのお金の知識について解説します。
起業に必要なお金の額は?
起業するためには、実際問題お金が必要になります。
ではいくらあれば起業できるか?
しかしこの質問は人それぞれ、業種やビジネスモデルによって変わるため、「いくらあれば起業できる」とはいえないのです。
たとえばヘアサロンを開業して起業したい人なら、店舗を借りるのか自前で用意するのかで資金は変わりますし、どのエリアに出店するのかでも必要資金は変わります。
たとえばショッピングモールや駅前の出店なら、人通りは見込めますが、その分家賃は高くなります。
反対に人通りの少ない場所であれば、家賃の負担は少なくて済みますが、集客費用が高くかかるかもしれません。
ヘアサロン一つとってみても、開業資金が数百万~数千万とバラつきがあります。
一方、ネットビジネスでアフィリエイトを行うなら、必要なものは通信環境とパソコンくらいで済んでしまいます。
自前のパソコンを利用するなら、0円で起業をスタートできます。
このように業種やビジネスモデルによって必要資金は変わります。
ですから、まず自分がどんな業種で、どんなビジネスモデルで起業するのか、そこから考えないと必要資金を見積もることはできないのです。
起業に必要な2種類の資金
業態やビジネスモデルが決まったら事業に必要な資金の種類を理解しましょう。
事業をはじめるにあたって必要な資金は2つに分けられます。
それが設備資金と運転資金です。
設備資金
設備資金は事業活動を行うために必要となる設備を購入するための資金です。
設備資金の種類
- 車両
- 店舗内装
- パソコン
- 設備機械
運転資金
運転資金は、事業を継続して運営するために必要な資金です。
運転資金の種類
- 人件費
- 広告宣伝費
- 仕入れ費用
- 外注費
上記を比べてみればわかりますが、設備資金は一時的に必要な資金、それに対し運転資金は継続的にかかる資金になります。
この2つの資金は属性が違うため、設備資金を運転資金に利用したり、運転資金を設備資金に利用したりすると資金繰りが悪化する原因となります。
きちんと分けて考えるようにしましょう。
起業するなら知っておくべき4つのお金の知識
起業後にお金で失敗しないためには、きちんとした事業計画を立てる必要があります(それでも上手くいくとは限りませんが)。
しっかりした事業計画を立てるためには、事業に必要な資金の額と、そのお金を何に使うかの内訳を適切に把握しておく必要があります。
しかし当たり前ですがそれだけでは終わりません。
事業資金を自己資金でまかなうことができればよいですが、1000万円以上の資金が必要なら資金調達を考えなくてはいけません。
さらに資金調達をしたお金、あるいは自己資金を管理・運営していくことも必要です。
そこで必要になるのが、資金調達、税金、社会保険料、会計の4つの知識です。
1・資金調達の知識
初期投資が必要なビジネスや自己資金が少ない場合、それをまかなうための資金調達が必要になります。
資金調達の方法には次のものがあります。
金融機関からの融資
銀行や信用金庫、政府系金融機関からの融資で資金調達が行えます。
起業当初は民間の金融機関ではほとんど借りることができませんので、政府系金融機関の日本政策金融公庫がメインとなります。
ハードルは高いですが、ほかの方法に比べて大きな金額を調達できます。
家族・親せきからの援助
一番借入を頼みやすい相手ではありますが、返せなくなったときは人間関係が壊れる怖れがあります。
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、自分の企画を提示して、共感してくれた人から出資を募るサービスです。
「こういう事業をやりたい」と提示をして、それにお金を出したいという人が集まり、出資が一定の金額に達すると、支援を受けることができます。
助成金・補助金
一定の条件を満たせば国や自治体が支援してくれるお金です。
融資などと違い返済は不要のお金です。
ただし、受給条件を満たすこと、事前に種類を用意して届け出が必要なこと、さらに支給されるまでの期間が長期間に及ぶこと(助成金の場合は、1年半以上のものあります)、その間は事業主が費用を負担しなければいけないといったデメリットがあります。
よほど資金に余裕があれば大丈夫ですが、補助金・助成金を資金繰りの当てにするのは間違いです。
起業時の資金調達には不向きです。
起業直後は売上は不安定です。
資金繰りが苦しくなることも重々考えられます。
また資金が足りなくて、事業が成長するチャンスを失うこともあります。
そのようなことを避けるためには、資金調達の知識を持っておくことは大事です。
借入れは悪いことか?
借入れの話をすると、「借金は嫌だ」という方の方が圧倒的です。
しかし借入は必ずしも悪ではないのです。
しかも借入れをした方が「生き延びる確率」は高くなります。
たとえば、手持ち資金が100万円ある場合で、借入れを100万円した場合と借入れをしなかった場合を考えてみましょう。
借入れをした場合の手持ち資金は200万円になります。
それに対し借入れをしなかった場合の手持ち資金は100万円です。
この2人が起業して、1年目に100万円の赤字が出たとします。
このときの手持ち資金は、借入れをした人は100万円残ります。
ですが借入れをしなかった人は、手持ち資金は0円になります。
借入れをしなかった人は、この時点で事業を続けることができなくなります。
それに対し借入れをした人は、借りたお金といえど手元にお金が残っているので事業を続けることができます。
「おいおい。借りたお金だって返済するのだから、手元資金が0円になることだってあるだろう」、そんな反論が聞こえてきそうです。
ところが、借入れの返済は必ずしも1年で全額返済しなくてはいけないわけではありません。
借入れの返済は、3年や5年の長期返済を選ぶことができます。
仮に5年返済を選択していたなら、ざっくり計算すれば1年目の返済額は20万円です。
ですから、1年目に100万円の赤字が出ても、80万円は手元にキャッシュが残る計算です。
どちらが生き延びやすいかは一目瞭然です。
借入れとは悪ではなく、ときにあなの事業を救ってくれる存在でもあるのです。
2・税金の知識
税金に詳しくならなくてもよいですが、大まかな税金の考えを知っておく必要はあります。
なぜなら、税金のことがわからなければ
- 支払うべき税金の額がわからない
- 必要以上に手元資金を減らしてしまう
ということが起こるからです。
支払うべき税金の額がわからなければ、積極的に投資することもままなりません。
これでは事業が成長するチャンスを失います。
反対に使い過ぎて税金が支払えないといった事態も起こります。
次に必要以上に手元資金が減らしてしまうとは、同じ売上の事業主(個人事業主・法人)でも、税金の理解度によって税金の額が違ってくるケースです。
その大きな理由は、「経費で認められることを知らなかった」です。
経費として認められるものを経費として申告しないことによって、納める税金は増えます。
それこそつまり、「無駄な税金」といえるのです。
あるいは逆に、節税を意識しすぎて経費の無駄遣いをしてしまうことも、無駄にキャッシュを減らしてしまうので、事業にとってマイナスです。
このような無駄な支払いをなくしたり、無駄な買い物をなくすために、税金を理解しておくことは大切なのです。
3・社会保険の知識
社会保険料も税金と比べてもバカにならないほど高くなっています。
その負担率は、労使合わせて約30%にもなります。
オーナー社長の場合、会社分も自分で支払っているようなものなので、その負担は丸々かぶることになります。
社会保険は、法人を設立したら、絶対に加入しなくてはいけません。
個人事業主の場合でも、従業員を5人以上雇用したときは(常時雇用)、従業員分が社会保険料の対象になります。
ですから、法人はもちろんのこと、個人事業主でも関係ないとはならないのです。
そして先述したように、社会保険料は重い負担となっています。
従業員を雇用する場合、社会保険料を含めた雇用コストがどれくらいかかるかを把握してないと、後々資金繰りで困ることになるでしょう。
資金繰りに困らないためには、事前にシミュレーションしておく必要があります。
また社会保険料は削減するだけでなく、手取りを増やすことも可能です。
キャッシュを社外に流出させず、会社にプールしたちり、社長個人へ所得移転するには、この手の知識が重要になります。
4・会計の知識
会社経営において会計の知識を身につけておくことは必須です。
売上がいくらあって、何にいくら使ったか、そして残ったお金をストックしたか、そのストックの内容は?といったことを理解する会計の知識があると、財務や資金繰りに強い経営者になれます。
資金繰りに強くなれることに異論をはさむ余地はないでしょう。
では財務に強くなると何が起こるか?
まず資金調達に強くなります。
現状の会社の財務状況や業績について、金融機関に数字を踏まえて的確に伝えることができます。
このことが金融機関を安心させる材料になるのです。
融資の際必要な事業計画を語るときでも、売上の根拠(一日の平均来客数や回転数、1人当たりの平均売上)を明確に示しながら、自分の言葉で説明できればどうでしょう。
そしてそれによる資金繰りの状況など、具体的な裏付けを持って語られれば、説得力はぐんと増します。
その反対にただビジョンを語るだけでは、融資担当者を説得することはできません。
銀行が知りたいのは、どうやって利益を稼ぎ、そして最後まで返済できるか、その裏付けを示した具体的な計画です。
財務に強くなれば資金調達も容易になります。
会計の知識も必須です。
まとめ
起業後に失敗しないために必要な4つのお金の知識について解説しました。
起業はマーケティングや営業力も大事ですが、資金計画をしっかり立てることも必要になります。
お金がなくなってしまえば、事業を続けたくても続けられなくなります。
ここで紹介した4つのお金の知識について、ぜひ活用して下さい。
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